後遺障害
高次脳機能障害の示談金とは?相場は?交通事故の示談交渉の注意点・事例について解説
2026.09.18

交通事故で頭部に強い衝撃を受けると、記憶力や注意力、感情のコントロールなどに障害が残る「高次脳機能障害」を負うことがあります。
高次脳機能障害は外見からわかりにくく、ご本人に自覚がないことも多いため、「見えない障害」とも呼ばれています。
高次脳機能障害の示談金は、認定される後遺障害等級によって数千万円から1億円を超える規模になることもある一方で、
症状の程度をめぐって保険会社と対立し、交渉が長引きやすい類型でもあります。
本記事では、
- 高次脳機能障害の示談金(賠償金)・慰謝料の相場
- 示談金額(賠償金額)を金額を左右する要素
- 後遺障害等級の認定で重視されるポイント、
- 示談交渉の流れと注意点
等について、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が解説します。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を行っております。
交通事故被害に遭い、高次脳機能障害が残ってしまった方やそのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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交通事故で高次脳機能障害になった場合の示談金(賠償金)・慰謝料相場

入通院に対する慰謝料相場
入通院慰謝料は、治療のために入院・通院したことに対する慰謝料で、入院期間と通院期間の長さに応じて算定されます。
高次脳機能障害が残ってしまうような大きな交通事故の場合には、入院期間が長くなることが考えられます。
また、高次脳機能障害は日常生活における支障を把握するために、社会復帰してからもしばらく様子を見ることも多く、
治療期間が1年~1年半にわたるケースも少なくありません。
このような事情を踏まえると、弁護士基準(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻 基準編』(公益財団法人日弁連交通事故センター編))では、
たとえば入院3か月+通院9か月の事案なら226万円、入院のみ12か月の事案なら321万円が一つの目安となります。
さらに、
- 重傷の場合
- 生死が危ぶまれる状態が継続したとき
- 麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき
- 手術を繰返したとき
などは入通院期間の長短にかかわらず別途増額がされますので、もう少し高い金額になる場合があります。
後遺障害に対する慰謝料相場
後遺症が残ってしまうことに対する慰謝料、後遺症慰謝料は、残ってしまった後遺症に対して認定される後遺障害等級によって金額が決まるのが一般的です。
各後遺障害等級別の弁護士基準別の相場は以下のとおりです。
| 第1級 | 2800万円 |
| 第2級 | 2370万円 |
| 第3級 | 1990万円 |
| 第4級 | 1670万円 |
| 第5級 | 1400万円 |
| 第6級 | 1180万円 |
| 第7級 | 1000万円 |
| 第8級 | 830万円 |
| 第9級 | 690万円 |
| 第10級 | 550万円 |
| 第11級 | 420万円 |
| 第12級 | 290万円 |
| 第13級 | 180万円 |
| 第14級 | 110万円 |
高次脳機能障害において該当可能性があるのは第1,2,3,5,7,9,12級です。
例えば3級と5級の間では、590万円もの差があります。
このほかにも、後遺症逸失利益の金額なども等級に応じて大きく変わりますから、適切な後遺障害等級の認定を得ることは極めて重要になります。
高次脳機能障害の示談金(賠償金)の金額を左右する要素

