交通事故コラム

後遺障害 慰謝料 逸失利益

交通事故被害者向け:後遺障害等級と慰謝料計算をわかりやすく解説!

2025.01.20

後遺症慰謝料 後遺障害等級 逸失利益

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、

  • そもそも後遺障害等級とは?
  • 後遺障害等級の認定方法
  • 後遺障害等級が慰謝料計算に与える影響
  • 弁護士に相談するメリット

等について解説します。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による後遺障害等級の無料査定サービスを行っております。

交通事故被害に遭い、ご自身の後遺障害等級がどれに該当するかなどについて疑問をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士による後遺障害等級無料査定サービスの詳細についてはこちらから。

 

そもそも後遺障害等級とは?

後遺障害等級

「後遺症」と「後遺障害等級」

「後遺症」とは、事故後の治療が終了した後にも残ってしまった症状のことをいいます。

 

交通事故で怪我をして治療を続けていく中で、これ以上治療を続けても症状が良くならないと医学的に判断される状態に達する場合があります。

この状態に達した時点を症状固定と言い、この症状固定以後にも遺ってしまった症状を「後遺症」と呼んでいます。

 

 

ただし、遺ってしまった後遺症というのは被害者の方それぞれで千差万別です。

その後遺症によりどれくらい日常生活や労働に支障があるのか、どれくらいの精神的苦痛が生じているのかを、

完璧とは言えないまでも画一的に評価する方法がなければ、被害者として平等に賠償を得ることができません。

 

この画一的に評価する方法として、損害賠償請求実務で広く用いられているのが「後遺障害等級」です。

 

つまり、被害者の方それぞれの身体に症状固定以後にも遺っている症状を「後遺症」といい、それを基準にあてはめて評価したのが「後遺障害等級」といえます。

 

後遺障害等級の分類と目的

後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令別表第一及び別表第二に定めのあるように、被害者の後遺障害の症状に応じて第1級から第14級に分類されています。

先ほども述べたように、この等級は交通事故の被害者が受ける賠償金額を決定する重要な基準であり、誰にでも公平な基準を提供することを目的としています。

 

数字が小さいほど重篤な後遺症が残っているという評価をされます。

例えば「別表第一第1級」は常時介護が必要な状態を示し、「別表第二第14級」は比較的軽症な障害、例えばむちうちによる頚部痛や腰部痛が該当します。

 

「別表第一」と「別表第二」の違いは、常時(または随時)介護を要するかどうかです。

常時(または随時)介護を要すると評価されるような重篤な後遺症の場合には、

「別表第一」に定める後遺障害等級に該当すると判断され、主に自賠責保険基準における保険金額が増額されます。

 

この後遺障害等級の認定は実務上広く用いられており、証拠としての通用力が高い(相手に残っている後遺症の程度を認めさせやすい)ため、

交通事故被害者側としては、まずは適切な後遺障害等級の認定を得ることを目指すことになります。

 

後遺障害等級が交通事故賠償に与える影響

認定された後遺障害等級は、交通事故で被害を受けた際に獲得できる賠償金額に大きな影響を与えます。

特に「後遺症慰謝料」や「後遺症逸失利益」は等級ごとに金額が異なり、等級が1つ違うだけで賠償金額に大きな差が生まれることがあります。

 

例えば、追突されて首がむちうちになり、頚部痛が残ってしまった場合を考えてみましょう。

交通事故によるむちうちで頚部痛が残ってしまった場合に可能性がある後遺障害等級は、

  • 後遺障害等級第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
  • 後遺障害等級第14級9号「局部に神経症状を残すもの」
  • 非該当(認定なし)

の3つです。

 

 

それぞれの等級が認定された場合の後遺症慰謝料を見てみましょう。

 

非該当(認定なし)の場合

この場合は、後遺障害等級に該当するような後遺症が存在しないという判断をされてしまっているので、

後遺症慰謝料は0円となります。

 

後遺障害等級第14級9号の場合

この場合の裁判基準(弁護士基準)における後遺症慰謝料は110万円が一つの目安となります(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)参照)。

 

後遺障害等級第12級13号の場合

この場合の裁判基準(弁護士基準)における後遺症慰謝料は290万円が一つの目安となります。

 

このように、認定される後遺障害等級によって慰謝料金額は大きく変動します。

これに加えて後遺症逸失利益も認定された後遺障害等級に応じて変動しますから、適切な後遺障害等級の認定を得ることの重要性がお判りいただけると思います。

 

お身体に残っている後遺症の程度が変わらないのに、治療状況や診断書の記載漏れで適切な後遺障害等級の認定を得られず、結果として適切な慰謝料(賠償金)を得られないということは絶対に避けなければなりません。

弁護士に相談することで、適切な後遺障害等級の認定を得る可能性を上げることをお勧めします。

 

