交通事故コラム

後遺障害 慰謝料 逸失利益

植物状態の被害者を守るための弁護士の役割と慰謝料請求のポイント

2025.01.20

入通院慰謝料 後遺症慰謝料 後遺障害等級1級 慰謝料 逸失利益

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、

  • 植物状態の基本知識
  • 弁護士の役割
  • 慰謝料請求のためのポイント
  • 適切な損害賠償を受けるための要素

などについて解説します。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、被害者の方お一人お一人が最も適切な賠償を受けられるようサポートいたします。

交通事故でご家族が植物状態になられ、ご不安をお抱えの方はぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

弁護士法人小杉法律事務所における交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士によるサポートの詳細についてはこちらから。

 

植物状態(遷延性意識障害)の基本知識

植物状態とは何か?その定義と特徴

植物状態とは、重度の脳損傷などにより自力での移動や意思疎通が不可能になり、意識がない状態が長期間続く状況を指します。

 

この状態は「遷延性意識障害」とも呼ばれます。

脳死とは異なり、意識障害の一つであるため、まれに回復することもあると言われています。

 

次の6つの項目を満たす状態が3か月以上続く場合に植物状態(遷延性意識障害)と診断されることになります。

  • 自力移動ができない
  • 自力で食物を摂取できない
  • 糞・尿失禁状態である
  • 眼球が物を追うことはあるが認識はできない
  • 「目を開け」「手を握れ」等の簡単な命令に応じることがあるが、それ以上の認識はできない
  • 声は出るが意味のある発語ではない

 

このような症状は、被害者本人はもちろん家族や介護者にも精神的・身体的な大きな負担を強いることが多いため、適切な支援や賠償が必要になります。

 

関連記事:遷延性意識障害について(弁護士法人小杉法律事務所監修)

 

植物状態と交通事故の関係

植物状態の原因の多くは、交通事故による頭部外傷や脳損傷に起因します。

例えば、乗車中の衝突事故や歩行中に車両との接触事故が重度の障害を引き起こす可能性があります。

 

このような事故では被害者が植物状態に陥る場合があり、介護や治療が長期にわたって必要になるケースも少なくありません。

 

植物状態を伴う事故では、被害者が意識を失っているため、自ら賠償や慰謝料の請求手続きを行うことができません。

そのため、家族や成年後見人が代理人となって法的手続を進める必要があります。

 

特に、交通事故における保険会社との交渉においては、法的知識や交渉経験を持つ弁護士の支援を受けることが重要です。

 

後遺障害等級に基づく評価と影響

当該交通事故による受傷で植物状態に陥ったと診断された場合は、後遺障害等級の中でも最も重い「後遺障害等級第1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当します。

 

この等級は、被害者が日常生活を送る上で全面的な介護を必要とする状態を意味します。

等級が重いほど、慰謝料や賠償金の額も高額になる傾向がありますが、適正な補償を受けるには法的手続きを確実に行うことが不可欠です。

 

後遺障害等級に基づく評価では、介護費用や逸失利益、後遺症慰謝料が考慮されます。

また、家族が被る経済的負担を軽減するために、家屋改造費や将来介護費、付添看護費用なども適切に請求する必要があります。

このような請求を進める際には、交通事故に詳しい弁護士と連携することで、賠償請求がもれなくスムーズに進む可能性が高くなります。

 

弁護士が果たす重要な役割

遺族や介護者の精神的負担を軽減する支援

遷延性意識障害、いわゆる植物状態に陥った被害者を抱える遺族や介護者は、日々の介護や生活費の問題に加えて、

法律面での複雑な手続きや請求項目について対応しなければならず、大きな精神的負担を抱えていらっしゃることと思います。

 

このような場合、経験豊富な弁護士の存在は非常に大きな支えとなります。

弁護士は、遺族や介護者に代わり煩雑な手続きを進めるだけでなく、状況を踏まえた専門的なアドバイスを提供します。

こうした支援は、遺族や介護者が少しでも精神的余裕を持って日々の生活に専念するための助けとなります。

 

法的手続の代理人としての責任

植物状態の被害者に代わり損害賠償請求を行う際、弁護士は法的手続全般の代理人を務める重要な役割を果たします。

 

