死亡事故コラム

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【弁護士解説】福岡で発生したひき逃げ死亡事故 犯人の責任はどうなる?刑事・民事の両方から解説

2026.07.30

刑事裁判 慰謝料増額 被害者参加

事故で警察の事情聴取を受けている様子

2026年7月24日未明、福岡市中央区にある橋の上で女性が死亡しているのが発見されました。

福岡県警は同日、3トントラックを運転していた福津市に住む男性(59)を、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)および道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで緊急逮捕しました。

 

 

捜査関係者によりますと、男性は食料品を配送中、車道にしゃがみこんでいた女性のトラックと衝突し、

女性を死亡させたうえで、必要な救護措置を取らずに現場を離れたとされています。

 

現場周辺の防犯カメラ映像から車両が特定され、勤務を終えて帰宅していた運転手が任意同行されました。

運転手は「人をはねた事実はありません」と容疑を否認しているとのことです。

 

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士大澤健人が、

仮にこの男性がひき逃げの犯人であった場合、この男性がどのような責任を負うかについて、

刑事・民事の両方から解説します。

 

刑事責任について

裁判

報道によれば、運転手には「過失運転致死」と「ひき逃げ」(道路交通法上の救護義務違反・報告義務違反)の2つの容疑がかけられています。

それぞれ見ていきましょう。

 

過失運転致死(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

 

今回被害者の女性は亡くなってしまっているので、ただし書きによる免除はないといってよいでしょう。

 

道路交通法違反(救護義務違反・報告義務違反)(いわゆる「ひき逃げ」)(道路交通法72条、117条)

道路交通法第72条

交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。

 

道路交通法第117条

1 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反したときは、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、十年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する
3 特定自動運行において特定自動運行用自動車の交通による人の死傷があつた場合において、第七十五条の二十三(特定自動運行において交通事故があつた場合の措置)第一項前段又は第三項前段の規定に違反したとき(特定自動運行主任者が違反した場合に限る。)は、当該違反行為をした者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

 

交通事故を起こした運転者は、直ちに車両を止めて負傷者を救護し、道路における危険を防止する措置を取るとともに、警察に事故の内容を報告する義務を負います。

これを怠った場合、単体でも重い刑罰の対象となります。

 

特に、人身事故の場合の救護義務違反(いわゆる「ひき逃げ」)は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金と、過失運転致死の法定刑よりも重く設定されている点が特徴的です。

 

また、過失運転致死罪は、「過失」の犯罪であるのに対し、道路交通法違反は、「故意」の犯罪となります。

そのため、犯罪を行っていることの認識・認容(自分がひき逃げをしていることの認識)が処罰において必要になることも特徴の一つとなります。

 

この2つの罪が成立し併合罪となる場合、処断刑(実際に科され得る刑の上限)はさらに引き上げられます。

 

「危険運転致死」に発展する可能性はある?

ところで、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律には、過失運転致死よりも法定刑が重い、「危険運転致死」の規定もあります。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条

次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期拘禁刑に処する。
一 アルコール影響正常運転困難状態(身体に血液一ミリリットルにつき一・〇ミリグラム以上又は呼気一リットルにつき〇・五ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態をいう。次条第一項において同じ。)で自動車を走行させる行為
二 薬物影響正常運転困難状態(薬物の影響により正常な運転が困難な状態をいう。次条第一項において同じ。)で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
四 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ当該イ又はロに定める速度以上の高速度その他道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度(次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ当該イ又はロに定める速度に準ずるものに限る。)で自動車を運転する行為
イ 最高速度(道路交通法第二十二条第一項の規定によりこれを超える速度で進行してはならないこととされている最高速度(原動機付自転車を運転する場合にあっては、同法第三条に規定する普通自動二輪車の最高速度)をいう。以下この号において同じ。)が六十キロメートル毎時以下である場合 最高速度を五十キロメートル毎時超える速度
ロ 最高速度が六十キロメートル毎時を超える場合 最高速度を六十キロメートル毎時超える速度
五 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
六 殊更にタイヤを滑らせ又は浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせて、自動車を走行させる行為
七 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
八 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
九 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
十 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
十一 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条
1 アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、アルコール影響正常運転困難状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は十五年以下の拘禁刑に処する。薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、薬物影響正常運転困難状態に陥り、人を死傷させた者も、同様とする。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

 

  • アルコール又は薬物の影響で正常な運転が困難で運転したこと
  • 著しい速度超過
  • 赤信号無視

などの、

通常の過失を超えた悪質・危険な運転行為があったことが要件となります。

現時点の報道内容だけでは、そうした事情は明らかになっていません。

今後の捜査で飲酒・薬物の有無や運転状況が精査され、法律の定める悪質・危険な運転であったことが認められれば適用罪名が変わる可能性はありますが、現段階では過失運転致死での立件にとどまっています。

 

 

否認していることの意味

運転手は「人をはねた事実はありません」と容疑を否認しているとされています。

上記のとおり、道路交通法違反については、犯罪を行っていることの認識・認容が処罰に必要になります。

 