 

後遺障害等級の認定方法と手続

後遺障害等級

後遺障害認定の流れ

後遺障害等級を申請するには、まずは症状固定の判断をしてもらう必要があります。

この症状固定の判断は主治医の専権ですから、本来であれば相手方保険会社などが判断できるものではありません。

 

治療費対応を相手方保険会社が打ち切ってくるような場合には、交渉により治療費対応を延長してもらったり、

場合によっては健康保険を利用した自費での通院を継続するなどして、主治医が判断する症状固定の時期まで通院治療を継続することが重要です。

 

 

症状固定の判断が下りたら、後遺障害診断書を作成してもらい、自賠責保険に提出することになります。

その後、書類などの内容に基づいて損害保険料率算出機構が審査を行い、等級が認定されます。

 

この審査は基本的に書面のみで行われるため、提出する書類の正確性や充実度が認定結果に大きく影響します。

 

後遺障害診断書の作成は主治医が行うものですが、後遺障害等級の認定のポイントは弁護士が熟知している分野になります。

ですから、当事務所では後遺障害診断書の作成に当たり主治医に対して後遺障害等級の認定のポイントを押さえてご作成いただきたいという旨のお手紙をお送りすることで、

適切な後遺障害診断書の作成をしていただくよう努めております。

 

仮にご作成いただいた後遺障害診断書が、後遺障害等級認定の観点から不十分だと判断されるような場合には、

直接お会いすることも視野に入れ、後遺障害診断書の訂正をしていただくこともあります。

 

 

必要な書類と準備すべきポイント

後遺障害等級の認定を受けるためには、以下をはじめとする書類を準備する必要があります。

後遺障害診断書や画像資料(レントゲン、MRIなど)は特に重要で、症状の詳細を明確に示すことが求められます。

また、申請書類に記載漏れがあると不認定や低い等級しか認められない可能性があるため、入念に確認することが重要です。

 

  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 診断書・診療報酬明細書
  • 後遺障害診断書
  • レントゲン画像やMRI画像

など

 

特に、交通事故による後遺障害が日常生活や労働能力にどのような影響を与えているかを具体的に説明することがポイントとなります。

 

事前認定と被害者請求の違い

ところで、後遺障害等級の申請には、大きく分けて「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。

 

事前認定は加害者側の保険会社が申請書類の取り付けを代行する方法です。

この場合、手続きの負担が少ない点はメリットですが、加害者側の保険会社というのは自賠責が認定した後遺障害等級に基づいて保険金をお支払する立場です。

ということは、当然加害者側保険会社としては認定される後遺障害等級が低い方が良いということになりますから、

それを任せてしまう事前認定は被害者側としてはリスクが大きいです。

 

一方で被害者請求は、被害者自身が必要書類を準備し、自賠責保険に直接請求を行う方法です。

被害者の権利を守るためにはこちらの方法が有利になる場合もありますが、自分で手続を進めるための時間や知識が必要です。

 

この点、弁護士に依頼することにより被害者請求の場合でも申請書類の取り付けを代行してもらうことができるため、メリットが大きいと言えます。

 

異議申立て

万が一、後遺障害等級の認定結果に納得がいかない場合は、異議申立てを行うことが可能です。

この場合、まず認定理由を明確に理解し、不服の根拠を整理することが重要です。

 

そのうえで、再度診断書や画像資料を用意し、新たな証拠を提出することで再審査を依頼します。

 

異議申立ては非常に専門的な手続きとなるため、交通事故に詳しい弁護士に相談することが成功の鍵です。

正しく進めれば、認定結果が覆る可能性もありますが、手続きには時間がかかるため早めに行動することが求められます。

 

後遺障害等級ごとの慰謝料と計算方法

慰謝料とは?基本概念を理解しよう

慰謝料とは、交通事故などで被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことです。

 

民法710条他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

ここでいう「財産以外の損害」が精神的苦痛であり、これに対して支払われる賠償金が「慰謝料」です。

 

後遺症が残ってしまうような場合は将来にわたって日常生活や労働の中で精神的苦痛を生じることになるため、

後遺症が残ったと認められる場合=後遺障害等級認定が得られた場合は後遺症慰謝料を請求することができます。

 

後遺障害等級別の慰謝料の相場

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって金額が異なります。

例えば、等級が低い(症状が軽い)場合は慰謝料が少なくなり、等級が高い(症状が重い)場合は慰謝料が増えます。被害者が適切な認定を受けられるよう、弁護士に相談することも重要です。

 

後遺障害等級は別表第一第1級から別表第二第14級まで分類されており、それぞれに応じた慰謝料の相場が異なります。

例えば、自賠責保険基準では、別表第一第1級では1650万円が、別表第二第14級では32万円が支払われることになります。

 

