交通事故コラム

バイク事故 後遺障害 慰謝料 逸失利益

バイク事故で腕や足を切断してしまった場合の慰謝料相場を弁護士が解説

2025.01.20

後遺症慰謝料 慰謝料 逸失利益

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、

  • バイク事故で腕や足を切断してしまうケース
  • 腕や足を切断してしまった場合の後遺障害等級
  • 腕や足を切断してしまった場合の慰謝料相場と算定基準
  • 適切な賠償を受けるためのポイント

等について解説します。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による交通事故解決サポートを行っております。

バイク事故により腕や足を切断してしまった被害者の方やそのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士による交通事故解決サポートの詳細についてはこちら。

 

バイク事故で切断に至る主なケース

交通事故による切断の原因と概要

バイク事故では、事故の衝撃が身体に直接加わるため、自動車事故に比べて重大な怪我を負いやすく、腕や足の切断に至るケースが発生することもあります。

 

政府統計「道路の交通に関する統計/令和5年中の交通重傷事故の発生状況/表2-2-11 状態別死者、重傷者、軽傷者数の推移」でも、

自動二輪車乗車中の事故の死傷者全体における死者・重傷者の割合は18.8%

原動機付自転車乗車中の事故の死傷者全体における死者・重傷者の割合は16.8%となり、

自動車乗車中の事故の死傷者全体における死者・重傷者の割合の3.6%と比べると格段に重大な事故が発生しやすいことがお分かりいただけると思います。

 

バイク事故直後の外傷で直接的な切断手術が行われることもありますが、事故後に発生する壊死や感染症が原因で、最終的に腕や足を切断せざるを得ないケースもあります。

たとえば、大量の出血や幹部への血流不足によって組織が壊死した場合、感染症の進行を防ぐために切断が最善の選択肢とされます。

 

また、初期治療が適切に行われなかった場合や、感染症への耐性が弱い背景がある場合でも切断のリスクが高まります。

このような場合、切断の判断は被害者の生命を守るための緊急措置として行われることがほとんどです。

 

切断による後遺障害等級の基礎知識

後遺障害等級

後遺障害等級とは何か

後遺障害等級とは、交通事故などで身体に後遺症が残った場合、その障害の重さや影響度を評価し、賠償金の基準を明確にするために設けられた等級制度のことです。

この等級は全部で第1級から第14級まで存在し、等級が低いほど(数字が小さいほど)重度の後遺症が残っているという評価をされることになります。

 

この後遺障害等級の認定は、後ほどご説明する後遺症慰謝料や逸失利益などの算定に大きな影響を与えるものですから、

被害者が適切な賠償を受け取るためには、後遺障害等級制度を理解し、適切な後遺障害等級の認定を得ることが重要です。

 

腕や足の切断で該当する後遺障害等級

バイク事故によって腕や足を切断した場合、後遺障害等級の認定は切断された部位や範囲によって異なります。

順にみていきましょう。

 

なお、ここでいう欠損は、一部の離断ではなく完全な欠損か、目に見える離断でなければ後遺障害等級として認定されにくい傾向があります。

 

上肢の切断・欠損

  • 第1級3号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
  • 第2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
  • 第4級4号 1上肢をひじ関節以上で失ったもの
  • 第5級4号 1上肢を手関節以上で失ったもの

 

 

手指の切断・欠損

  • 第3級5号 両手の手指の全部を失ったもの
  • 第7級6号 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
  • 第8級3号 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
  • 第9級12号 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
  • 第11級8号 1手のひとさし指、なか指またはくすり指を失ったもの
  • 第12級9号 1手のこ指を失ったもの
  • 第13級7号 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
  • 第14級6号 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

 

 

下肢(足指)の切断・欠損

  • 第1級5号 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
  • 第2級4号 両下肢を足関節以上で失ったもの
  • 第4級5号 1下肢をひざ関節以上で失ったもの
  • 第4級7号 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
  • 第5級5号 1下肢を足関節以上で失ったもの
  • 第7級8号 1足をリスフラン関節以上で失ったもの