高次脳機能障害の示談金は、次の3つの要素によって大きく変動します。
認定された後遺障害等級
最も影響が大きいのが、認定される後遺障害等級です。
高次脳機能障害では1級から9級までの6段階の等級が設けられていますが、
先ほども見たように、等級が1段階変わるだけで、慰謝料だけでも数百万円の差が生じます。
さらに、等級は後述する逸失利益の計算にも直結するため、示談金の総額では1段階の違いが数千万円の差につながることもあります。
高次脳機能障害は症状が外見からわかりにくいため、実際の症状よりも低い等級で認定されてしまうケースも見られます。
そのため、実際の症状をしっかりと伝え、適正な等級認定を受けることが、示談金の金額を左右する最大のポイントとなります。
逸失利益の労働能力喪失率
そもそも逸失利益とは、後遺症が残ってしまうことによって、将来にわたって働きにくさが残ってしまうことで、
本来得られるはずであった収入が得られなくなるという損害を言います。
この逸失利益は、基本的には、次の式で計算されることになります。
|
後遺症逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
ここで出てくる労働能力喪失率は、ようは後遺症が残ってしまったことで働きにくくなった割合を示すものですが、
これは基本的には後遺障害等級に応じて決定されます
高次脳機能障害については、第1級、第2級、第3級、第5級、第7級、第9級、(第12級)の認定可能性がありますが、
各後遺障害等級別の労働能力喪失率は以下のとおりです(国土交通省ホームページより「労働能力喪失率表」参照)。
| 別表第一第1級 | 労働能力喪失率100% |
| 別表第一第2級 | 労働能力喪失率100% |
| 別表第二第3級 | 労働能力喪失率100% |
| 別表第二第5級 | 労働能力喪失率79% |
| 別表第二第7級 | 労働能力喪失率56% |
| 別表第二第9級 | 労働能力喪失率35% |
| 別表第二第12級 | 労働能力喪失率14% |
例えば基礎収入が500万円の30代男性の後遺症逸失利益を考えてみます。
別表第二第3級に該当する高次脳機能障害であると判断された場合の逸失利益の額は、
500万円×100%×22.1672(37年に対応するライプニッツ係数)=1億1083万6000円
になります。
一方で、別表第二第5級に該当する高次脳機能障害であると判断された場合の逸失利益の額は、
500万円×79%×22.1672(37年に対応するライプニッツ係数)=8756万0440円
となり、2300万円以上の差が生じます。
実質的には後遺障害等級1つで逸失利益と慰謝料とでそれぞれ大きな金額差が生じるわけです。
適切な後遺障害等級の認定を得ることの重要性をご理解いただけると思います。
損害項目の範囲
高次脳機能障害では、慰謝料と逸失利益以外にも請求できる損害項目が多く、これらを漏れなく積み上げられるかどうかは示談金の総額を左右します。
特に重度の高次脳機能障害が残る場合には、一つ一つの積み上げで金額が大きく変わるので、以下の費目には注意しましょう。
- 将来介護費(重度の場合、金額が非常に大きくなります)
- 近親者固有の慰謝料
- 装具・器具の購入費(将来の買替費用を含む)
- 家屋・自動車の改造費
- 成年後見申立費用
- 通院付添費・将来の通院交通費
保険会社が提示する示談案には、これらの項目が計上されていない、あるいは実態より低く見積もられていることがあるため、
提示額を受け入れる前に請求漏れの有無を確認することが重要です。
高次脳機能障害で示談金(賠償金)を獲得した事例

当事務所の代表弁護士小杉晴洋は、九州高次脳機能障害弁護団の一員であり、当事務所内の弁護士が高次脳機能障害で高額な示談金(賠償金)を獲得した事例が数多くございます。
以下その一例です。
事例①
交通事故の骨折後に高次脳機能障害となった被害者につき、自賠責保険が非該当と判断したものの、弁護士の異議申立てにより1級を獲得 裁判にて1億4000万円の賠償金を獲得した事例
この事例は、交通事故により寛骨臼骨折を負った被害者の方が、MRSA菌血症という病気に感染し、その感染した血液が身体を巡ることで高次脳機能障害となってしまったというものです。
当初自賠責保険は、交通事故によって高次脳機能障害となったものではないということで非該当という判断をしていましたが、
弁護士が主治医の先生との面談などをはじめ医学的証拠を揃えて異議申立てを行い、1級の認定を獲得しました。
自賠責保険の認定を獲得した後も、任意保険会社は1円も払うものがないと回答するなど、長い戦いとなりましたが、裁判を行い1億4000万円を獲得しました。
事例②
後遺障害等級2級の認定を獲得し、医師の意見書を取り付け、保険会社1億円の提示に対し裁判で2億5000万円の賠償金を獲得した事例
この事例は、専業主婦の被害者の方が交通事故で高次脳機能障害を負ってしまったというものです。
自賠責保険で後遺障害等級2級の認定を獲得したものの、保険会社側は被害者の懸命なリハビリを逆手に取り、そこまで重度の後遺症ではないという主張をしてきました。
弁護士が医師の意見書を取り付け、裁判で2億5000万円の賠償金を獲得しました。
その他の事例
- 関連記事:高次脳機能障害により家族に大きなストレス|家族の大変さが理解されず約2200万円の示談提示⇒専門の弁護士により約8300万円で解決(介護状況を具体的に立証し自賠責3級認定を裁判で2級獲得)
- 関連記事:【高次脳機能障害の等級変更】医師の意見書により交通事故との因果関係を繋げ自賠責4級の判断を裁判で1級に変更
- 関連記事:【高次脳機能障害の示談】約300万円が弁護士介入により7500万円まで増額(事前認定12級⇒異議申立てで併合5級)
- 関連記事:【高次脳機能障害】小学生の交通事故で、高次脳機能障害3級と醜状障害7級の併合1級が認定され、2億円以上を獲得して示談解決した事例
- 関連記事:【高次脳機能障害】弁護士のサポートにより後遺障害等級5級2号の認定を受け、1億円以上を獲得して示談解決した事例
交通事故で起こる高次脳機能障害とは

