後遺障害等級の解説

むちうち 神経症状

捻挫の後遺症|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

捻挫は交通事故のみならず、日常生活やスポーツなど様々な場面で起こる一般的な怪我です。適切な治療とリハビリを行えば完治することも多いですが、一部のケースでは長期間にわたり痛み等の症状が続き、後遺症として残ってしまうことがあります。

この記事では、交通事故による捻挫の後遺症と、自賠責保険の後遺障害等級の関係について解説しております。

なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事の監修をいただいております。

捻挫とは何か?どのような症状が現れる?

⑴捻挫の定義

捻挫は、関節周囲の靭帯や腱、軟骨(関節軟骨、半月板、関節唇など)等が軽度に損傷する怪我です。「捻挫」と聞いてよくイメージされるのは足首の捻挫ですが、その他の関節である肩関節・肘関節・手関節(手首)や、股関節・膝関節などでも捻挫することがあります。また、関節ではありませんが、頸椎周辺の筋肉や靱帯・椎間板等を損傷してしまったものは頸椎捻挫、腰椎周辺の筋肉や靱帯・椎間板等を損傷したものは腰椎捻挫と呼ばれています。

⑵関節捻挫の重症度分類

関節捻挫(頸椎捻挫、腰椎捻挫以外の一般的な捻挫)は、その重症度によって以下のように靭帯の損傷の程度により分類されます。

Ⅰ度:靭帯の部分的な損傷。痛みはあるが、関節の安定性は保たれる。

Ⅱ度:靭帯の部分断裂や伸びが見られる。痛みや腫れが強く、関節の動きに制限が出る。

Ⅲ度:靭帯の完全断裂。関節の不安定性が生じ、長期的な治療やリハビリが必要。

なお、靭帯損傷や靭帯断裂が画像上からも明白である場合には、「前距腓靭帯損傷」、「後十字靭帯断裂」等のように、損傷もしくは断裂している靱帯名とともに傷病名が表されることになります。

⑶頸椎捻挫の重症度分類

1995年にケベックむち打ち関連障害特別調査団が作成した報告書において、むち打ち症(頸椎捻挫のこと)の分類が示されており、一般にケベック分類と呼ばれています。ケベック分類は、症状の程度によって以下のGrade0~Ⅳの5段階で分類されています。

Grade0:症状なし

Grade Ⅰ:他覚的所見がないが、頸部痛や筋肉の緊張がある

Grade Ⅱ:他覚的所見があり、頚部痛や筋肉の緊張に加え、関節の可動域制限がある

Grade Ⅲ:神経学的所見(筋力低下、感覚異常など)がある

Grade Ⅳ:骨折や脱臼等の構造的異常がある

ただし、ケベック分類は、頸椎捻挫で生じうるめまいや頭痛、上肢のしびれ等の頸部症状以外の症状については言及されておらず、またケベック分類における治療の終局点が「治癒」ではなく「活動再開」に設定されているなどの疑問点もありますので、損害賠償請求の実務上で普遍的に妥当するわけではないことに留意しておきましょう。

⑷土屋の分類

日本で主に使われているむち打ち損傷の分類として、土屋の分類というものがあります。

土屋の分類は、筋肉や血管、神経などの構造によって分類しています。

①頸椎捻挫型

頸椎の筋肉や関節が捻挫によって損傷する類型です。主な症状は、痛みやしびれ、負傷部位の違和感等になります。

②神経根型

脊椎周辺の筋肉や組織等が損傷されることにより、神経根が圧迫されて症状が生じる類型です。主な症状は痛みやしびれになります。

③バレリュー型(バレリュー症候群)

むち打ち損傷を負った際、稀にみられる類型としてバレリュー型があります。

むち打ち損傷によって交感神経に異常が生じることにより、自律神経に負の影響が現れ、頭痛、めまい、耳鳴り、眼精疲労、倦怠感、動悸、微熱感、難聴、吐き気などの多彩な症状がみられます。慢性化することも少なくなく、日常生活に長期的に支障を及ぼす恐れもあります。