 

 

足指の切断・欠損

  • 第5級8号 両足の足指の全部を失ったもの
  • 第8級10号 1足の足指の全部を失ったもの
  • 第9級14号 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
  • 第10級9号 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
  • 第12級11号 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
  • 第13級9号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

 

 

また、手足の切断についてはここに規定がある等級以外の場合も考えられます。

例えば一上肢(右腕)をひじ関節以上で失い、もう一方の上肢(左腕)を手関節以上で失うような場合です。

 

このような場合、原則として「併合」という処理が為されることになります。

「併合」とは、複数の後遺障害が残った場合に、最終的に1つの等級として定めるための方法をいいます。

 

先ほどの例でいうと、「一上肢をひじ関節以上で失ったもの」は第4級4号に該当し、「もう一方の上肢を手関節以上で失ったもの」は第5級4号に該当します。

併合のルールでは、第5級以上に該当する後遺障害が2以上ある場合には、重い方の後遺障害等級を3つ繰り上げるとされているので、併合1級となりそうです。

 

しかし、現に明記されている等級として、「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」が第1級3号に用意されています。

今回は両上肢をひじ関節以上で失ったものには達していないため、障害の序列を乱さないように、併合2級にとどまるということになります。

 

認定のプロセスと必要書類

後遺障害等級の認定を受けるには、一定のプロセスを経る必要があります。

まずは医療施設で治療を進め、身体の状況が「症状固定」と判断される状態に達するまで治療やリハビリを行います。

症状固定とは、これ以上治療を行っても回復が見込めない段階をいいます。

 

症状固定と診断されたら、医師による「後遺障害診断書」を作成してもらう必要があります。

この後遺障害診断書を含む以下のような書類を加害者側自賠責保険に送付することで、後遺障害等級認定の申請をすることができます。

 

  • 後遺障害診断書
  • 医療記録(診断書や診療報酬明細書、レントゲン写真やMRIの検査結果など)
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書

など

 

提出された資料は、損害保険料率算出機構内部の自賠責損害調査事務所で評価され、後遺障害等級が最終的に認定されます。

自賠責損害調査事務所における審査は、迅速に行うために書面による審査が原則となっています。

したがって、提出する書類、とりわけ後遺障害診断書の記載は極めて重要です。

 

手足の切断についても、切断の態様や箇所を適切に記載してもらっていないと、

身体の状況に見合っていない低い後遺障害等級の認定がされる可能性があります。

 

後遺障害診断書の作成のタイミングで弁護士に相談することで、損害賠償請求(後遺障害等級認定)の視点からみたアドバイスを受けることができるため、

適切な後遺障害等級認定の可能性を高めることができるでしょう。

 

慰謝料相場と算定基準

慰謝料の算定基準

バイク事故によって腕や足を切断したような場合、慰謝料の金額は算定基準によって大きく異なります。

主に「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つが用いられ、それぞれの基準で算出される金額に差があります。

 

自賠責基準は、自動車損害賠償保障法施行令第2条並びに別表第1及び別表第2に定める保険金額を限度に設定された基準をいいます。

自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準

 

この自賠責基準は、被害者が迅速かつ平等に、ほぼ確実に損害の填補を受けることができるという反面、

基準としては3つの基準の中で最も低額です。

 

任意保険基準は保険会社ごとに異なるため、正確な金額はケースバイケースとなりますが、

任意保険会社は支払う保険金額が少なければ少ないほど自社の利益が大きくなるという立場にありますから、

被害者にとって適切な基準とは到底言えません。

 

一方で弁護士基準は、裁判所の判例を基にしており、被害者側にとって最も適切かつ高額な基準となります。

 

交通事故による切断という身体的・精神的な影響の大きなケースでは、被害者が最大限の慰謝料を受け取るために、弁護士基準に基づいて交渉を行うことが必須です。

 