そもそも高次脳機能とは、人間が社会生活を営む中で学習し身につける、「言語」、「空間や対象の認知」、「記憶」、「計画的行動」、「論理的思考」等を意味するとされています。
そして、高次脳機能障害は、病気や頭部外傷などの原因により脳に損傷をきたしたために生じる、
これらの能力の障害、つまり言語能力や記憶能力、空間認知能力などの認知機能や精神機能の障害を指します。
日常生活における具体的症例としては、
- 今朝の朝食の内容を思い出せない(記憶障害)、
- 仕事や作業に集中することができない(注意障害)、
- 計画が立てられなくなる(遂行機能障害)、
- 言葉を上手く話すことができなくなったり人の話が理解できなくなった(失語症)、
- お箸や歯ブラシの使い方が分からなくなった(失行症)、
- 左側になるおかずが目にとまらず残すようになった(左半側空間無視)
などが挙げられます(参考:「高次脳機能障害者地域支援ハンドブック」(改訂第五版))。
また、高次脳機能障害は交通事故等の頭部外傷で生じることがありますが、必ずしも外傷を原因として発症するとは限りません。
たとえば、通常、頭部外傷とは無関係の脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、脳腫瘍、脳感染症など、
脳に損傷や機能異常をきたすものであれば、いずれも原因になります。
高齢者の場合、既往症に何らかの高次脳機能障害を示す疾患があり、その後に頭部外傷を負うことや、その逆も考えられ、外傷の影響がどこまでなのか悩ましいケースもあります。
厚生労働省が示す高次脳機能障害の診断基準によれば、高次脳機能障害は以下2点を主要症状とするものであるとされています。
- ①脳の器質的病変の原因となる疾病の発症や事故による受傷の事実が確認されている
- ②現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である
これより、高次脳機能障害の診断にあたっては、脳自体(物理的意味での)に何らかの異常があることが必要とされているものといえます。
もっとも、この基準の表現は曖昧なところがあり、また病変原因も複数を含むものであることから、
交通事故等の外傷によって高次脳機能障害が発症したといった場合に、前述のような争いが生じることが多いといえます。
高次脳機能障害で残る主な後遺症