④神経根+バレリュー複合型

神経根型、バレリュー型のそれぞれの症状が併発するケースもみられています。

⑤脊髄症状型

むち打ち損傷によって、中枢神経である脊髄を損傷してしまった場合には、脊髄症状型というパターンになります。

上下肢の麻痺、感覚神経障害(温冷覚・触覚・痛覚・立体覚など)、膀胱直腸障害(排泄障害)、自律神経症状等がみられます。

 

捻挫の後遺症と後遺障害等級

一般的には、捻挫は治療をしっかりと行えば治癒に至ることも少なくないですが、中には症状が後遺症として残ってしまうケースもあります。

後遺症として残る主な症状としては、前項で挙げた痛みやしびれの他、筋肉が張ったような感覚や違和感、筋力低下などが挙げられます。バレリュー症候群の場合には、やはり頭痛やめまい。耳鳴り、倦怠感、吐き気等の症状が遺残することが多いようです。

交通事故による捻挫で後遺症が残ってしまった場合、加害者が自賠責保険に加入していれば、自賠責の後遺障害等級認定の申請手続きを行うことができます。

申請手続きの仕方については、加害者側の任意保険会社が行う事前認定と、被害者が自分で行う被害者請求(16条請求)の2つがあります。

事前認定と被害者請求とでそれぞれメリット・デメリットがありますので、どちらで申請するかは一考しておくことをおすすめします。また、以下のページでは事前認定と被害者請求の違いやメリット・デメリットについて解説しておりますので、どちらで行くか、皆様の判断の一助になるかと思います。

交通事故の「被害者請求」と「事前認定」とは?違いは?どちらが良い?【弁護士解説】

さて、自賠責の後遺障害は、自動車損害賠償保障法施行令において、別表第一・別表第二という形でまとめられています。

別表第一は介護を要する後遺障害について規定されており、その他の後遺障害は別表第二に規定されています。また、別表第一は第1級と第2級の二つの等級が、別表第二は第1級~第14級の14等級が用意されており、いずれも数字が小さいほど重度の後遺障害となります。

捻挫の後遺症で認定される可能性があるのは、別表第二第12級13号と別表第二第14級9号の2つとなります。以下、見ていきましょう。

⑴第12級13号

捻挫の後遺症について、「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認められた場合には第12級13号が認定されます。

具体的には、画像所見や神経学的所見等の客観的な医学的所見によって後遺症の残存を他覚的に立証できることが求められます。そのため、等級認定を目指すにあっては、事故直後にはXPやCT、MRI等の画像を撮影してもらい、異常所見の有無などをしっかりと確認しておく必要があります。また、治療終盤や症状固定時にも画像を撮影し、やはり異常所見の存否について把握しておくことが望ましいでしょう。加えて、ジャクソンテストやスパーリングテスト等の手技による検査や徒手筋力テスト(MMT)も行ってもらい、神経学的所見を押さえておくことも肝要でしょう。

⑵第14級9号

捻挫の後遺症について、「局部に神経症状を残すもの」と認められた場合には、第14級9号が認定されます。

具体的には、症状経過や治療状況などから将来的にも回復困難と認められる症状が残存していることが説明可能であると認められることが求められ、事故態様や症状経過、治療状況、客観的異常所見の有無及びその内容等を鑑み、後遺症の残存について相当程度説得的であることが重要となります。

第14級9号認定に向けて押さえておくべきポイントにつきましては以下のページにて詳しく解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

後遺障害等級14級9号の認定率を上げるには?

⑶後遺障害申請に向けてのポイント

12級、14級、いずれに狙いを定めるとしても、症状固定時点には画像撮影や神経学的検査を必ず行い、後遺障害診断書しっかりと記載してもらうことが非常に重要となります。特に自賠責は、労災の障害補償給付調査と異なり面談等もなく、主に書面による審査・判断になりますので、後遺障害診断書の記載がきちんとなされていないと自賠責の調査も十分になされないこととなります。そのため、後遺障害診断書を作成するときには、残っている症状をきちんと主治医の先生に伝えて、もれなく書いてもらうことが肝要となります。

おわりに

本記事では、捻挫の症状・後遺症と自賠責の後遺障害等級について解説いたしました。

弁護士法人小杉法律事務所では、被害者専門・後遺障害専門の弁護士が無料で法律相談を行っております

交通事故での捻挫の後遺症にお悩みの方、また後遺障害や損害賠償請求についてお悩みの方は、

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。