後遺障害 慰謝料 逸失利益
植物状態の被害者を守るための弁護士の役割と慰謝料請求のポイント
2025.01.20

交通事故によってご家族が突然植物状態(遷延性意識障害)になってしまった場合、ご家族が受ける精神的・経済的な打撃は計り知れません。
日々の介護に追われる中で、保険会社との交渉・成年後見人の選任・後遺障害等級の申請といった複雑な法的手続きも同時に進めなければならない状況に置かれてしまいます。
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 植物状態(遷延性意識障害)の基本知識と後遺障害等級
- 請求できる損害賠償金の項目と相場
- 家族がすべき手続きの流れ
- 損害賠償額を増額するためのポイント
- 弁護士に依頼するメリット
などについて解説します。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
被害者の方お一人お一人が最も適切な賠償を受けられるようサポートいたします。
交通事故でご家族が植物状態になられ、ご不安をお抱えの方はぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
交通事故被害者側損害賠償専門弁護士へのお問い合わせはこちらのページから。
- 交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の基本知識
- 交通事故による植物状態(遷延性意識障害)での弁護士の役割
- 交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の損害賠償金
- 交通事故による植物状態(遷延性意識障害)で請求可能なその他の賠償項目
- 交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の慰謝料請求で押さえるべきポイント
- 交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の損害賠償額を増やすためのポイント
- 交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった場合に家族がすべき手続き
- 交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の介護・治療問題
- 交通事故でご家族が植物状態になってしまった場合は弁護士に相談しましょう
- 交通事故による植物状態(遷延性意識障害)に関するよくある質問
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の基本知識

植物状態とは何か?その定義と特徴
植物状態とは、重度の脳損傷などにより自力での移動や意思疎通が不可能になり、意識がない状態が長期間続く状況を指します。
この状態は医学的には「遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)」とも呼ばれます。
脳死とは異なり意識障害の一つであるため、まれに回復することもあると言われています。
次の6つの項目を満たす状態が3か月以上続く場合に植物状態(遷延性意識障害)と診断されることになります。
- 自力移動ができない
- 自力で食物を摂取できない
- 糞・尿失禁状態である
- 眼球が物を追うことはあるが認識はできない
- 「目を開け」「手を握れ」等の簡単な命令に応じることがあるが、それ以上の認識はできない
- 声は出るが意味のある発語ではない
このような症状は、被害者本人はもちろん家族や介護者にも精神的・身体的な大きな負担を強いることが多いため、適切な支援や賠償が必要になります。
関連記事:遷延性意識障害について(弁護士法人小杉法律事務所監修)
植物状態と交通事故の関係
植物状態の原因の多くは、交通事故による頭部外傷や脳損傷に起因します。
例えば、乗車中の衝突事故や歩行中に車両との接触事故が重度の障害を引き起こす可能性があります。
このような事故では被害者が植物状態に陥る場合があり、介護や治療が長期にわたって必要になるケースも少なくありません。
植物状態を伴う事故では、被害者が意識を失っているため、自ら賠償や慰謝料の請求手続きを行うことができません。
そのため、家族や成年後見人が代理人となって法的手続を進める必要があります。
特に、交通事故における保険会社との交渉においては、法的知識や交渉経験を持つ弁護士の支援を受けることが重要です。