高次脳機能障害の代表的な症状には、次のようなものがあります。
記憶障害
新しい出来事を覚えられなくなったり、以前の記憶を思い出せなくなったりする障害です。
- 人の名前や顔が覚えられない
- 同じことを何度も繰り返し聞いてしまう
- 物をどこに置いたか忘れる、約束を忘れる
- 事故前の出来事を思い出せない
日常生活では、服薬管理ができない、スケジュールを管理できないといった形で支障が現れます。
注意障害
物事に注意を向けたり、それを持続させたりすることが難しくなる障害です。
- 集中力が続かず、作業を長時間続けられない
- 同時に2つ以上のことを行えない
- 周囲の物音などにすぐ気を取られてしまう
- ミスや見落としが増える
就労場面では、ミスの多発や作業効率の低下という形で影響が現れやすい障害です。
遂行機能障害
目標を立て、段取りを考えて実行し、状況に応じて修正するという一連の働きが障害されるものです。
- 自分で計画を立てて物事を進められない
- 手順を考えられず、指示がないと動けない
- 優先順位をつけられない
- 予定外の出来事が起きると対応できない
仕事上、指示されたことはできても自律的に業務を進められないため、就労継続が困難になることがあります。
社会的行動障害
感情や行動のコントロールが難しくなり、対人関係に支障が生じる障害です。
- 感情の起伏が激しくなり、すぐに怒り出す(易怒性)
- 意欲・自発性が低下し、一日中何もしないでいる
- 場の状況や相手の気持ちを読み取れない
- 幼い言動が目立つようになる(退行)
- こだわりが強くなり、融通が利かなくなる
ご本人よりも、ご家族や職場の同僚が「人が変わってしまった」と感じることが多い症状です。
- 関連記事:【高次脳機能障害の症状】医師監修
高次脳機能障害の後遺障害等級

介護を要する後遺障害の等級
自動車損害賠償保障法施行令には、別表第一と別表第二とがあります。
別表第一は介護を要するような後遺障害が、別表第二はそれ以外の後遺障害が該当するとされており、
非常に重篤な高次脳機能障害が残存する場合には、この介護を要する別表第一の1級または2級に該当する可能性があります。
認定基準は以下のとおりです。
| 別表第一第1級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」をいい、
「身体機能は残存しているが高度の痴ほうがあるために、生活維持に必要な身のまわり動作に全面的介護を要するもの」もこれにあたります。 |
| 別表第一第2級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」をいい、
「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」がこれにあてはまります。 |
介護を要しない後遺障害の等級
3級以下は介護を要するとまではいえない後遺障害ということになります。
とはいえ、交通事故により生じた後遺障害について等級認定の審査を行っている損害保険料率算出機構が公開しているデータ(「自動車保険の概況」2025年版)では、
全後遺障害等級認定件数における割合が、
- 3級:0.57%
- 5級:0.75%
- 7級:1.94%
- 9級:3.49%
とされており、重篤な後遺障害であることがご理解いただけると思います。
各後遺障害等級の認定基準は以下のとおりです。
| 別表第二第3級3号 | 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」をいい、
「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。 しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」がこれに該当します。 |
| 別表第二第5級2号 | 「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」をいい、
「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。 このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」がこれに該当します。 |
| 別表第二第7級4号 | 「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」をいい、
「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」がこれに該当します。 |
| 別表第二第9級10号 | 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」をいい、
「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」がこれに該当します。 |
後遺障害等級の認定で重視されるポイント

