死亡事故コラム

コラム

交通事故の死亡保険金とは?保険金・賠償金の両方を受け取れる?相場や請求手続きについても解説

2024.11.24

死亡慰謝料 死亡逸失利益 賠償金

交通事故は突然起こり、被害者やその遺族に大きな影響を与える深刻な事態です。

中でも死亡事故となると、ご遺族は深い悲しみに加えて賠償金や慰謝料の請求に関する複雑な問題にも直面します。

賠償金の請求は、事故の状況や過失割合、保険会社との交渉次第で大きく変わるため、適切な対応が求められます。

 

ここでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、

  • 死亡保険金と賠償金は両方受け取れるのか
  • 交通事故における死亡保険金・賠償金それぞれの概要
  • 死亡慰謝料の相場と計算基準
  • 請求できる損害賠償の費目
  • 保険金・賠償金の請求手続きの流れ
  • 税金の取り扱い
  • 慰謝料を適切に受け取るためのポイント

などについて解説し、遺族が直面する問題について理解しやすい内容を提供いたします。

 

交通死亡事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士によるサポートをさせていただいております。

遺されたご家族の未来を守るために、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

弁護士法人小杉法律事務所における死亡事故被害者側専門弁護士のサポートの詳細についてはこちら。

 

交通事故の死亡保険金・賠償金は両方受け取れる?

結論から申し上げると、交通事故の死亡保険金(生命保険)を受け取っても、加害者側への損害賠償請求額は減額されません。両方を受け取ることができます。

損害賠償の世界には「損益相殺」という概念があり、被害者が損害に関連して利益を得た場合にはその分を賠償額から差し引くという考え方があります。

 

しかし、生命保険の死亡保険金については、昭和39年9月25日最高裁判所第二小法廷判決(判例時報385号51頁)で、損益相殺の対象とはならないとされています。

昭和39年9月25日最高裁判所第二小法廷判決

生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人たる被上告人両名に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。

 

生命保険金は、既に払い込んだ保険料の対価として契約に基づいて給付される

不法行為(交通事故)などと関係なく払われるべきもの

たまたま被害者が交通事故で亡くなったために払われたとしても、原因に関係なく払われるものであるから、損害賠償金と差し引きしてはならない

 

ということです。

 

したがって、生命保険の死亡保険金と加害者への損害賠償金は、それぞれ独立した権利として両方を請求・受領することができます。

なお、自賠責保険や加害者側の任意保険からの賠償金については、別途請求する必要があります。それぞれの手続きを適切に進めることが重要です。

 

交通事故における死亡保険金とは

死亡保険金とは、被保険者(保険の対象となっている人)が死亡した際に、契約で定められた受取人に支払われる生命保険の給付金です。

交通事故で家族が亡くなった場合、故人が生命保険に加入していれば、契約内容に応じた死亡保険金を受け取ることができます。

 

死亡保険金には主に以下のような種類があります。

  • 定期保険:一定期間内に死亡した場合に保険金が支払われるもの。掛け捨て型が多く、保険料が比較的安価です。
  • 終身保険:一生涯を通じて死亡保障が継続するもの。解約返戻金があるタイプもあります。
  • 収入保障保険:死亡時から満期まで毎月一定額が支払われる保険。家族の生活費補填を目的としたものです。
  • 養老保険:満期まで生存した場合の満期保険金と、死亡した場合の死亡保険金が同額に設定されているもの。

 

受け取れる死亡保険金の金額は、加入している保険の種類・契約内容・保険金額によって大きく異なります。

 

また、死亡保険金の請求は生命保険の会社に対して行うものであり、加害者側への損害賠償請求とは手続きが全く別になります。

両方の手続きを並行して進めることが重要です。

 

交通事故における賠償金とは

交通事故における死亡事故は、遺族にとって非常に大きな精神的苦痛を伴うものであり、賠償金はその慰謝の一部として重要な役割を果たします。

 

賠償金の算定においては、事故の状況や過失割合、被害者の社会的背景などが考慮されることになります。

適正な賠償金を受け取るためには、弁護士のアドバイスを受けながら、しっかりと状況を整理し交渉を進めることが求められます。

 

過失割合とは、交通事故における加害者と被害者の責任割合を示すものです。

この割合に基づき、賠償金の算定において過失相殺が行われます。

 