 

入通院慰謝料と基準と相場

入通院慰謝料は、事故後の治療や通院による肉体的・精神的な苦痛を慰謝するために支払われるもので、入院日数や通院期間に応じて金額が異なります。

 

バイク事故により四肢を切断するような場合には、基本的には『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)に定めのある別表Ⅰを用いて入通院慰謝料の計算をすることになります。

 

例えば、事故日から症状固定日までの間に、2か月の入院と4か月の通院をしたような場合には、165万円が一つの目安となります。

 

この別表Ⅰはあくまで目安であり、

傷害の部位、程度によっては、別表Ⅰの金額を20%~30%程度増額する。

生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する。

などのルールもあり、腕や足を切断するような場合はこれらのルールを用いて慰謝料の増額請求をすることも視野に入れるべきでしょう。

 

後遺症慰謝料の基準と相場

後遺障害等級に該当する場合、等級に応じて受け取れる慰謝料の金額が異なります。

例えば、腕または足の切断では、多くの場合で第1級から第5級のような高い等級に該当する可能性が高いです。

 

弁護士基準での第1級~第5級が認定された場合の後遺症慰謝料は以下のとおりです。

  • 第1級 2800万円
  • 第2級 2370万円
  • 第3級 1990万円
  • 第4級 1670万円
  • 第5級 1400万円

 

認定される後遺障害等級によって数百万以上もの差が生じるため、後遺障害等級の認定はとても重要です。

 

 

慰謝料以外に請求できる費目

逸失利益

バイク事故による切断の場合には、慰謝料以外にも様々な費目を請求することができます。

逸失利益はその代表例です。

 

当然ですが、手足を切断してしまうと、事故前と比較して大幅に働きにくくなってしまいます。

その働きにくさによって将来にわたって被害者が被る不利益=働きにくさが残ってしまったせいで将来にわたって得られるはずであったのに得られなくなった利益を逸失利益といいます。

 

この逸失利益についても請求が可能です。

 

 

(将来)装具費用

手足を切断したような場合には、義手や義足、杖といった装具を将来にわたって必要とすることが考えられます。

この装具費用については、必要と認められる場合には、将来要することになるであろう費用についても原則として認められることになります。

 

それ以外にも、必要と認められる場合には、家屋改造費や自動車改造費なども認定される可能性があります。

これらは実際に事故前後で日常生活がどのように変わってしまい、生活を送る上でどのような支障があるかを具体的に示す必要があります。

 

適切な賠償を受けるためのポイントと弁護士に相談するメリット

保険会社交渉時の注意点

バイク事故で腕や足を切断するような重大な被害を受けた場合、保険会社との適切な交渉が賠償金の重要なポイントになります。

保険会社は被害者に対して可能な限り少ない賠償金で示談を成立させようとする場合が多いため、注意が必要です。

 

被害者としては、自分の請求内容が正当であることを証明するために適切な証拠を集めることが重要です。

 

弁護士への相談の重要性

バイク事故による切断など重大な被害を負った場合、弁護士への相談は非常に有益です。

 

弁護士は、交通事故に関する専門知識を活かして被害者が受け取るべき適切な賠償金額を計算し、保険会社との交渉を有利に進めることができます。

また、弁護士基準を適用することで、自賠責基準や任意保険基準よりも高額な慰謝料を得られる可能性が高まります。

 

例えば、後遺障害等級に基づく慰謝料額や逸失利益の算定においても、交通事故に詳しい弁護士が関与することで有利な条件を引き出せることがあります。

 

弁護士法人小杉法律事務所でも、交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士による解決サポートにより、

約1億円での示談解決に加え、示談金と別に将来の義足の買替費用の支払を確約させた事例などがございます。

 

バイク事故で手足を切断してしまった被害者の方やご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士がサポートいたします。

 

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交通事故慰謝料全般についての詳しい解説はこちら。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。