高次脳機能障害の等級認定では、次の3点が特に重視されます。
いずれか一つでも資料が不足していると、適正な等級が認定されないリスクが高まります。
事故直後の意識障害の有無や程度を確認する
脳外傷による高次脳機能障害は、一般に、意識障害を伴うような頭部外傷後に起こりやすいとされています。
意識障害は、事故に伴う脳損傷の場合は事故直後から発生することが多く、頭蓋内血腫や脳腫脹など脳がむくんでしまうような病態の場合は、事故から一定期間経過後に発生しやすいと言われています。
そこで自賠責保険の等級認定実務においては、
| 「初診時に頭部外傷の診断があり、初診病院の経過の診断書において、当初の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3~2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例」 |
を「認定システム」の対象とする特定事案として抽出し、自賠責保険(共済)審査会高次脳障害専門部会で等級認定の検討がなされることになります。
(損害保険料率算出機構ホームページ2018年5月31日付「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの拡充について」(報告書)16頁より)
なお、
JCSは、日本において用いられている意識障害の評価指標をいいます。
覚醒の程度によって、Ⅰ(1桁)、Ⅱ(2桁)、Ⅲ(3桁)の三段階に大きく分け、さらにそれを3段階に分けます。
点数は「Ⅱ-20」、「Ⅲ-100」などと表記します。健常者(意識清明)は「0」と表記されます。
点数が高いほど状態が悪いということになります。
GCSは、主に海外において用いられている意識障害の評価指標のことです。
開眼機能(E)、言語機能(V)、運動機能(M)の3要素に分けて意識状態を指標化し、合計点数により評価します。
合計点は「7(E1 V2 M4)」などと表記します。健常者だと15点(満点)、最低点は3点です。
点数が高いほど状態が悪いということになります。
画像検査で脳の損傷を確認する
CTやMRI画像での経時的観察による脳出血(硬膜下出血、くも膜下出血などの存在とその量の増大)像や脳挫傷痕の確認があれば、
外傷に伴う脳損傷の存在が確認されやすいです。
CTで所見を得られない患者について頭蓋内病変が疑われる場合は、CTよりも多くの情報を得られるMRI画像の撮影を早期にすることが望ましいとされています。
また、受傷後時間が経過した場合には、それでも鋭敏に微細な出血痕等を描出することができるMRIのSWI撮影により確認することができる可能性があります。
もっとも、どのような検査を行うか、また画像診断の方法等については、担当医の方針によって異なる面もありますので、医師の判断に委ねたほうがよいのではないかと思います。
撮影方法は上記のとおりですが、局所性脳損傷の場合はともかく、
びまん性軸索損傷についてはこれらの撮影結果のみで発症を確認することは困難であり、あくまで補助的な診断にとどまります。
びまん性軸索損傷の病態は、「外傷によりミクロレベルで脳細胞間の情報伝達を行う軸索(神経線維)が断裂して機能障害をきたしている状態」だと考えられていますが、
ミクロレベルの軸索の断裂それ自体を現在の画像撮影技術で撮影することが困難だからです。
そこで、自賠責保険の障害認定実務においては、MRIやCT検査により、脳室拡大や脳溝拡大などの脳萎縮がみられ、
およそ3か月程度でその固定が確認されれば、軸索組織の障害が生じたことを合理的に疑うことができ、
出血や脳挫傷の痕跡が乏しい場合であっても、びまん性軸索損傷の発症を肯定しうるものとされています。
事故直後なるべく早期から、かつ経時的に画像の撮影を行っていくことが重要になります。
事故後の症状経過を確認する
交通事故により生じた後遺症について、どの後遺障害等級に該当するかを判断する自賠責損害調査事務所は、
原則として提出された書面に基づいて後遺障害等級の該当性を判断しています。
ですから、主治医が作成する後遺障害診断書をはじめとする書類の記載内容は極めて重要になりますが、
主治医は当然診察の際しか被害者を見ていません。
高次脳機能障害は日常生活における支障などが後遺症の程度の判断要素になるにもかかわらず、
それを主治医は知らないわけです。
だからこそ、日ごろご家族の方が感じるような性格の変化や、日常生活で発生したトラブルなどをまとめておき、
主治医に伝え、それをもとに主治医に後遺障害診断書を書いていただくことが重要になります。
高次脳機能障害で慰謝料のほかに請求できる賠償金

逸失利益
後遺症が残ることによって将来の収入が減少することに対する賠償です。
前述のとおり、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数により計算されます。
後遺障害等級によって労働能力喪失率が大きく変わり、逸失利益の総額も大きく変わりますから、
やはり認定される後遺障害等級は重要です。
将来介護費
重度の高次脳機能障害が残り、介護が必要になった場合には、将来にわたる介護費用を請求できます。
介護費用の日額は、職業介護人に依頼する場合とご家族が介護する場合とで金額が異なり、実際の介護状況に応じて判断されます。
平均余命までの長期間にわたって計算されるため、日額の設定が数千万円単位の差につながる項目です。
保険会社は日額を低く見積もってくることが多いため、実際の介護の実態を具体的に主張・立証することが重要になります。
装具・器具の購入費
症状に応じて必要となる装具や器具の購入費も請求できます。
- 車いす、介護用ベッド、歩行補助具
- おむつなどの介護用品
- 見守り・記録のための機器
これらは耐用年数が経過すれば買い替えが必要になるため、将来の買替費用まで含めて請求することが重要です。
家屋や自動車の改造にかかる費用
在宅での生活や介護を可能にするための改造費用も、必要性が認められる範囲で請求できます。
- 自宅のバリアフリー化(段差解消、手すりの設置、浴室・トイレの改修など)
- 車いすで移動可能な間取りへの変更
- 福祉車両への買替費用や、既存車両への昇降装置の設置費用
この家屋・自動車の改造にかかる費用については、実際に日常生活を送る際にどのような支障があるのか、
それについて医師がどう考えているのかを示してあげることが重要になります。
ですから、ここに手すりがないとこういうことで困る、といった動画や写真などをとることが有用です。
高次脳機能障害の示談交渉の流れ

