死亡事故コラム

コラム

交通事故での死亡、賠償金額の相場と注意点を弁護士が解説

2024.11.24

死亡慰謝料 死亡逸失利益 賠償金

交通事故は突然起こり、被害者やその遺族に大きな影響を与える深刻な事態です。

中でも死亡事故となると、ご遺族は深い悲しみに加えて賠償金や慰謝料の請求に関する複雑な問題にも直面します。

賠償金の請求は、事故の状況や過失割合、保険会社との交渉次第で大きく変わるため、適切な対応が求められます。

 

ここでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、

  • 死亡事故における賠償金の基本的な考え方
  • 死亡慰謝料の相場
  • 請求できる損害賠償の費目
  • 慰謝料を適切に受け取るためのポイント

 

などについて解説し、遺族が直面する問題について理解しやすい内容を提供いたします。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士によるサポートをさせていただいております。

遺されたご家族の未来を守るために、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

弁護士法人小杉法律事務所における死亡事故被害者側専門弁護士のサポートの詳細についてはこちら。

 

 

死亡事故における賠償金の基本的な考え方

葬儀関係費用

交通事故における死亡事故は、遺族にとって非常に大きな精神的苦痛を伴うものであり、賠償金はその慰謝の一部として重要な役割を果たします。

 

賠償金の算定においては、事故の状況や過失割合、被害者の社会的背景などが考慮されることになります。

適正な賠償金を受け取るためには、弁護士のアドバイスを受けながら、しっかりと状況を整理し交渉を進めることが求められます。

 

過失割合とその影響

過失割合とは、交通事故における加害者と被害者の責任割合を示すものです。

この割合に基づき、賠償金の算定において過失相殺が行われます。

 

たとえば、被害者に事故の30%の責任があるとされた場合、賠償金はその分減額される可能性があります。

 

被害者側の過失が大きいほど、減額される賠償金も多くなるため、最初の段階で正確な過失割合を把握することが大切です。

過失割合の算定で不利益を被らないよう、弁護士の助言を得て慎重に交渉を進めることが重要です。

 

死亡事故で過失相殺が争う場合に被害者側にとって最も不利になるのが、「被害者本人の証言を得られない」ことです。

ドライブレコーダー映像がある場合や目撃者がいるような場合はともかく、

加害者側しか証言をすることができないのは極めて被害者側にとって不利です。

 

当事務所の弁護士が解決した事例でも、加害者が「自分が被害者であっちが突っ込んできた」と嘘の証言をした事例がございます。

 

もちろん警察や検察による捜査で、事故当時の状況から分かることもありますが、あくまで刑事の話です。

民事の損害賠償請求においては被害者側からも適切な指摘をしなければ加害者の言い分が通ってしまう可能性もあります。

 

だからこそ、刑事裁判への被害者参加をすることが重要になります。

被害者参加制度とは、文字どおり被害者側が刑事裁判の流れに参加することができる制度であり、

  • 心情意見陳述
  • 被告人質問
  • 論告意見

等を行うことができます。

この刑事裁判で行われた審議や提出された証拠は、適切な手続を経ることで民事裁判でも証拠として提出することができますから、

被害者参加を行うことは民事の損害賠償請求を考える上でも極めて重要です。

 

 

また、被害者の方が人身傷害保険などの保険に加入されていた場合には、

被害者の方の過失分も含めた裁判基準満額を受け取ることができる場合があります。

 

 

早々に示談してしまうのではなく、弁護士に相談してアドバイスを受けることで、適切な賠償金を得られる可能性は大きく高まります。

 

死亡慰謝料の相場

裁判

交通事故において、被害者が死亡した場合の慰謝料は、その遺族にとって非常に大きな問題となります。

死亡慰謝料の相場は自賠責保険基準と弁護士基準によって異なります。

 

自賠責保険の役割と実際の賠償金額

自賠責保険は、交通事故において基本的な補償を提供するための制度です。

 

自動車損害賠償保障法に基づき強制加入が義務付けられているこの自賠責保険によって、

被害者やそのご遺族は一定程度の賠償金を受け取ることができます。

 

具体的な支払基準(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)をみてみましょう。

 

第4 死亡による損害

3 死亡本人の慰謝料

死亡本人の慰謝料は、400万円とする。

4 遺族の慰謝料

慰謝料の請求権者は、被害者の父母(養父母を含む。)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児を含む。)とし、その額は、請求権者1人の場合には550万円とし、2人の場合には650万円とし、3人以上の場合には750万円とする。なお、被害者に被扶養者がいるときは、上記金額に200万円を加算する。

 

このように、

  • 被害者本人の慰謝料は400万円
  • 請求権者1人の場合は550万円(被扶養者がいれば750万円)
  • 請求権者2人の場合は650万円(被扶養者がいれば850万円)
  • 請求権者3人の場合は750万円(被扶養者がいれば950万円)

とされています。

自賠責保険は過失相殺が被害者に有利になる規定があったり、平等かつ迅速に保険金のお支払があるという点では、

被害者側にとって有利になります。

 

 

しかし、この金額は被害者や遺族が被る実際の損害を完全に補うものではないことが多いため、

弁護士基準での請求がほぼ必須と言えます。

 

自賠責基準と弁護士基準の違い

弁護士基準ではより被害者にとって適切な基準であり、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)にまとめられています。

  • 被害者が一家の支柱として評価される場合:2800万円
  • 被害者が母親や配偶者として評価される場合:2500万円
  • 被害者がその他(独身の男女、子供、幼児等)として評価される場合:2000万円~2500万円

 

が一つの目安となります。

 