後遺障害等級に基づく評価と影響
当該交通事故による受傷で植物状態に陥ったと診断された場合は、後遺障害等級の中でも最も重い「後遺障害等級第1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当します。
この等級は、被害者が日常生活を送る上で全面的な介護を必要とする状態を意味します。
等級が重いほど、慰謝料や賠償金の額も高額になる傾向がありますが、適正な補償を受けるには法的手続きを確実に行うことが不可欠です。
後遺障害等級に基づく評価では、介護費用や逸失利益、後遺症慰謝料が考慮されます。
また、家族が被る経済的負担を軽減するために、家屋改造費や将来介護費、付添看護費用なども適切に請求する必要があります。
このような請求を進める際には、交通事故に詳しい弁護士と連携することで、賠償請求がもれなくスムーズに進む可能性が高くなります。
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)での弁護士の役割

遺族や介護者の精神的負担を軽減する支援
遷延性意識障害、いわゆる植物状態に陥った被害者を抱える遺族や介護者は、日々の介護や生活費の問題に加えて、
法律面での複雑な手続きや請求項目について対応しなければならず、大きな精神的負担を抱えていらっしゃることと思います。
このような場合、経験豊富な弁護士の存在は非常に大きな支えとなります。
弁護士は、遺族や介護者に代わり煩雑な手続きを進めるだけでなく、状況を踏まえた専門的なアドバイスを提供します。
こうした支援は、遺族や介護者が少しでも精神的余裕を持って日々の生活に専念するための助けとなります。
法的手続の代理人としての責任
植物状態の被害者に代わり損害賠償請求を行う際、弁護士は法的手続全般の代理人を務める重要な役割を果たします。
たとえば、被害者が意識を回復しない場合、遺族は家庭裁判所で成年後見人の選任を行い、その後に賠償請求を進める必要があります。
弁護士はこのような法的なプロセスを熟知しており、迅速かつ正確に対応することで、被害者家族の負担を大幅に軽減します。
また、弁護士は法律知識を活用し、被害者の権利を最大限に主張することができます。
公平な賠償金額を実現するための交渉
保険会社との賠償金額に関する交渉は、法律や金額の専門知識が求められるだけでなく、高度な交渉スキルも必要です。
遺族や介護者が直接保険会社とやり取りされると、相手がプロであることもあり、結果として適正な賠償額を受け取れない場合もあります。
このような状況を防ぐため、弁護士が関与することが重要です。
後述するように、被害者の方が植物状態に陥った場合に賠償請求できる費目は多岐にわたり、
一つ一つについて正確な算定をすることが重要となります。
弁護士は被害者側にとって最も適切な金額である弁護士基準での請求を行うことはもちろん、
専門弁護士に依頼することで被害者の方お一人お一人の生活の変化を正確に反映した適切な賠償請求を行うことが可能になります。
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の損害賠償金

まず、植物状態(遷延性意識障害)かどうかにかかわらず、交通事故被害者一般に請求できる損害賠償金についてみていきます。
治療費
交通事故被害に遭い、負った怪我等の治療に対して支払われる治療費です。
治療費として加害者側に請求が認められるのは「必要かつ相当な実費全額」とされています(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)より)。
ではその治療費が必要かどうかはどのようにして判断されるかというと、
治療の効果が出ているかどうかで判断されます。
交通事故によって負った怪我が、治療を受けることによって良くなっているのであれば必要というわけです。
損害賠償請求実務においては、この治療の効果がでなくなるタイミング、つまりはこれ以上治療をしても良くならならないと判断されるタイミングを「症状固定」といい、
原則として治療費の請求は、この「症状固定」のタイミングまでしか認められません。
では、植物状態(遷延性意識障害)の場合はどうでしょうか。
まれに意識が回復することがあるといわれているとはいえ、治療を行うことで回復させることができるわけではありません。
したがって、植物状態(遷延性意識障害)の場合は、症状固定の判断が比較的早期に行われる場合もあります。
入院雑費
入院中には病衣やおむつなどの利用が必要になります。