そして、道路交通法でいう犯罪を行っていることの認識・認容とは、

簡単にいうと、

「人身事故を起こしたことを分かっている、又は、人身事故を起こした可能性があり、申告や救護を行わなければならないかもしれないと認識しつつあえてこれを行わなかった」

ということが認められるかどうかが重要になります。

 

本人の自白がない否認事件では、

捜査機関は「人身事故を起こしたことを分かっている、又は、人身事故を起こした可能性があり、申告や救護を行わなければならないかもしれないと認識しつつあえてこれを行わなかった」ということの立証のために、

  • 防犯カメラ映像
  • 車両の損傷状況
  • 路面の痕跡
  • 鑑識結果
  • 目撃証言

などの客観証拠・間接的な事実から上記認識は有していただろうという事実認定を行うことになります。

今回、防犯カメラの映像から車両が特定されている経緯があることから、捜査側には一定の客観的な手がかりがあるとみられます。

 

「人をはねた事実はありません」という弁解からは、

事故を起こしたのは自分ではなく、別の犯人がいるという犯人性の主張なのか、事故を起こしたものの人身事故を起こしたという認識はなかったという主張なのか、

判然としないところではありますが、いずれにしても、上記の客観的な証拠・間接的な事実関係が重要なものになると思われます。

 

否認を続けた場合、勾留期間が延長されやすくなります。

また、否認をしているということは、仮に有罪判決がなされる場合においても、十分に反省がされていないとみられ、量刑を重くする事情とされる場合もあります。

 

量刑の見通し

過失運転致死とひき逃げが併せて認められた場合、実務上は拘禁3年前後から、それを超える実刑判決が言い渡される例も少なくありません。

被害者が死亡している点、救護せず逃走した点は、いずれも量刑を重くする方向に働く事情です。

 

一方で、事故態様(女性が車道にしゃがみこんでいたという特殊な状況で運転手側の予見可能性がどの程度あったか)は、量刑判断において考慮され得る要素となります。

 

当事務所でも、夜間に幹線道路上へしゃがみ込んでいた歩行者が、大幅な速度超過をした車両にはねられて死亡した事案がございます。

この事案では、検察官が過失運転致死で懲役1年6か月を求刑を行い、

第一審・控訴審ともに、前科のない被告人に禁錮1年の実刑(執行猶予なし)が言い渡され、確定しています。

 

過失運転致死の場合で、かつ被害者が道路にしゃがみ込んでいたという事情がありながらも、

加害者の運転態様が著しく酷いということが立証されるケースでは、実刑が言い渡されることもあります。

 

 

遺族による刑事裁判への関与

遺族は、被害者参加制度(刑事訴訟法316条の33以下)に基づき、起訴後の刑事裁判に「被害者参加人」として関与することができます。

具体的には、公判記録の閲覧、被告人質問、量刑に関する意見陳述などを通じて、遺族の思いを裁判手続きに反映させる道が用意されています。

 

前述の事案でも、遺族が被害者参加をして心情意見書を提出し、被告人質問で運転行為の危険性を追及したことが、判決内容に一定の影響を与えたと考えています。

本件についても、今後起訴された場合には、遺族がこうした制度を活用できる可能性があります。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故で大切な方を亡くされたご遺族の方にしっかりと刑事裁判で思いをお伝えいただけるよう、

被害者参加のサポートを積極的に行っております。

 

 

民事責任について

刑事手続とは別に、被害者の遺族は運転手や関係者に対して民事上の損害賠償請求を行うことができます。

 

請求できる相手方

運転手本人

運転していた本人は、当然に不法行為責任(民法709条)に基づき、直接の加害者として損害賠償義務を負います。

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

運転手の勤務先(配送業者)

運転手が業務中(食料品の配送中)に起こした事故であるため、使用者責任(民法715条)が問題となります。

業務執行中の事故であれば、雇用主である会社も連帯して賠償責任を負う可能性があります。

 

民法715条

1 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

車両の運行供用者

自動車損害賠償保障法(自賠法)3条に基づき、

車両を自己のために運行の用に供していた者(多くの場合、会社)も、運行によって生じた人身損害について責任を負います。

自賠法は被害者保護の観点から、運行供用者側に無過失の立証責任を課しており、被害者にとって立証のハードルが低い制度設計になっています。

 

自動車損害賠償保障法第3条

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

保険による補償

トラックには通常、自賠責保険(強制保険)に加えて任意保険が付保されています。

保険会社からの支払を受けることで、少なくとも民事損害賠償請求の面では、しっかりとした補償を受けられる可能性が高いです。

 

自賠責保険

死亡事故の場合、被害者1名につき上限3000万円までが補償されます。

自賠責保険は、迅速かつ平等な支払を行うよう努めているため、定型書類を揃えれば速やかに支払を受けることができる反面、

金額としては低額になります。

 

 

任意保険(対人賠償保険)

自賠責保険の上限を超える損害について、任意保険から支払われます。

事業用トラックの場合、対人賠償が無制限に設定されていることが一般的であり、実務上は任意保険会社との交渉が損害賠償の中心的な手続きとなることが多いです。

 

