後遺障害 慰謝料 逸失利益
交通事故の脳挫傷とは?症状や後遺症・慰謝料請求について解説
2026.08.28

交通事故で頭部に強い衝撃を受けると、脳が頭蓋骨の内側にぶつかったり、脳組織そのものが損傷したりする「脳挫傷(のうざしょう)」を負うことがあります。
脳挫傷は、意識障害や麻痺、高次脳機能障害など重い後遺症につながるおそれがある重篤な怪我であり、ご本人はもちろん、ご家族にとっても大きな不安を伴うものです。
このページでは、
- 交通事故による脳挫傷の症状や原因
- 注意すべきポイント、治療期間の目安
- 後遺障害等級
- 請求できる慰謝料・賠償金
等について、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が解説します。
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交通事故による脳挫傷とは

(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、266~267頁、275~276頁、283頁)
大部分の外傷性脳損傷は頭部の急激な加速または減速の結果として生じると言われています。
脳損傷は、局所性脳損傷(脳挫傷)とびまん性軸索損傷の2種に大別されます。
※加速:顔面に真正面からパンチを受けた際、頭全体が後方に振られれば、脳も後方に「加速」します。
※減速:転倒して額を壁に打ち付ければ、頭全体の動きが急に止まるので脳の動きも「減速」します。
局所性脳損傷(脳挫傷)とは、脳の損傷が限局的で脳全体への波及が少ないものを言います。
最も多い局所性脳損傷は頭蓋内で脳が移動して脳の先端部が頭蓋骨と衝突して生じるもので、前頭葉先端や側頭葉先端に多いです。
打撃部位に生じる直接損傷と、その反対側で生じる対側損傷があります。
頭部CT画像で確認することが可能です。
脳挫傷に続発して脳内血腫が発生することも多いと言われます。
その他、外傷等で発生した血腫で頭蓋内圧が亢進し、脳実質が圧迫されることによっても生じえます。
損傷の程度や部位によって現れる症状はさまざまで、軽度であれば後遺症なく回復することもありますが、
重度の場合は意識障害や麻痺、高次脳機能障害などの後遺症が残ることも少なくありません。
交通事故による脳挫傷の主な症状

脳挫傷の症状は、損傷を受けた脳の部位や範囲によって大きく異なります。ここでは、身体面に現れる症状と、精神面・認知機能面に現れる症状に分けてご紹介します。
身体に現れる症状
脳挫傷では、以下のような身体症状が現れることがあります。
- 意識障害:受傷直後に意識を失う、もうろうとした状態が続くなど
- 頭痛・嘔吐
- 外傷性てんかん:脳の損傷部位が刺激されることで起こる
- 麻痺・運動障害:四肢の1肢だけが麻痺する単麻痺、一側の上下肢が麻痺する片麻痺、四肢すべてが麻痺する四肢麻痺など
- 感覚障害:嗅覚や視覚、聴覚や味覚等の鈍麻など
- 失調:めまいやふらつき、歩行障害
- 視覚・言語障害:ものが二重に見える、言葉が出にくいなど
これらの症状は、事故直後から現れる場合もあれば、数時間〜数日かけて徐々に悪化する場合もあります。
事故直後は症状が軽くても、決して自己判断で済ませず、必ず医療機関を受診することが重要です。
精神面・認知機能に現れる症状
標準脳神経外科学第16版(医学書院)、280~281頁)
近年、頭部外傷後の後遺症として社会的問題になっています。
特に問題になるのは、重症頭部外傷例よりもむしろ軽傷や中等症のいわゆる身体障害がなく、本病態のみを残す場合で、十分な社会復帰が難しいと言われます。
高次脳機能は認知機能とも置き換えられ、知覚から判断に至るすべての情報処理の過程が正常に作動することが重要です。
頭部外傷後にみられる高次脳機能障害は、前向健忘、注意障害、遂行機能障害、行動と情緒の障害などがあげられ、特に記銘力の障害は社会復帰への大きな妨げになります。
| 失語 | 脳の損傷が原因で、読む・書く・話す・聞くなどの言語機能が失われた状態です。前頭葉と側頭葉が関連します。 |
| 失行 | 運動麻痺や感覚障害ががなく、記憶等も問題が無いにも関わらず、日常生活の様々な行為が損なわれます。頭頂葉が関連します。 |
| 失認 | 目は見えていて感覚に問題が無いにもかかわらず、眼に見たものを認識できない等の症状が生じます。側頭葉や後頭葉の損傷で生じます。 |
こうした症状は、事故直後には目立たず、日常生活や仕事に復帰してから「以前と様子が違う」という形で家族や周囲が気づくケースも多く見られます。
少しでも違和感があれば、早めに専門の医療機関を受診することが大切です。
- 関連記事:【高次脳機能障害】医師監修
交通事故により脳挫傷が生じる原因