これらの雑費については、特段の立証がなくとも、入院1日あたり1500円の請求が可能です。
神戸地方裁判所平成16年12月20日判決(交通事故民事裁判例集37巻6号1683頁)では、
1日1500円×597日間のほかに、貸おむつ代1日2000円×597日間の入院雑費が認められています。
休業損害
植物状態(遷延性意識障害)となってしまった被害者の方が就労していたような場合には、
事故に遭ってしまったことで、本来得られるはずであった収入が得られなくなってしまいます。
このような場合には、休業損害の請求が可能です。
休業損害の請求は症状固定時まで、それ以降は、逸失利益というかたちでの請求が一般的です。
逸失利益
逸失利益とは、将来にわたって得られるはずであったのに、後遺症が残ってしまったことで得られなくなった利益をいいます。
後遺症が残ってしまったことで得られなくなった利益(後遺症逸失利益)の計算は、
| 後遺症逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数) |
という式で行われます。
この式の「労働能力喪失率」は、 後遺症が残ってしまったことで、その人にどれだけの働きにくさが残ってしまったか、という割合ですが、
基本的に実務上では、残存した後遺症の程度(後遺障害等級)に応じて労働能力喪失率が決定される運用が一般的です。
この残存した後遺症の程度(=後遺障害等級)と、労働能力喪失率の対応をまとめた表が、
労働省労働基準局長通牒(昭32.7.2基発第551号)別表労働能力喪失率表になります。
東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」全訂5版(別冊判例タイムズ38号)11頁では,
東京地裁民事第27部(交通事故専門部)の見解として
「自賠責保険で後遺障害等級のいずれかの等級に該当すると認定されている場合は,
被告が当該後遺障害等級の認定内容自体を争わない場合も少なくないし,
被告が認定内容を争う場合も,自賠責保険で後遺障害等級のいずれかの等級に該当すると認定された事実があると,
特段の事情のない限り,後遺障害等級に見合った労働能力喪失率と慰謝料の額について一応の立証ができたと考えられるから,
裁判所は,被告からの十分な反証のない限り,同様の等級を認定することが多く,効率的な審理を行うことが可能となる。」と記されています。
遷延性意識障害の場合には、後遺障害等級別表第一第1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
に該当しますから、労働能力喪失率は100%となります。
その他、基礎収入は被害者の事故前年の収入を、労働能力喪失期間は、症状固定時の年齢から67歳までを原則としますが、
個々人の事情によって細かい修正が加えられたりすることもあります。
逸失利益は数千万以上に上ることが考えられますから、個別の事情をしっかりと反映した適切な計算を行うよう気を付けましょう。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故被害に遭い、遷延性意識障害となること自体が被害者にとっては甚大な苦痛です。
したがってこの苦痛に対して、入通院慰謝料(傷害慰謝料)の請求が認められます。
弁護士基準(裁判基準)においては、この入通院慰謝料(傷害慰謝料)は入通院期間で決定されます。
仮に症状固定までの期間が6か月だったとすると、赤い本(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編))別表Ⅰより、
244万円が一つの目安となります。
ただし、赤い本においては、
- 「傷害の部位、程度によっては、別表Ⅰの金額を20%~30%程度増額する。」
- 「生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する。」
等ともされているため、しっかりとこういった文言を踏まえて増額を主張していくことが重要です。
後遺症慰謝料
後遺症が残ってしまった場合、後遺症により将来にわたって発生する支障や苦痛に対して、後遺症慰謝料の請求が認められます。
この後遺症慰謝料も、後遺症逸失利益と同様、基本的には認定される後遺障害等級に応じて金額が決まります。
遷延性意識障害は別表第一第1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当しますから、
弁護士基準(裁判基準)における後遺症慰謝料は、2800万円が一つの目安となります。