たとえば、被害者が意識を回復しない場合、遺族は家庭裁判所で成年後見人の選任を行い、その後に賠償請求を進める必要があります。

弁護士はこのような法的なプロセスを熟知しており、迅速かつ正確に対応することで、被害者家族の負担を大幅に軽減します。

 

また、弁護士は法律知識を活用し、被害者の権利を最大限に主張することができます。

 

公平な賠償金額を実現するための交渉

保険会社との賠償金額に関する交渉は、法律や金額の専門知識が求められるだけでなく、高度な交渉スキルも必要です。

遺族や介護者が直接保険会社とやり取りされると、相手がプロであることもあり、結果として適正な賠償額を受け取れない場合もあります。

このような状況を防ぐため、弁護士が関与することが重要です。

 

後述するように、被害者の方が植物状態に陥った場合に賠償請求できる費目は多岐にわたり、

一つ一つについて正確な算定をすることが重要となります。

 

弁護士は被害者側にとって最も適切な金額である弁護士基準での請求を行うことはもちろん、

専門弁護士に依頼することで被害者の方お一人お一人の生活の変化を正確に反映した適切な賠償請求を行うことが可能になります。

 

 

慰謝料請求のための具体的ポイント

自賠責保険による高次脳機能障害の審査

治療中に請求可能な項目と注意点

植物状態(遷延性意識障害)の被害者が治療中の場合、その期間内に請求可能な賠償項目があります。

主に治療費、入通院慰謝料、入院雑費、近親者の入院付添費などが含まれます。これらの費用は、被害者の治療とその生活を支えるための実費に基づきます。

 

特に植物状態に陥った場合はその時点から被害者ご本人がお仕事が全くできなくなるだけでなく、

付添のためにご家族も休業の必要性が発生するなど、生活費に対する不安が大いに増大することが考えられます。

 

治療費の対応については相手方保険会社が行ってくれる場合も多いですが、

休業損害などについては早期に弁護士に相談して内払の交渉を行うことで少しでも不安が和らぐということもあるでしょう。

 

 

症状固定後の請求手続の流れ

植物状態(遷延性意識障害)の場合、症状固定後に請求できる賠償項目がさらに拡大します。

 

症状固定とは、治療を続けてもこれ以上症状が改善しないと医師が判断した時点を指します。

 

 

先ほども見たように植物状態(遷延性意識障害)はまれに回復することもありますが、

損害賠償請求実務上はどこかのタイミングで区切りをつけて賠償金の計算をする必要があり、その区切りが症状固定というわけです。

 

症状固定を迎えた段階の症状を後遺症といい、この時の症状の程度によって後遺障害等級の認定がされます。

 

後遺障害等級の認定申請を行うためには、まず、後遺障害診断書を医師に作成してもらい、それを自賠責保険に提出することで、後遺障害等級の審査がされます。

もっとも、交通事故により植物状態に陥った(遷延性意識障害)と判断された場合には、基本的には後遺障害等級別表第一第1級1号が認定されることになります。

 

後遺障害等級の認定を受けることで、

などを請求することができるようになります。

それぞれの費目について請求の際に気を付けるべきポイントが多いため、現場での知見を持つ弁護士に代理を依頼することで、適正かつスムーズな交渉が可能になります。

 

なお、後遺障害等級別表第一第1級1号の認定を受けた場合には被害者本人の後遺症慰謝料として2800万円が認められるとともに、

死亡の場合でなくとも死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には近親者にも慰謝料請求権を認めた最高裁判所第三小法廷昭和33年8月5日判決(民集12巻12号1901頁)などを踏まえ、

近親者固有の慰謝料として一人につき100万円~300万円程度が認められることになります。

 

損害賠償額を増やすための重要な要素

介護費用やリハビリ費用の計上方法

植物状態(遷延性意識障害)の被害者の介護には、長期的かつ多額な費用が必要となり、この介護費用についても請求をする必要があります。

 

介護費用は職業介護人(職業付添人)に依頼する場合と近親者が行う場合とで異なり、

職業介護人(職業付添人)は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円が認められることになっています。(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)参照)

 

横浜地方裁判所平成21年5月14日判決(自保ジャーナル1802号3頁)では、遷延性意識障害で第1級1号の認定を受けた症状固定時45歳の男性について、

施設入所中の付添介護費として日額3000円、計約132万円、

施設退所後の自宅介護費として、妻67歳まで平日は近親者介護費日額1万円、休日は職業介護人2人分日額3万2354円、計約6197万円

その後平均余命まで職業介護人2人分日額3万2354円、計約3792万円の、

合計1億0122円ほどを将来介護費として認定しています。

 