たとえば、被害者に事故の30%の責任があるとされた場合、賠償金はその分減額される可能性があります。

 

被害者側の過失が大きいほど、減額される賠償金も多くなるため、最初の段階で正確な過失割合を把握することが大切です。

過失割合の算定で不利益を被らないよう、弁護士の助言を得て慎重に交渉を進めることが重要です。

 

死亡事故で過失相殺が争う場合に被害者側にとって最も不利になるのが、「被害者本人の証言を得られない」ことです。

ドライブレコーダー映像がある場合や目撃者がいるような場合はともかく、

加害者側しか証言をすることができないのは極めて被害者側にとって不利です。

 

当事務所の弁護士が解決した事例でも、加害者が「自分が被害者であっちが突っ込んできた」と嘘の証言をした事例がございます。

 

もちろん警察や検察による捜査で、事故当時の状況から分かることもありますが、あくまで刑事の話です。

民事の損害賠償請求においては被害者側からも適切な指摘をしなければ加害者の言い分が通ってしまう可能性もあります。

 

だからこそ、刑事裁判への被害者参加をすることが重要になります。

被害者参加制度とは、文字どおり被害者側が刑事裁判の流れに参加することができる制度であり、

  • 心情意見陳述
  • 被告人質問
  • 論告意見

等を行うことができます。

この刑事裁判で行われた審議や提出された証拠は、適切な手続を経ることで民事裁判でも証拠として提出することができますから、

被害者参加を行うことは民事の損害賠償請求を考える上でも極めて重要です。

 

 

また、被害者の方が人身傷害保険などの保険に加入されていた場合には、

被害者の方の過失分も含めた裁判基準満額を受け取ることができる場合があります。

 

 

早々に示談してしまうのではなく、弁護士に相談してアドバイスを受けることで、適切な賠償金を得られる可能性は大きく高まります。

 

 

交通事故の死亡保険金の相場

死亡保険金の金額は、加入している生命保険の種類・契約内容・設定した保険金額によって大きく異なります。

一概に「相場はいくら」とは言いにくいものの、公益財団法人生命保険文化センターの2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2025年1月発行)によれば、

2人以上世帯における世帯普通死亡保険金額は平均1936万円となっています。

 

保険金の金額はあくまで契約内容によって決まるものであり、事故の状況や相手方の過失割合とは無関係です。

 

受取人は、故人が加入していた保険会社に対して別途請求手続きを行う必要があります。

一般社団法人生命保険協会の生命保険契約照会制度を利用することで、亡くなった被害者が加入している生命保険があったかどうかを確認することができます。

 

交通事故の死亡慰謝料の相場

交通事故において、被害者が死亡した場合の慰謝料は、その遺族にとって非常に大きな問題となります。

死亡慰謝料の相場は自賠責保険基準と弁護士基準によって異なります。

 

自賠責保険の役割と実際の賠償金額

自賠責保険は、交通事故において基本的な補償を提供するための制度です。

 

自動車損害賠償保障法に基づき強制加入が義務付けられているこの自賠責保険によって、

被害者やそのご遺族は一定程度の賠償金を受け取ることができます。

 

具体的な支払基準(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)をみてみましょう。

 

第4 死亡による損害 

3 死亡本人の慰謝料

死亡本人の慰謝料は、400万円とする。

4 遺族の慰謝料

慰謝料の請求権者は、被害者の父母(養父母を含む。)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児を含む。)とし、その額は、請求権者1人の場合には550万円とし、2人の場合には650万円とし、3人以上の場合には750万円とする。なお、被害者に被扶養者がいるときは、上記金額に200万円を加算する。

 

このように、

  • 被害者本人の慰謝料は400万円
  • 請求権者1人の場合は550万円(被扶養者がいれば750万円)
  • 請求権者2人の場合は650万円(被扶養者がいれば850万円)
  • 請求権者3人の場合は750万円(被扶養者がいれば950万円)

とされています。

自賠責保険は過失相殺が被害者に有利になる規定があったり、平等かつ迅速に保険金のお支払があるという点では、

被害者側にとって有利になります。

 

 

しかし、この金額は被害者や遺族が被る実際の損害を完全に補うものではないことが多いため、

弁護士基準での請求がほぼ必須と言えます。

 