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)で請求可能なその他の賠償項目

交通事故被害者が植物状態(遷延性意識障害)になってしまった場合、重度の後遺障害が残ってしまった場合に特有の項目についても請求ができます。
順に見ていきましょう。
将来治療費(症状固定後の治療費)
先ほども見たように、損害賠償請求実務において請求が認められている治療費とは、それを支出することによって症状改善の効果がみられる場合に限られます。
したがって、基本的には症状固定後の治療費や将来の治療費については請求が認められないはずですが、
遷延性意識障害のような治療を継続しなければ悪化してしまうようなケースでは、請求が認められることがあります。
| さいたま地方裁判所平成21年2月25日判決(交通事故民事裁判例集42巻1号218頁)では、
四肢麻痺、意識障害等で別表第一第1級1号の認定を受けた女性について、症状固定後も、症状悪化を防ぎ、在宅介護への移行準備として入院治療が必要であったとして、 症状固定後の治療費として約468万円が認められています。 |
| 名古屋地方裁判所平成17年5月17日判決(交通事故民事裁判例集38巻3号694頁)では、
四肢完全麻痺、呼吸筋麻痺等で第1級3号の認定を受けた33歳男性について、症状固定後もその状態を維持するために在宅治療を要するとして、 平均余命46年間について、計3000万円の将来治療費が認められています。 |
入院付添費
入院に当たり職業付添人や、近親者付添人の介助を要するような重篤な症状が残ってしまった場合には、入院付添費を請求することができます。
この入院付添費は、職業付添人の場合には発生した実費全額、近親者付添人については、1日につき6500円が損害としても認められます。
なお、症状の程度が重篤であったり、被害者が幼児、児童であったりといった事情がある場合には、1~3割の範囲で増額が考慮されることがあります。
| 仙台地方裁判所平成21年11月17日判決(交通事故民事裁判例集42巻6号1298頁)では、
遷延性意識障害等を負った中学生について、症状が極めて重篤であること、母が1日も離れることなく付き添っており、父も毎日朝夕に面会に来ていたことなどを考慮し、 505日間にわたり日額8500円の計429万円余りの入院付添費を認めています。 |
| 名古屋地方裁判所平成4年1月29日判決(交通事故民事裁判例集25巻1号107頁)では、
日常生活のすべてにわたって他人の看護を要する被害者について、年収650万円の母親が看護のため退職した場合に、日額1万円の入院付添費を認めています。 |
将来介護費
植物状態(遷延性意識障害)の場合には、将来にわたって介護が必須です。
この将来にわたって必要になる介護費用についても、将来介護費として請求が可能です。
職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円が認められますが、具体的な看護の状況により増減することがあります。
| 仙台地方裁判所平成19年6月8日判決(自保ジャーナル1737号3頁)では、
遷延性意識障害の26歳女性について、現在の医療施設の設備状況などからは費用が高くなるとしても在宅介護を選択することはやむを得ず、 24時間の介護、2人の人手が必要になるとし、母が67歳になるまでは年間240日は日額2万円(母8000円・職業介護人1万2000円)、年間125日間は1万5000円(父母で介護)、 以降は日額2万円(職業介護人2名で介護)の計1億2500万円の将来介護費が認められています。 |
| 東京地方裁判所平成28年9月6日判決(交通事故民事裁判例集49巻5号1088頁)では、
遷延性意識障害の38歳女性について、口頭弁論の終結までは母(近親者付添人)の介護相当額及び職業介護の実負担額を考慮して日額1万円とし、 それ以降は母が67歳を超えていることや、職業介護利用の必要性がさらに高まっていくことなどから、日額2万円利、合計9978万円余の将来介護費が認められています。 |
家屋・自動車等改造費 転居費用等
自宅での介護を行うにあたり、家屋を改造したり、自動車を介護用にしたり、あるいは介護可能な物件への転居を余儀なくされた場合には、
その費用についても請求が可能です。
これらの費用の請求にあたっては、支出の必要性について主治医から意見をもらうことで、認定の可能性が高まります。
| 大阪高等裁判所平成14年5月23日判決(自保ジャーナル1457号3頁)では、