高次脳機能障害の場合、症状固定から示談成立までは、一般的に次のような流れで進みます。
- 症状固定の判断:治療・リハビリを継続しても症状の改善が見込めない段階に至ったことを、主治医が判断します。高次脳機能障害では、症状の安定を確認するため、事故から1年以上を要することも多くあります
- 後遺障害診断書・関係資料の取得:後遺障害診断書に加え、神経心理学的検査の結果、日常生活状況報告書、画像データ、頭部外傷後の所見などを揃えます
- 後遺障害等級認定の申請:しっかりと被害者請求を行いましょう
- 等級認定の結果通知:認定結果に納意できない場合は、異議申立てを行うことができます
- 損害額の算定:慰謝料、逸失利益、将来介護費など、すべての損害項目を積み上げて請求額を算定します
- 示談交渉:加害者側の保険会社と、金額や過失割合について交渉します
- 示談成立・示談金の支払い:合意に至れば示談書を取り交わし、示談金が支払われます
- 訴訟:交渉で合意に至らない場合は、訴訟等による解決を図ります
高次脳機能障害の示談金を請求する際の注意点

逸失利益が請求できない場合がある
逸失利益は「将来の収入が減少すること」に対する賠償であるため、原則として、現実に収入が減少していることが必要とされます。
現実には収入減が発生していない場合や、そもそも事故前に収入がなく、将来の収入があったことについて疑問を呈されてしまう場合などは、
逸失利益が請求できない場合があります。
ただし、
- 本人が特別な努力をして収入を維持している場合
- 職場の温情的な配慮によって維持されているにすぎない場合
- 昇進や転職に不利益が生じている場合
- 将来的に減収の可能性が高い場合
や、
- 事故当時は無職であったが、今後就労する予定があった
等の事情があれば、逸失利益を請求することができます。
保険会社から逸失利益の発生を否定されたとしても、諦めずに弁護士に相談することをお勧めします。
保険会社と主張が対立して交渉が長引きやすい
高次脳機能障害は、次の理由から示談交渉が難航しやすい類型です。
- 症状が外見からわかりにくく、症状の程度そのものが争点になりやすい
- 認定された等級の妥当性をめぐって対立しやすい
- 労働能力喪失率や将来介護費の日額など、金額の幅が大きい項目が多い
- 事故と症状の因果関係(既存疾患の影響など)が争われることがある
- 請求額が高額になるため、保険会社も慎重な対応をとる
特に1級や2級など極めて重篤な高次脳機能障害が残ってしまうようなケースでは、担当者がどう頑張っても保険会社会社内部での決済が下りず、
こちら側が求める水準には到底達しないということがあり得ます。
このような場合には、裁判での解決を視野に入れて動く必要があります。
損害賠償請求権の時効に注意する
損害賠償請求権には時効があり、人身損害については損害および加害者を知った時から5年、不法行為の時から20年で消滅します。
高次脳機能障害では、
- 症状固定までに長期間を要する
- 等級認定の申請や異議申立てに時間がかかる
- 示談交渉が長引きやすい
等の事情から、解決までの時間が長くなることがあり、時効は気を付けておく必要があります。
また、自賠責保険の被害者請求の時効は3年です。
後遺障害部分は症状固定日の翌日から3年とは言われていますが、自賠責が症状固定日を主治医の判断より前だと認定した場合は、その日の翌日が起算点になります。
高を括らずに、前もって時効更新の申請などを行って対処しておきましょう。
高次脳機能障害の示談金を適切に受け取るためのポイント