任意保険会社は支払う保険金額を少なくすれば少なくするほど自社の利益が上がる立場にありますから、

被害者側にとって適切な金額を支払うといきなり言ってくる可能性はほぼありません。

 

被害者側が適切な賠償金を得るためには、弁護士基準での請求が必須となります。

 

 

なお、ひき逃げのように故意性・悪質性が疑われる事案では、保険会社が免責事由(故意による事故など)を主張してくる可能性もゼロではなく、

今後の刑事事件の帰趨(過失か故意的な逃走かなど)が保険金支払いの範囲にも影響する可能性があります。

 

過失相殺の可能性

本件で特徴的なのは、被害女性が車道にしゃがみこんでいたとされる状況です。

民事の損害賠償額の算定では、被害者側にも事故発生や損害拡大について落ち度(過失)があったと評価される場合、過失相殺(民法722条2項)により賠償額が減額されることがあります。

 

実務上、過失割合の算定にあたっては『別冊判例タイムズ39号』(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂6版 判例タイムズ社)が参考にされることがほとんどです。

この基準では、夜間、道路上に横たわっている(しゃがみ込んでいる)人を車両がはねた場合の基本過失相殺率は、被害者50%とされています。

 

損害賠償金の総額が1億円であるとしても、過失が50%あるとすると、実際に受け取ることができるのは1億円×(1-50%)=5000万円になります。

過失割合は受け取ることができる金額に直結するため、非常に重要です。

 

被害者が無くなってしまう交通死亡事故で最も難しいのは、

被害者の方が亡くなっていて、事故態様に関する証言をすることができないという事実があることです。

 

ご遺族としては、目撃者の証言を集める、警察の捜査記録を入手する、防犯カメラ映像などをあたる、等客観的な証拠を集めていくことが必要になる可能性があります。

 

なお、当事務所において解決した、夜間に幹線道路上へしゃがみ込んでいた者を被害者の死亡事故事案では、被害者15%の過失相殺率での判決を福岡地裁にて得ています(自保ジャーナル2202号109頁にて掲載)。

控訴後更に増額して、賠償金1億円超の和解解決をしましたが(そのほか人身傷害保険金も約2000万円獲得)、本件事故も同様に1億円超の高額賠償となる可能性があります。

「ひき逃げ」という特殊性を有する事故のため、犯人性が認められた場合、損害の公平な分担原理である過失相殺の適用がどの程度なされるかが、賠償額を決めるポイントとなるでしょう。

 

 

遺族の損害賠償請求権と今後の流れ

死亡事故のご遺族は、一般的には以下のような費目についての請求が可能です。

  • 死亡慰謝料
  • お亡くなりになるまでの治療費・入院雑費
  • 駆けつけ交通費
  • 葬儀関係費用
  • 死亡逸失利益

 

死亡慰謝料とは、被害者が交通事故で死亡したことによる精神的苦痛に対する賠償金です。

 

死亡慰謝料には以下の2種類があります。

 

被害者本人の慰謝料(相続分)

被害者本人は、交通事故により生命を奪われ、突然前途を絶たれ、未来を失い、

無念や憤りなど筆舌に尽くしがたいような苦痛を受けています。

 

被害者本人の死亡慰謝料の請求は当然に認められるべきであり、

その請求権は相続人に承継されることになります。

 

遺族固有の慰謝料

民法第711条に基づき、父母・配偶者・子に、

そして先ほど見たように、これに類するような関係性を持つ方に認められるものです。

 

大切な方を亡くしたという精神的苦痛についても慰謝料が認められなければなりません。

 

また、今回仮にひき逃げということが事実であれば、これを理由として慰謝料を増額して主張することも考えられます。

 

その他の費目についての解説は以下のページをご覧ください。

 

また、今後の流れとしては、実務上は、刑事手続の進行(起訴・公判・判決)と並行して、任意保険会社との示談交渉が進められることが多いです。

ただし、刑事裁判への被害者参加を行うことで、過失割合の交渉に有利な証拠を得られることがあります。

その場合には、刑事裁判を経てから示談交渉を行った方が、結果的に受け取れる金額が増えるということになります。

 

刑事裁判と民事裁判は連動していますから、双方を意識しながら進めることが重要です。

 

まとめ

本件は、

  • ①過失運転致死とひき逃げという2つの刑事罪の成否
  • ②運転手本人・勤務先・運行供用者に対する民事上の損害賠償請求

という、刑事・民事双方の観点から論点が交錯する事案です。

 

運転手が容疑を否認していることから、今後の捜査・公判では衝突の事実や逃走の認識をめぐって争いが続く可能性が高いといえます。

一方で民事面では、深夜の車道上に人がいたという特殊な事故態様が、過失割合の判断に影響を与える可能性があります。

 

いずれにしても、やはり事故態様の全容が明らかになるかどうかが大きな影響を与えることになりますから、

警察・検察の捜査により、その全容が明らかになることを祈ります。

 

※本記事は2026年7月24日時点の報道内容に基づく一般的な法律解説であり、

個別の事案についての法的助言ではありません。実際の対応にあたっては、弁護士等の専門家にご相談ください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。