遷延性意識障害の3歳男児について、エレベーター設置費用、保守管理費用の8割を含め、家屋改造費として1476万円余りが認められています。 |
| 名古屋地方裁判所平成23年2月18日判決(交通事故民事裁判例集44巻1号230頁)では、
遷延性意識障害の21歳男性について、新たな土地に在宅介護に適した家を新築するために要した建物建築費と、通常の建物を建築する場合の費用との差額である、 1895万円を、転居差額として認めています。 |
| 大阪地方裁判所平成19年7月26日判決(自保ジャーナル1721号8頁)では、
遷延性意識障害等の8歳男児について、介護車両購入費359万円余のうち、60%を相当因果関係のある損害としたうえで、 7年ごとに9回の買替に要する計721万円余を、自動車改造費等として認めています。 |
| 千葉地方裁判所平成17年7月20日判決(自保ジャーナル1610号3頁)では、
遷延性意識障害の17歳男性につき、自宅介護を行うために介護器具等の使用や選択によって光熱費の支出が増加するとして、 光熱費月額8000円、合計180万円余りを認めています。 |
後見等関係費用
被害者が植物状態(遷延性意識障害)となってしまった場合、損害賠償請求権自体は被害者本人が有していますが、
被害者本人の意思で損害賠償請求権を行使することができないため、成年後見人をつけるなどの手続が必要となります。
その成年後見開始のための審判手続費用、後見人報酬などについても、必要かつ相当な範囲で損害として加害者側に請求が可能です。
近親者固有の慰謝料
被害者本人が植物状態(遷延性意識障害)となってしまった場合には、
その家族も大きな精神的苦痛や、将来の介護等に対する精神的な負担を負います。
最高裁判所昭和33年8月5日判決(民集12巻12号1901頁及び判例時報157号12頁)では、
「死亡の場合でなくとも、死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には、近親者にも慰謝料請求権が認められる」と判示されています。
| 仙台地方裁判所平成19年6月8日判決(自保ジャーナル1737号3頁)では、
遷延性意識障害の26歳女性につき、本人分として3000万円、介護に人生の大半を費やす父母に各300万円の、合計3600万円の後遺症慰謝料が認められています。 |
| 横浜地方裁判所平成12年1月21日判決(自保ジャーナル1344号1頁)では、
植物状態の8歳女児について、未婚の母として単身で被害者を養育し、その成長を楽しみにしていたが、 事故によりその夢を奪われ、老いるまで看護にあたらなければならず、被害者の将来に不安を抱くこと等を総合して、 母固有の慰謝料として800万円が認められています。 |
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の慰謝料請求で押さえるべきポイント

治療中に請求可能な項目と注意点
植物状態(遷延性意識障害)の被害者が治療中の場合、その期間内に請求可能な賠償項目があります。
主に治療費、入通院慰謝料、入院雑費、近親者の入院付添費などが含まれます。これらの費用は、被害者の治療とその生活を支えるための実費に基づきます。
特に植物状態に陥った場合はその時点から被害者ご本人がお仕事が全くできなくなるだけでなく、
付添のためにご家族も休業の必要性が発生するなど、生活費に対する不安が大いに増大することが考えられます。
治療費の対応については相手方保険会社が行ってくれる場合も多いですが、
休業損害などについては早期に弁護士に相談して内払の交渉を行うことで少しでも不安が和らぐということもあるでしょう。
また、この段階から将来の介護方針(在宅介護か施設介護か)・必要な家屋改造の内容などの記録を整理しておいたり、
主治医から意見をもらっておいたりすることが、後の適正な損害賠償請求に直結します。
症状固定後の請求手続の流れ
植物状態(遷延性意識障害)の場合、症状固定後に請求できる賠償項目がさらに拡大します。
症状固定とは、治療を続けてもこれ以上症状が改善しないと医師が判断した時点を指します。
先ほども見たように植物状態(遷延性意識障害)はまれに回復することもありますが、
損害賠償請求実務上はどこかのタイミングで区切りをつけて賠償金の計算をする必要があり、その区切りが症状固定というわけです。
症状固定を迎えた段階の症状を後遺症といい、この時の症状の程度によって後遺障害等級の認定がされます。
後遺障害等級の認定申請を行うためには、まず、後遺障害診断書を医師に作成してもらい、それを自賠責保険に提出することで、後遺障害等級の審査がされます。