家屋改造費や自動車改造費、転居費用等の請求事例

植物状態の被害者を自宅で介護する場合、それまでの生活様式を大きく変えざるを得ないことがあります。

 

この点、先ほどの『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)では、

被害者の受傷の内容、後遺症の程度、内容を具体的に検討し、必要性が認められれば相当額を認める。浴室、便所、出入口・自動車の改造費などが認められている。なお、転居費用及び家賃差額が認められることがある。」とされています。

 

名古屋地方裁判所平成23年2月18日判決(交通事故民事裁判例集44巻1号230頁)では、遷延性意識障害の大学生(男・固定時21歳)について、

新たな土地に在宅介護に適した家を新築するために要した建物建築費と通常の建築費用の差額1895万円余が認められています。

 

この家屋改造費や自動車改造費などの請求は、今までの家屋などの形状ではどういった支障が生じるかというのを実際に見てもらうことが重要です。

改造前と改造後の使い方を動画で撮影しておくなどで証拠を集めておくことで、請求に大いに役立ちます。

 

逸失利益の計算とその妥当性

植物状態の被害者の場合、逸失利益は非常に高額になる可能性があります。

逸失利益とは、本来であれば被害者が生涯を通じて得られたであろう収入の喪失額を意味します。

被害者の年齢や職業、雇用形態、将来の昇給見込みなどを基に計算を行いますが、植物状態に陥った場合に使用される労働能力喪失率は100%とされることが一般的です。

 

さらに、遷延性意識障害が後遺障害等級第1級1号に該当する場合、保険会社基準ではなく弁護士基準での計算を適用することで、請求額が大きく変わる可能性もあります。

弁護士の適切なサポートを受けながら証明資料をそろえることが、適切な逸失利益の認定に繋がります。

 

交通事故でご家族が植物状態になってしまった場合は弁護士に相談しましょう

交通事故専門の弁護士を選ぶ重要性

交通事故による植物状態(遷延性意識障害)といった重大な事態では、専門知識を持つ弁護士を選ぶことが非常に重要です。

植物状態のように重篤な後遺障害がある場合、慰謝料や介護費用、逸失利益などの賠償金が高額となるケースが多いですが、その請求には正確な法的知識と交渉力が求められます。

 

また、被害者の状態を適切に説明し、後遺障害等級が正しく認定されるようサポートすることが重要です。

 

交通事故専門の弁護士であれば、遷延性意識障害における賠償請求のポイントや判例に精通しているため、被害者や家族が抱える複雑な手続きもスムーズに進めることができます。

 

無料相談を活用するメリット

弁護士選びにおいて、無料相談を活用することには多くのメリットがあります。

植物状態などの深刻な後遺障害が絡む場合、被害者の家族は法的知識が十分でないことがほとんどであり、どのような手続きを進めるべきか分からないケースが多いです。

 

無料相談では、現在の状況や被害者の状態を説明することにより、適切なアドバイスを受けることができます。

 

また、無料相談を通じて弁護士の対応力や専門性を事前に確認することで、信頼のおける弁護士を選ぶ判断材料となります。

相談の中で料金体系や具体的な事例も確認できるため、負担を最小限に抑えて進めることが可能です。

相談後に正式依頼へ進むかどうかを判断できる点も安心です。

交通事故による植物状態のようなケースでは、早い段階で専門家のサポートを受けることが、適正な慰謝料を含む賠償金の確保につながります。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による無料相談を行っております。

当事務所は獲得金額からのご精算という報酬体系を導入しておりますので、ご安心してご依頼いただくことが可能です。

 

当事務所では、同じく極めて重度の後遺障害の事案で、被害者の方のご自宅を訪問させていただき、生活態様を丁寧に立証したことで裁判に勝訴した案件などもあり、

重度後遺障害の方のサポートに自信を持っております。

 

 

大切な方が交通事故被害に遭い、ご不安をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士がサポートいたします。

 

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士によるサポートの詳細についてはこちら。

 

 

 

交通事故慰謝料全般についての詳しい解説はこちら。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。