これを見ていただいても分かるとおり、自賠責基準に比べて非常に高額となっています。

お金の問題ではないのはもちろんですが、被害者側が本来受け取れるはずの適切な金額を受け取れないということは避けなければなりません。

だからこそ、弁護士基準での支払が必須です。

 

 

遺族の立場による変動

死亡慰謝料の額は遺族の立場によっても変動します。

それは、被害者に認められる死亡慰謝料とは別に、近親者の方に固有の慰謝料が認められるからです。

 

民法711条他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

 

この条文に規定のあるとおり、被害者の父母、配偶者及び子については、それぞれに固有の慰謝料を請求することができます。

 

さらに、最高裁判所第三小法廷昭和49年12月17日判決(民集第28巻10号2040頁)では、

不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法七一一条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。

 

と判示されており、被害者の父母、配偶者及び子でなくてもこれに準ずる程度の関係性があると認められる場合(例えば同居していた兄弟姉妹など)には、その方にも固有の慰謝料が認められることになっています。

 

慰謝料を適切に受け取るためには、被害者の状況や遺族の立場に基づいた具体的な計算が不可欠です。そのためには、交通事故に詳しい弁護士と相談し、最良の解決方法を探ることが重要です。

 

請求できる損害賠償の項目

被害者の方が死亡した場合には、先ほどまで見たような死亡慰謝料だけでなくほかにも様々な費目についての損害賠償を求めることができます。

代表的なものをみていきます。

 

葬儀関係費用

交通事故による死亡事故が発生した場合、遺族にとってまず考慮すべきなのは葬儀関係費用です。

 

弁護士基準では150万円までが一つの目安とされています。

さらに、150万円を超えるのに相当な理由があるが認められる場合は、さらに高額が認定されることもあります。

 

死亡逸失利益

死亡逸失利益は、亡くなった方が将来得るはずだった収入の損失を指します。

 

具体的な計算方法は、

死亡逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数(に対応するライプニッツ係数)です。

 

基礎収入はその被害者が今後このくらいの収入を得る見込みであったという金額を採用することとなり、

基本的には事故前の年収を基礎とします。

 

生活費控除率とは、被害者が死亡すると収入が得られなくなるのと同時に今後の生活に要するはずであった生活費もかからなくなりますから、

その方が生きていた場合を想定して、生活費を差し引くために考慮される率です。

この生活費控除率は被扶養者の有無や性別で決まります。

 

 

ライプニッツ係数とは中間利息を控除するための係数です。

 

 

死亡逸失利益は、遺族の生活を支える重要な賠償金の一部であり、適切な主張と十分な計算が求められます。

保険会社との交渉において、弁護士の助けを得ることで、より正確で有利な判断がなされるでしょう。

 

 

慰謝料を適切に受け取るためのポイント

交通事故による死亡事故において、遺族が適切な慰謝料を受け取るためには、いくつか重要なポイントがあります。

まず、賠償金の請求においては、示談交渉を急がないことが重要です。

相手方任意保険会社は自賠責保険基準に基づいて提示することが多く、これが弁護士基準よりも低額である場合が多いため、急いで示談せずに慎重な交渉が必要です。

 

また、交通事故問題について豊富な知識と経験を持つ弁護士を選ぶことが、賠償金を適切に受け取るために重要です。

弁護士は死亡事故の慰謝料が自賠責基準より高額となる可能性を見込んで交渉し、遺族の利益を最大化するための助言を行います。

 

さらに、事故の詳細や被害者の生活状況に基づく適正な賠償額の算定が必要です。弁護士基準による慰謝料請求を行うことで、死亡事故における賠償金が増額される可能性があります。

実際には、遺族の立場や生活状況、被害者の収入状況に応じた具体的な根拠を持って請求することで、適切な損害賠償を受け取る可能性が高まります。

 

刑事裁判への被害者参加を行うことにより、事故の詳細を把握し、過失割合の交渉に有利な事情を引き出せるほか、

心情意見陳述の際に被害者との関係性を証言し、陳述書として証拠化することで民事裁判の際により高額な慰謝料を認定させる要素になる場合があります。

 

被害者の権利を最大限に守るためにも、弁護士との協力のもとで法的な手続きをしっかりと進めることが重要です。

事故後の状況に冷静に対応し、法律の専門家の助けを借りることで、交通事故による損害賠償をより有利な条件で進めることができるでしょう。

 

 

交通事故による死亡事故は、被害者はもちろん、残された遺族にとっても非常に大きな影響を及ぼす深刻な出来事です。

死亡事故に関する賠償金の請求には、適正な評価と対応が求められます。自賠責保険や弁護士基準での慰謝料の違い、

また遺族の立場によって変動する賠償金額を理解することが重要です。賠償金の請求には、治療関係費や死亡慰謝料、葬儀関係費用、死亡逸失利益など多岐にわたる項目が含まれます。

 

このように、交通事故での賠償金請求は多くの要因が絡み合いますが、正確かつ妥当な補償を受けるためには弁護士の助言が欠かせません。

高額な死亡慰謝料を得るためには、弁護士基準に基づく適切な交渉が必要です。

 

また、事故の状況や加害者の過失が損害賠償額に影響を及ぼすことも理解する必要があります。

最終的には、遺族の心の負担を軽減し、適切な賠償を受けられるよう、専門家のサポートを仰ぐことが大切です。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、死亡事故被害者側損害賠償請求専門弁護士が、被害者の方やご家族お一人お一人にとって最も良い解決となるよう尽力いたします。

お困りごとをお抱えの方はぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

死亡事故被害者側損害芭蕉請求専門弁護士との無料相談の流れについてはこちらから。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。