自賠責基準と弁護士基準の違い

弁護士基準ではより被害者にとって適切な基準であり、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)にまとめられています。

  • 被害者が一家の支柱として評価される場合:2800万円
  • 被害者が母親や配偶者として評価される場合:2500万円
  • 被害者がその他(独身の男女、子供、幼児等)として評価される場合:2000万円~2500万円

 

が一つの目安となります。

 

これを見ていただいても分かるとおり、自賠責基準に比べて非常に高額となっています。

お金の問題ではないのはもちろんですが、被害者側が本来受け取れるはずの適切な金額を受け取れないということは避けなければなりません。

だからこそ、弁護士基準での支払が必須です。

 

 

遺族の立場による変動

死亡慰謝料の額は遺族の立場によっても変動します。

それは、被害者に認められる死亡慰謝料とは別に、近親者の方に固有の慰謝料が認められるからです。

 

民法711条

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

 

この条文に規定のあるとおり、被害者の父母、配偶者及び子については、それぞれに固有の慰謝料を請求することができます。

 

さらに、最高裁判所第三小法廷昭和49年12月17日判決(民集第28巻10号2040頁)では、

不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法七一一条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。

 

と判示されており、被害者の父母、配偶者及び子でなくてもこれに準ずる程度の関係性があると認められる場合(例えば同居していた兄弟姉妹など)には、その方にも固有の慰謝料が認められることになっています。

 

慰謝料を適切に受け取るためには、被害者の状況や遺族の立場に基づいた具体的な計算が不可欠です。そのためには、交通事故に詳しい弁護士と相談し、最良の解決方法を探ることが重要です。

 

交通事故による死亡事故で請求できる損害賠償の項目

葬儀関係費用

被害者の方が死亡した場合には、先ほどまで見たような死亡慰謝料だけでなくほかにも様々な費目についての損害賠償を求めることができます。

代表的なものをみていきます。

葬儀関係費用

交通事故による死亡事故が発生した場合、遺族にとってまず考慮すべきなのは葬儀関係費用です。

 

弁護士基準では150万円までが一つの目安とされています。

さらに、150万円を超えるのに相当な理由があるが認められる場合は、さらに高額が認定されることもあります。

 

 

死亡逸失利益

死亡逸失利益は、亡くなった方が将来得るはずだった収入の損失を指します。

 

具体的な計算方法は、

死亡逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数(に対応するライプニッツ係数)です。

 

基礎収入はその被害者が今後このくらいの収入を得る見込みであったという金額を採用することとなり、

基本的には事故前の年収を基礎とします。

 

生活費控除率とは、被害者が死亡すると収入が得られなくなるのと同時に今後の生活に要するはずであった生活費もかからなくなりますから、

その方が生きていた場合を想定して、生活費を差し引くために考慮される率です。

この生活費控除率は被扶養者の有無や性別で決まります。

 

 

ライプニッツ係数とは中間利息を控除するための係数です。

 

 

死亡逸失利益は、遺族の生活を支える重要な賠償金の一部であり、適切な主張と十分な計算が求められます。

保険会社との交渉において、弁護士の助けを得ることで、より正確で有利な判断がなされるでしょう。

 

 

 

交通事故の死亡保険金の請求手続きの流れ

故人が加入していた生命保険の死亡保険金を受け取るためには、保険会社に対して所定の請求手続きが必要です。おおまかな流れは以下のとおりです。

 

① 加入保険の確認

故人が加入していた生命保険会社・契約内容を確認します。

遺品・通帳の引き落とし履歴・郵便物等から調べるほか、一般社団法人生命保険協会の生命保険契約照会制度の活用も有効です。

 

② 保険会社への連絡・請求書類の取り寄せ

保険会社の連絡先に死亡の事実を報告し、請求に必要な書類を取り寄せます。保険会社によってはWEB上でも手続きができる場合があります。

 

③ 必要書類の準備

一般的に必要となる書類は以下のとおりです。なお、保険会社・契約内容によって異なる場合があります。

  • 保険金請求書(保険会社所定の書式)
  • 被保険者の死亡診断書または死体検案書
  • 被保険者の住民票(除票)
  • 受取人の本人確認書類・印鑑
  • 受取人の戸籍謄本(被保険者との関係を証明するもの)

 