後遺障害等級の認定を確実に受ける
被害者側で弁護士に委任して等級申請を行う場合、多くは事前認定ではなく被害者請求の手法で行うのではないかと思われますが、
被害者請求をする弁護士の側で以下の資料について不足なく集め、内容についてしっかり確認し、必要であれば医師面談や医療照会等で不明部分等の確認をとることが重要です。
なお、2~5について、例えば、「2 頭部外傷後の意識障害についての所見」であれば、実際に「頭部外傷後の意識障害についての所見」という専用の書式があります。
| 1:CT、MRIなどの脳画像検査記録 | 病院で作成 |
| 2:頭部外傷後の意識障害についての所見 | 医師が作成 |
| 3:神経系統の障害に関する医学的意見 | 医師が作成 |
| 4:日常生活状況報告書 | 被害者の家族や介護者が作成 |
| 5:学校生活の状況報告書(被害者が学生の場合) | 受傷前後の担任教師それぞれが作成 |
1:CT、MRIなどの脳画像検査記録
治療期間中に転院がある場合、すべての病院から取り付けます。
2:頭部外傷後の意識障害についての所見
意識障害について医師が作成する文書で、事故後の意識障害の有無・推移、外傷後健忘の有無・長さ、その他意識障害の所見につき特記すべき事項が詳細に記載されます。
転院をしている場合、初診や初期治療を担当した医療機関であればすべて作成していただく必要があります。
当時の担当医が異動等でいなくなることも懸念されますので、場合によっては症状固定前に依頼作成することも考慮します。
3:神経系統の障害に関する医学的意見
認知障害や人格の変化、問題行動などについて医師が作成する文書です。
- 脳CTや脳MRIなどの画像
- 脳波
- 神経心理学検査
- 運動機能
- 身の回り動作能力
- てんかん発作の有無
- 認知・情緒・行動障害
- 社会生活・日常生活への影響
- 全般的活動および適応状況
を具体的に記載していただきます。
4:日常生活状況報告書
被害者の日常生活の状況を把握することができる家族や介護者等が作成する文書です。
詳細は次の通りですが、事故前後を通じて被害者の様子を知っている方に作っていただくのがベターです。
同居のご家族が一番よい(信用性も高い)のではないかと思いますが、
同居でなくても連絡を取り合っていた親族の方や、それもいなければ付き合いのあった職場の同僚や友人など、協力者をなるべく探してみましょう。
- 受傷前と受傷後の日常生活の能力・程度
- 問題行動の頻度
- 家庭・地域社会・職場・学校などにおける日常の活動状況や適応状況
- これら症状が社会生活・日常生活に与える影響
- 事故前後の生活状況の変化
- 現在支障が生じていること
- 就労・就学状況
- 身の回り動作能力
- 声掛け、見守り、介助が必要な理由
- それらの内容、頻度
を具体的に記載していただきます。
請求漏れがないか損害項目を確認する
保険会社の提示額には、請求可能な項目が計上されていないことがあります。
- 雑費・将来雑費
- 将来介護費
- 家屋改造費
- 休業損害
- 逸失利益
などについては、請求漏れや適切な計算がされていないことなどがありうるので、弁護士に相談して確認してもらいましょう。
将来分の介護費まで含めて請求する
重度の高次脳機能障害では、将来介護費が損害全体の中で非常に大きな割合を占めます。
- 実際の介護の内容と所要時間を、日誌などの形で記録しておく
- ご家族が介護を担っている場合も、その労務の経済的価値を主張する
- 介護を担うご家族が高齢になった後に、職業介護人に移行する必要性も踏まえて主張する
といった、まさに現状と将来を見据えた計算を行う必要があります。
将来介護費は、そもそも重篤な後遺症が残る場合にしか問題になりません。ですから、専門弁護士でないと経験がない可能性もあります。
重篤な高次脳機能障害の場合には専門弁護士への相談が重要です。
示談交渉で成年後見人が必要になるケース