一方、裁判基準では第1級で2,800万円程度、第14級で110万円程度が一つの目安となり、非常に大きな差があります。

 

このように、後遺症慰謝料の金額は、まず認定される後遺障害等級によって大きな差があり、更に請求する場合に用いる基準によっても差がありますから、

適切な後遺症慰謝料を獲得するためには、弁護士に相談して適切な後遺障害等級認定を獲得したうえで、裁判基準で請求することが重要です。

 

逸失利益との違いと計算方法

逸失利益とは、後遺症が残ってしまったことにより将来にわたって働きにくさが残ってしまい、

交通事故に遭わずに働いていた場合であれば得られるはずであったのに得られなくなった損害をいいます。

 

慰謝料が精神的損害の補償に重点を置いているのに対し、逸失利益は経済的な損害をカバーする目的があります。計算方法は以下の通りです。

 

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)

 

 

たとえば、事故前の年収が600万円で、症状固定時40歳の方が、後遺障害等級が8級(労働能力喪失率45%)の認定を受けた場合には、

原則として労働能力喪失期間は症状固定時の年齢から67歳までの期間とされますから、

逸失利益は、

500万円×0.45×18.3270(27年に対応するライプニッツ係数)=4123万5750円

となります。

 

これはあくまで一例であり、逸失利益は被害者の職種や年齢、性別、認定された後遺障害等級、事故前の就労状況など様々な要因で大きく変わります。

正確な計算のためには、専門家の助言を仰ぐことが重要です。

 

裁判基準と自賠責基準の違い

慰謝料には、「裁判基準」と「自賠責基準」という2つの重要な基準があります。

 

自賠責基準は、自動車損害賠償保障法施行令第2条並びに別表第1及び別表第2に定める保険金額を限度として定められた、

自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」をいいます。

 

この自賠責基準は国の最低限の保障として定められた基準であり、

被害者が迅速かつ平等に保険金を受け取ることができる代わりに、金額としては最も低額になります。

 

一方、裁判基準は過去の判例や被害者の実情をより詳細に考慮して決定されるため、高額になる場合がほとんどです。

 

被害者が納得できる慰謝料を受け取るためには、裁判基準に基づいて交渉することが重要です。

 

後遺障害等級を巡るトラブルは弁護士に相談しましょう

よくあるトラブル事例

交通事故における後遺障害等級を巡るトラブルとして、主に以下のような事例が挙げられます。

一つ目は、適切な後遺障害等級が認定されない場合です。一部のケースでは、被害者が感じている症状や日常生活への支障が正確に認識されず、低い等級が認定されることがあります。

 

二つ目は、加害者側の保険会社から適正な慰謝料が提示されない場合です。提示された金額が裁判所基準を大きく下回ることも少なくありません。

 

三つ目は、後遺障害認定の申請に必要な書類や証拠が不十分で、審査がスムーズに進まない事例です。

 

不適切な認定結果を防ぐには?

不適切な後遺障害等級の認定を防ぐためには、まず医師と密な連携を取ることが重要です。

医師には後遺障害診断書を詳細に作成してもらい、交通事故による症状の因果関係や具体的な障害の程度を正確に記載してもらう必要があります。

 

先ほども述べましたように当事務所では後遺障害診断書の作成にあたって、気を付けていただきたいポイントを明記したお手紙をお渡ししています。

 

適切な後遺障害診断書の作成が、適切な認定を得るための第一歩です。

 

弁護士への相談とその役割

後遺障害等級を巡る問題を解決する上で、弁護士への相談は非常に有益です。

弁護士は、交通事故と後遺障害に関する法律や制度に精通しており、認定に必要な書類の収集、手続きのサポートを行います。

 

また、適切な賠償金額が提示されているかどうかを精査し、加害者側保険会社との交渉を代理する役割も果たします。

弁護士に相談することで被害者にとって最も適切な基準である裁判基準を用いた請求を行うことができます。

 

ここまでみてきたように、後遺障害等級の認定は慰謝料をはじめとする賠償金額全体に大きな影響を与えます。

適切な慰謝料の獲得には、適切な後遺障害等級認定を獲得し、裁判基準にて請求を行い、交渉や裁判で勝ち取る必要があります。

 

こういった手続は被害者にとって大きな負担になることも多いですから、

専門弁護士に相談し、サポートを受けることを強くお勧めします。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、治療中から後遺障害等級の認定、交渉や裁判までしっかりサポートさせていただきます。

交通事故被害に遭い、ご自身の認定される後遺障害等級や慰謝料額について疑問をお抱えの方は、

ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。初回相談は無料です。

 

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士との初回無料の法律相談の流れについてはこちらから。

 

 

 

交通事故慰謝料全般についての詳しい解説はこちら。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。