なお、死亡診断書・死体検案書は損害賠償請求においても原本が必要となります。

予め病院から複数枚作成してもらうか、それが難しい場合には「原本に相違なし」という旨を追記してもらうようにしましょう。

 

④ 書類の提出

必要書類を揃えて保険会社に提出します。

 

⑤ 保険会社による審査・支払い

保険会社が書類の内容を審査し、支払い可否を決定します。

通常、書類受領後5営業日〜2週間程度で指定口座に振り込まれることが多いですが、内容によっては審査期間が長くなる場合もあります。

 

 

交通事故の賠償金の請求手続きの流れ

死亡事故の示談交渉は、概ね以下の流れで進みます。

 

  1. 損害額の確定
  2. 保険会社からの示談提示
  3. 弁護士による交渉
  4. 示談成立または訴訟提起
  5. 賠償金の分配

 

1 損害額の確定

葬儀費用・治療費・逸失利益・慰謝料などすべての損害項目が確定した後に示談交渉を行うことになります。

基本的には、四十九日法要以後に加害者側保険会社から示談提示があります。

 

2 保険会社からの示談提示

加害者側の任意保険会社から損害賠償金の提示がなされます。

この段階の提示額は任意保険基準に基づくものであり、弁護士基準(裁判基準)と比べて大幅に低いことが多いため、

提示額をそのまま受け入れてはいけません。必ず弁護士に相談したうえで内容の妥当性を確認すべきです。

 

3 弁護士による交渉

ご依頼を受けた場合には、弁護士が弁護士基準(裁判基準)に基づいて損害額の計算を行います。

その計算ののち、保険会社からの示談提示との差額について交渉を進めていくことになります。

4 示談成立または訴訟提起

お互いが納得するラインで示談交渉が成立するに越したことはないです。

他方で、損害額が大きく、保険会社側の決済が下りないケースや、裁判基準満額をいただかないと(いただいてもなお)納得がいかないケースでは、

訴訟提起をすることも考えられます。

 

この場合、時間と費用がかかるというデメリットは生じますが、裁判所にしっかりと損害額の算定をしてもらうことができます。

 

5 賠償金の相続人間での分配

被害者本人分の賠償金(慰謝料・逸失利益等)は、原則として法定相続分に従って相続人間で分配されます(民法第900条)。

 

遺族固有の慰謝料については、各自が直接請求権を持ちます。

 

相続人間でのトラブルを防ぐため、分配方法について事前に遺産分割協議書を作成しておくことをお勧めします。

 

 

交通事故の死亡保険金・賠償金にかかる税金

保険内容別

損害賠償金は原則として非課税

交通事故により加害者側から受け取る損害賠償金(慰謝料・逸失利益・葬儀費用等)は、原則として非課税です。

所得税・相続税いずれの課税対象にもなりません。

 

 

死亡保険金には税金がかかるケースがある

一方、生命保険の死亡保険金については、契約形態(契約者・被保険者・受取人の関係)によって課税の種類が異なります。

主なパターンは以下のとおりです。

 

① 相続税の対象となるケース

  • 契約者=被保険者(=故人)、
  • 受取人=遺族(配偶者・子等)

の場合。 最も一般的な契約形態です。

死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

ただし、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があるため、枠内であれば課税されません。

 

② 所得税(一時所得)の対象となるケース

  • 契約者=受取人(生存中の配偶者等)
  • 被保険者=故人の場合。

保険料を自分で支払い、自分が保険金を受け取る形となるため、

保険金から支払保険料を差し引いた利益部分が一時所得として所得税・住民税の課税対象となります。

 

③ 贈与税の対象となるケース

契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合(例:契約者=父、被保険者=母、受取人=子)。

受取人が保険料を負担していないにもかかわらず保険金を受け取ることになるため、贈与税の課税対象となります。

 

いずれの場合も、非課税枠や各種控除の適用により実際に納税が生じないケースも多くあります。

税務上の取り扱いについては、税理士や税務署に確認することをお勧めします。

 

交通事故の死亡慰謝料が増額される主なケース

裁判

加害者の故意または重過失、著しく不誠実な態度等がある場合

まず大きなものとして挙げられるのが、加害者に故意または重過失、著しく不誠実な態度等がある場合には死亡慰謝料の額が上がることがあります。

気を付けなければならないのは、ここでいう重過失や著しく不誠実な態度は、一般的な過失や不誠実な態度を超えたものです。

 