高次脳機能障害や遷延性意識障害により、被害者ご本人に十分な判断能力がない場合、ご本人が有効に示談をすることができません。
この場合、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらい、後見人が本人に代わって示談交渉や訴訟を行う必要があります。
成年後見制度とは、判断能力が不十分な方について、家庭裁判所が選任した後見人等が本人の財産管理や法律行為を支援する制度です
(裁判所ホームページ「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」参照)。
高額の示談金を受け取る場面では、ご本人の財産を保護するという観点からも、後見人の選任が求められることがあります。
なお、後見人の選任には申立てから数か月かかることがあり、示談交渉のスケジュール全体に影響します。
申立費用や後見人(弁護士等が選任された場合)への報酬が発生する点にも留意が必要です。
成年後見申立てに要した費用は、事故と相当因果関係のある損害として、加害者に請求できる場合があります。
高次脳機能障害の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

弁護士基準で算定した金額を示してもらえる
前述のとおり、慰謝料の算定基準には、
- 「自賠責基準」
- 「任意保険基準」
- 「弁護士基準」
の3種類があり、弁護士基準が最も高額です。
しかし、弁護士基準は、弁護士が代理人として交渉したり裁判で主張したりして初めて実際に適用される基準です。
弁護士に依頼すれば、弁護士基準に基づく適正な金額を算定した慰謝料の請求を求めることができます。
増額に向けた示談交渉を任せられる
高次脳機能障害の示談交渉では、等級の妥当性、労働能力喪失率、将来介護の必要性やその額など、
医学的・法的な専門知識を要する論点が多数生じます。
専門弁護士に依頼することで、適切な後遺障害等級の認定を得るためのサポートをはじめとして、
その後の示談交渉や裁判に必要となる証拠の収集・その証拠に基づく的確な主張などをしてもらうことができます。
高次脳機能障害は、被害者ご本人はもちろん、ご家族など周りの方の生活を一変させてしまうような重篤な後遺症です。
だからこそ、少なくともお金の面では、しっかりと適切な賠償を受ける必要があります。泣き寝入りとなってしまうことは絶対に避けなければなりません。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
交通事故被害に遭い、高次脳機能障害を負われた方やそのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士によるサポートの内容はこちら。
高次脳機能障害の示談金に関するよくある質問

示談と裁判のどちらが得ですか?
どちらが有利かは、事案の内容によって異なります。それぞれの特徴は次のとおりです。
示談(交渉による解決)
- 【メリット】早期に解決でき、示談金を早く受け取れる。手続きの負担や費用が比較的小さい
- 【デメリット】相手方が譲歩しなければ金額は上がらない。弁護士基準の満額まで認められないことも多い
裁判(訴訟)
- 【メリット】裁判所の判断により、弁護士基準に沿った金額や、等級を超える労働能力喪失率が認められる可能性がある。遅延損害金や弁護士費用の一部が加算されることもある
- 【デメリット】解決までに1年以上かかることが多く、手続きの負担が大きい。必ず希望どおりの結果になるとは限らない
重篤な高次脳機能障害の場合は、遅延損害金や弁護士費用相当額だけでもかなりの金額となるため、基本的には裁判をした方が受け取れる金額が増える可能性が高いです。
一方で、裁判になった場合は、自賠責保険が認定した後遺障害等級よりも低い認定がされる可能性もあるため、事案に応じてここは検討すべきであり、
専門弁護士に相談することをお勧めします。
10対0の事故で示談金はいくらくらいですか?
過失割合が10対0(被害者に過失がない)の場合、過失相殺による減額がないため、発生した損害額の全額を請求できます。
ただし、金額そのものは過失割合ではなく、認定された等級・被害者の年齢・収入・介護の必要性などによって決まります。
認定される後遺障害等級によっては、数千万から1億円を超えるような示談金となる可能性もあります。
なお、過失割合が10対0の場合、被害者側の保険会社は示談交渉を代行できません。
そのため、ご本人やご家族が直接、加害者側の保険会社と交渉しなければならず、かえって負担が大きくなることがあります。この点も、弁護士に依頼するメリットが大きい理由の一つです。
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