もっとも、交通事故により植物状態に陥った(遷延性意識障害)と判断された場合には、基本的には後遺障害等級別表第一第1級1号が認定されることになります。
後遺障害等級の認定を受けることで、ここまで見てきたもののうち、
- 後遺症逸失利益
- 後遺症慰謝料
- 近親者固有の慰謝料
- 将来介護費
- 家屋改造費や自動車改造費など
などを請求することができるようになります。
それぞれの費目について請求の際に気を付けるべきポイントが多いため、現場での知見を持つ弁護士に代理を依頼することで、適正かつスムーズな交渉が可能になります。
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の損害賠償額を増やすためのポイント

介護費用やリハビリ費用の計上方法
植物状態(遷延性意識障害)の被害者の介護には、長期的かつ多額な費用が必要となり、この介護費用についても請求をする必要があります。
介護費用は職業介護人(職業付添人)に依頼する場合と近親者が行う場合とで異なり、
職業介護人(職業付添人)は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円が認められることになっています。(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)参照)
| 横浜地方裁判所平成21年5月14日判決(自保ジャーナル1802号3頁)では、遷延性意識障害で第1級1号の認定を受けた症状固定時45歳の男性について、
施設入所中の付添介護費として日額3000円、計約132万円、 施設退所後の自宅介護費として、妻67歳まで平日は近親者介護費日額1万円、休日は職業介護人2人分日額3万2354円、計約6197万円 その後平均余命まで職業介護人2人分日額3万2354円、計約3792万円の、 合計1億0122円ほどを将来介護費として認定しています。 |
家屋改造費や自動車改造費、転居費用等の請求事例
植物状態の被害者を自宅で介護する場合、それまでの生活様式を大きく変えざるを得ないことがあります。
この点、先ほどの『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)では、
「被害者の受傷の内容、後遺症の程度、内容を具体的に検討し、必要性が認められれば相当額を認める。浴室、便所、出入口・自動車の改造費などが認められている。なお、転居費用及び家賃差額が認められることがある。」とされています。
この家屋改造費や自動車改造費などの請求は、今までの家屋などの形状ではどういった支障が生じるかというのを実際に見てもらうことが重要です。
改造前と改造後の使い方を動画で撮影しておくなどで証拠を集めておくことで、請求に大いに役立ちます。
逸失利益の計算とその妥当性
植物状態の被害者の場合、逸失利益は非常に高額になる可能性があります。
逸失利益とは、本来であれば被害者が生涯を通じて得られたであろう収入の喪失額を意味します。
被害者の年齢や職業、雇用形態、将来の昇給見込みなどを基に計算を行いますが、植物状態に陥った場合に使用される労働能力喪失率は100%とされることが一般的です。
さらに、遷延性意識障害が後遺障害等級第1級1号に該当する場合、保険会社基準ではなく弁護士基準での計算を適用することで、請求額が大きく変わる可能性もあります。
弁護士の適切なサポートを受けながら証明資料をそろえることが、適切な逸失利益の認定に繋がります。
交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった場合に家族がすべき手続き

成年後見人の選任手続き
遷延性意識障害となれば、被害者本人は自分で意思決定をすることができないため、損害賠償請求や後遺障害等級認定の申請といった法律行為を本人が行うことはできません。
そのため、成年後見制度を利用して法定代理人(成年後見人)を選任することが必要になります(民法第7条)。
| 民法第7条
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。 |
成年後見人の役割
成年後見人は、被害者本人の財産を適切に維持管理するとともに、損害賠償請求・後遺障害等級認定申請・保険会社との示談交渉などの法律行為を被害者に代わって行います。
選任手続きの流れ
- 家庭裁判所に後見開始の審判の申立てを行う(民法第7条)
- 申立書・診断書・財産目録等の書類を提出する