交通事故で人を死亡させている以上、加害者に落ち度があるのは当然ですし、それによって被害者の方ご家族の方が精神的苦痛を受けるのも当然です。

 

納得がいかない点があることも重々承知しておりますが、一定程度の落ち度や精神的苦痛はそもそもの過失割合や慰謝料基準ですでに考慮されています。

 

『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2005年版』収録 高取真理子裁判官講演では、

裁判例から以下のような事情などが慰謝料増額事由に当たると言えるのではないかとされています。

 

加害者の重過失

  • 飲酒
  • 酒気帯び運転
  • 救護義務違反
  • 報告義務違反(ひき逃げ)
  • 速度超過
  • 信号無視
  • 居眠り
  • 無免許
  • わき見運転

加害者の著しく不誠実な態度

  • 証拠隠滅
  • 謝罪なし
  • 責任の否定

 

具体的な裁判例を見ていきます。

 

東京地方裁判所平成15年3月27日判決(交通事故民事裁判例集36巻2号439頁)では、加害者が飲酒後酩酊しながら自動車で帰宅する途中、

高速道を一般道と錯覚して逆走するという常軌を逸した行為により事故を発生させたことや、

謝罪意思の表明の在り方等において加害者に配慮の欠けた面があったこと等を考慮して、3600万円の死亡慰謝料が認められています。

 

東京地方裁判所平成16年2月25日判決(自保ジャーナル1556号13頁)では、加害者が酒酔い運転で対向車線に進入したため事故が生じたにもかかわらず、

事故後携帯電話をかけたり小便をしたりたばこを吸ったりするだけで救助活動を一切しなかったこと、捜査段階で自らの罪を逃れるために被害者がセンターラインを先に越えてきたと供述したこと等を考慮して、合計3600万円の死亡慰謝料が認められています。

 

東京地方裁判所平成15年5月12日判決(交通事故民事裁判例集36巻3号697頁)では、加害者が一方的かつ重大な過失によって被害者を死亡させたにもかかわらず、

事故後逃走を続け、逮捕後も完全黙秘し、刑事裁判でも事故は被害者の速度違反によるものであるなどと述べ、被害弁償を全くせず、謝罪の言葉すら述べないことなどを考慮し、

3000万円の死亡慰謝料が認められています。

 

被害者の生前の生活及び近親者の事故後の生活

今回の交通事故に遭ったことでの被害者及び近親者の無念が大きいと評価される場合には、被害者の生前の生活態様等が死亡慰謝料計算の際に考慮される場合があります。

裁判例を見てみましょう。

 

東京地方裁判所令和2年3月3日判決(交通事故民事裁判例集53巻2号323頁)では、小学生の子供2人と同居して養育していた女性について、

事故の7日後から病院の臨時職員としての採用の内定が出ていたにもかかわらず事故に遭って死亡してしまったことを考慮して、本人分2400万円及び子ども各200万円の、合計2800万円の死亡慰謝料が認められています。

 

東京高等裁判所平成22年10月28日判決(判例タイムズ1345号213頁)では、単身の男性会社員について、

希望していた鉄道会社に就職後、まじめに勤務していたことや、父母思いの優しい息子であったこと、結婚を誓っていた交際相手がいたことなどを考慮して、

2800万円の死亡慰謝料が認められています。

 

名古屋高等裁判所平成29年9月28日判決(自保ジャーナル2011号105頁)では、当時小学生だった9歳の男児について、

両親は突然小学生の被害者を失い、いまだショックをいやすことができない生活を送っていることや、

兄2名も中学生と小学生という時期に突然弟を失ったこと、

また母親が被害者と一緒にいた兄を責めるなど、多大な苦痛を被っていること等から、父母各300万円、兄2名各150万円で、合計3300万円の死亡慰謝料が認められています。

 

このように、被害者が突然事故により幸せを奪われたような場合や、それによって近親者の方が多大な精神的苦痛を受けていることが認められるような場合には、

基準より多額な死亡慰謝料が認められる傾向があります。

 

またこれと併せて、冒頭に述べたように近親者に準じる方がしっかりと死亡慰謝料の対象者であることが認められるかどうかも大きなポイントです。

 

交通事故で死亡した場合に慰謝料を適切に受け取るためのポイント

交通事故による死亡事故において、遺族が適切な慰謝料を受け取るためには、いくつか重要なポイントがあります。

まず、賠償金の請求においては、示談交渉を急がないことが重要です。

相手方任意保険会社は自賠責保険基準に基づいて提示することが多く、これが弁護士基準よりも低額である場合が多いため、急いで示談せずに慎重な交渉が必要です。

 

また、交通事故問題について豊富な知識と経験を持つ弁護士を選ぶことが、賠償金を適切に受け取るために重要です。

弁護士は死亡事故の慰謝料が自賠責基準より高額となる可能性を見込んで交渉し、遺族の利益を最大化するための助言を行います。

 

さらに、事故の詳細や被害者の生活状況に基づく適正な賠償額の算定が必要です。弁護士基準による慰謝料請求を行うことで、死亡事故における賠償金が増額される可能性があります。

実際には、遺族の立場や生活状況、被害者の収入状況に応じた具体的な根拠を持って請求することで、適切な損害賠償を受け取る可能性が高まります。

 

刑事裁判への被害者参加を行うことにより、事故の詳細を把握し、過失割合の交渉に有利な事情を引き出せるほか、

心情意見陳述の際に被害者との関係性を証言し、陳述書として証拠化することで民事裁判の際により高額な慰謝料を認定させる要素になる場合があります。

 

被害者の権利を最大限に守るためにも、弁護士との協力のもとで法的な手続きをしっかりと進めることが重要です。

事故後の状況に冷静に対応し、法律の専門家の助けを借りることで、交通事故による損害賠償をより有利な条件で進めることができるでしょう。

 

 

交通事故による死亡事故は、被害者はもちろん、残された遺族にとっても非常に大きな影響を及ぼす深刻な出来事です。

死亡事故に関する賠償金の請求には、適正な評価と対応が求められます。自賠責保険や弁護士基準での慰謝料の違い、

また遺族の立場によって変動する賠償金額を理解することが重要です。賠償金の請求には、治療関係費や死亡慰謝料、葬儀関係費用、死亡逸失利益など多岐にわたる項目が含まれます。

 

このように、交通事故での賠償金請求は多くの要因が絡み合いますが、正確かつ妥当な補償を受けるためには弁護士の助言が欠かせません。

高額な死亡慰謝料を得るためには、弁護士基準に基づく適切な交渉が必要です。

 

また、事故の状況や加害者の過失が損害賠償額に影響を及ぼすことも理解する必要があります。

最終的には、遺族の心の負担を軽減し、適切な賠償を受けられるよう、専門家のサポートを仰ぐことが大切です。

 

交通事故の死亡保険金に関するよくある質問

交通事故で死亡した場合の賠償金には税金はかかりますか?

交通事故の損害賠償金(慰謝料・逸失利益・葬儀費用等)は、原則として非課税です。所得税・相続税のいずれの課税対象にもなりません

 

ただし、生命保険の死亡保険金については、契約形態(契約者・被保険者・受取人の関係)によって相続税・所得税・贈与税のいずれかの課税対象となる場合があります。

詳細は上記「交通事故の死亡保険金・賠償金にかかる税金」をご参照ください。

 

死亡保険金の平均金額はいくらですか?

公益財団法人生命保険文化センターの2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2025年1月発行によれば、

2人以上世帯における世帯普通死亡保険金額は平均1936万円となっています。

 

ただし、これはあくまで平均値であり、加入している保険の種類・契約内容・設定した保険金額によって実際の受取額は大きく異なります。

 

故人が加入していた保険の内容を早期に確認することをお勧めします。

 

交通事故の死亡保険金はいつ振り込まれますか?

生命保険の死亡保険金は、必要書類がすべて揃った状態で保険会社に受理されてから、通常1~2週間以内に指定口座へ振り込まれます。

ただし、以下のような事情がある場合には審査期間が延びることがあります。

  • 提出書類に不備・不足がある場合
  • 事故状況の確認が必要な場合(支払事由該当性の調査)
  • 告知義務違反の疑いが生じた場合

早期受取のためには、必要書類を漏れなく準備して一度で提出できるよう事前に保険会社に確認しておくことが大切です。

 

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。