- 家庭裁判所による審判(調査・鑑定等を経て後見人が選任される)
- 後見登記が行われる
申立費用(印紙代・登記費用)や弁護士に依頼した場合の費用は、損害として加害者に請求することができます。
なお、配偶者や子などの近親者が後見人に選任される場合が多いですが、弁護士等の専門家が選任されてしまうことがあります。
専門職後見人が選任されてしまうと、被害者の財産の管理を専門職後見人と分担して行うことになり、
手続が煩雑になることもありますから、後見申立ての手続を弁護士に委任し、後見人には近親者の方がなれるようにするのが良いでしょう。
後遺障害等級認定の申請手続き
成年後見人の選任後、症状固定を経て後遺障害等級認定の申請を行います。
交通事故により遷延性意識障害になってしまった、ということが認められれば、
基本的には後遺障害等級別表第一第1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当することになります。
加害者との示談交渉
後遺障害等級の認定を受けた後、加害者側の任意保険会社との示談交渉を行います。
示談交渉における主要な争点
遷延性意識障害の示談交渉では、以下の点が特に争点になりやすいです。
- 将来介護費の算定(在宅介護か施設介護か、介護期間の長短)
- 家屋改造費・自動車改造費の必要性と金額
- 逸失利益の計算(余命短縮問題・労働能力喪失率)
- 被害者の過失割合
保険会社から提示される金額は、一見すると高額なように見えても、将来介護費等をきちんと積算すると実際には適切な賠償に遠く及ばないことが多いです。
示談書への署名前に必ず弁護士に相談することが重要です(一度署名すると原則再交渉できません)。
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)の介護・治療問題

介護方法の選択と賠償金への影響
植物状態(遷延性意識障害)の被害者の介護方法としては、大きく分けて、
- 在宅介護
- 施設介護
の2つの方法があります。
在宅介護の場合、住み慣れた家で家族と過ごす時間を確保できるなどのメリットはありますが、
家族が介護のために生活スタイルを変更することを余儀なくされたり、在宅での介護のために家屋を改造したりする必要が生じます。
他方で、施設介護の場合には、在宅介護ほど家族に負担が生じることは少ないですが、
職業介護人の費用が高額になる可能性があります。
それぞれのご家族のお気持ちによってどちらが良いかどうか、切り替えるとしていつからかなどは変わってくると思いますから、
その判断をしっかりと賠償請求に反映できるような準備は進めておく必要があります。
平均余命と損害賠償請求実務における問題
遷延性意識障害の状態でも脳幹機能は保たれており、自発呼吸があります。
栄養補給や褥瘡予防などの適切な看護により数年~十数年の間生存が可能だとされていますが(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、280頁)、
この点、「数年~数十年」という書籍もあり、一様には言いにくい状態だと思われます。
加害者側は平均余命までの生存可能性が少なくないと主張し、介護費用の算定期間を短期間にすべきだと争うことが多くありますが、
最近の傾向としては、被害者の健康状態が思わしくない状態を繰り返すなどの特別な事情がないかぎり、平均余命まで算定する裁判例が多数です。
交通事故でご家族が植物状態になってしまった場合は弁護士に相談しましょう

交通事故専門の弁護士を選ぶ重要性
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)といった重大な事態では、専門知識を持つ弁護士を選ぶことが非常に重要です。
植物状態のように重篤な後遺障害がある場合、慰謝料や介護費用、逸失利益などの賠償金が高額となるケースが多いですが、その請求には正確な法的知識と交渉力が求められます。
また、被害者の状態を適切に説明し、後遺障害等級が正しく認定されるようサポートすることが重要です。
交通事故専門の弁護士であれば、遷延性意識障害における賠償請求のポイントや判例に精通しているため、被害者や家族が抱える複雑な手続きもスムーズに進めることができます。
無料相談を活用するメリット
弁護士選びにおいて、無料相談を活用することには多くのメリットがあります。
植物状態などの深刻な後遺障害が絡む場合、被害者の家族は法的知識が十分でないことがほとんどであり、どのような手続きを進めるべきか分からないケースが多いです。
無料相談では、現在の状況や被害者の状態を説明することにより、適切なアドバイスを受けることができます。
また、無料相談を通じて弁護士の対応力や専門性を事前に確認することで、信頼のおける弁護士を選ぶ判断材料となります。
相談の中で料金体系や具体的な事例も確認できるため、負担を最小限に抑えて進めることが可能です。
相談後に正式依頼へ進むかどうかを判断できる点も安心です。
交通事故による植物状態のようなケースでは、早い段階で専門家のサポートを受けることが、適正な慰謝料を含む賠償金の確保につながります。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による無料相談を行っております。
当事務所は獲得金額からのご精算という報酬体系を導入しておりますので、ご安心してご依頼いただくことが可能です。
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当事務所では、同じく極めて重度の後遺障害の事案で、被害者の方のご自宅を訪問させていただき、生活態様を丁寧に立証したことで裁判に勝訴した案件などもあり、
重度後遺障害の方のサポートに自信を持っております。
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大切な方が交通事故被害に遭い、ご不安をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士がサポートいたします。
交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士によるサポートの詳細についてはこちら。
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)に関するよくある質問

交通事故で植物状態になった場合の慰謝料はいくらですか?
A. 後遺障害等級別表第一第1級1号が認定された場合、弁護士基準による後遺障害慰謝料は2,800万円が目安となります。
さらに、被害者の配偶者・父母・子などの近親者にも、一人につき100万円〜300万円程度の固有の慰謝料が認められることがあります(最高裁判所昭和33年8月5日判決(民集12巻12号1901頁及び判例時報157号12頁))。
慰謝料のほかに、逸失利益・将来介護費・家屋改造費・入通院慰謝料なども加わるため、損害賠償金の総額は数億円単位となるケースも珍しくありません。
一方、保険会社が任意保険基準で提示する金額は弁護士基準を大きく下回ることが多く、早期に弁護士に相談することが適正な賠償を受け取るために極めて重要です。
植物状態になったら延命を拒否できますか?
A. 植物状態(遷延性意識障害)の方本人はすでに意思表示ができない状態であるため、
事前に「尊厳死宣言(延命治療拒否)公正証書」を作成しておくことが延命拒否の意思を示す一つの方法です。
尊厳死宣言公正証書とは、本人が判断能力のある間に公証人の前で「将来意識不明となった場合には延命治療を拒否する」旨を明確にした公正証書です。
これにより、医師・医療機関・家族に対して本人の意思を明確に伝えることができます。
とはいえ、交通事故という突然の事故により植物状態になった場合に、事前に用意しておくというのは難しいことです。
植物状態と脳死の違いは何ですか?
植物状態(遷延性意識障害)とは、
頭部外傷や脳内出血などのため昏睡状態に至り、生命の危機を脱したのちに開眼できる状態にまで回復したものの、周囲との意思疎通能力を喪失した状態
のことを言います。
大脳半球が広範囲(びまん性)に障害されているものの、脳幹機能は保たれているので自発呼吸は可能で、心拍も維持されます。
栄養補給や褥瘡予防などの適切な看護により、数年~数十年の間生存が可能だと言われています。
脳死とは、全脳の不可逆的機能喪失で、脳機能の回復はない状態(全脳死)です。
自発呼吸はなく、人工呼吸器管理下でなければ呼吸循環を維持できません。
短期間のうちに従来の1;心停止、2:呼吸停止、3:瞳孔散大という死の三徴候を呈します。
なお、遷延性意識障害は高次脳機能障害とも異なります。
高次脳機能障害は、記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害などを呈するものであり、意識自体はある程度保たれているのが特徴です。
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