(以下「標準脳神経外科学」(医学書院)266~267頁、275頁参照)
脳挫傷は穿通外傷(※)のように外力が極めて限局的に加わってできる場合もありますが、多くの場合は頭部に加速あるいは減速の衝撃が生じて発生します。
※穿通外傷
銃弾・刃物・ガラス片のほか、傘・針・箸などの日用生活用品によっても生じます。
例えば、箸を加えたまま転倒して箸が頭蓋内へ刺入したり、箸をつかんだ手の上に顔面から転倒した際に箸が瞼を貫通し眼窩から前頭葉まで侵入する等の外傷態様です。
加速による衝撃
脳は、頭蓋骨の中で髄液のプールに浮かんだ状態で存在しており、髄液は外部環境の変化や衝撃などから脳を保護する役割を果たしています。
イメージとしては、タッパーの中に豆腐が入っているような様子を想像いただくとよいかもしれません。
このタッパーを前後左右に動かすと豆腐が崩れてしまいますが、水を入れていれば、豆腐が簡単に崩れてしまうのを避けることができます。
すなわち、タッパー=頭蓋骨、豆腐=脳、タッパー内の水=髄液の関係ですね。
ざっくりとイメージができたところで、一例を挙げてみます。
例えば顔面にパンチを受けたりバットで叩かれた時には、加速度的衝撃が加わります。
衝撃後にまずは頭蓋骨全体が後方に移動するのですが、脳は髄液に浮遊して慣性があるために少し遅れる結果、
頭蓋骨全体が後方に移動するのとは(相対的に)逆方向へ移動することで、前頭葉先端部が前頭骨内面に衝突し脳損傷が生じます。
また、脳組織は柔らかく、全体が前方に移動する際に脳収縮が起こり、この収縮によっても脳組織内部のズレが生じて脳が損傷されます。
前頭葉の衝突周辺部では陽圧となり、反対側の後頭葉では陰圧になりますが、この圧の変化でも脳が損傷されます。
前頭葉の衝撃後には脳全体が元の位置に戻るために後方へ移動しますが、このとき同様のメカニズムが後方でも働き、後頭葉先端部の衝突による損傷と脳収縮によるズレ損傷を生じます。
減速による衝撃
壁への衝突や転倒・転落時に発生する衝撃では、頭蓋骨が急停止しますが、
髄液内を浮遊する脳は慣性によりなお前方に動いていて、頭蓋骨へ衝突し(このとき衝突面では陽圧、対側面では陰圧になり)、脳損傷が生じます。
外力が大きければ、前頭葉の衝突後に脳は元の位置に戻る後方への動きを生じ、加速による衝撃とメカニズムによって脳にはさらなる損傷が加わります。
直撃損傷と対側損傷
頭部を強打したときに生じる脳挫傷には、直撃損傷と対側損傷があります。
外力が作用点の直下に発生する脳損傷を直撃損傷、慣性力によって外力作用点の対極に発生するものを対側損傷といいます。
対側損傷がみられる場合、対側の方が脳の損傷が大きいことが多いと言われます。
前頭部の受傷では、ほとんどが前頭葉への直撃損傷であり、対側損傷は少ないです。
後頭部や頭頂部の受傷では、直撃損傷は少なく、前頭葉や側頭葉先端部に対側損傷がみられます。
- 関連記事:【脳挫傷とは】医師監修記事
交通事故の脳挫傷で注意すべきこと

交通事故で脳挫傷を負った場合、以下のような点に特に注意する必要があります。
時間の経過とともに症状が悪化することがある
(以下「標準脳神経外科学」(医学書院)267頁,277~278頁参照)
頭部外傷による脳損傷では、外傷に直接起因する一次性損傷と、それに引き続いて生じる二次的損傷が存在します。
例えば、頭部外傷で脳挫傷や頭蓋内血腫等の脳損傷を生じた後(一次性損傷)、血腫・浮腫などにより脳が圧迫されて(頭蓋内圧亢進)脳がさらに損傷される(二次的損傷)といった具合です。
脳挫傷(局所性脳損傷)の治療では、外傷によって直接的に損傷をうけた脳実質の修復は困難といわれます。
そして、二次性損傷に対して適切に対応することが極めて重要だとされます。
脳内血腫は受傷後24時間前後までに増大することがあるため、CTによる画像診断等によって症状の経過を綿密に観察することになります。
当初は保存的に脳浮腫軽減のための治療が行われますが、血腫や脳浮腫の増大が明白な場合、外科的手術を考慮します。
そのため、事故直後に「大きな異常はない」と言われた場合でも、頭痛や吐き気、意識のもうろう感などが後から現れたときは、速やかに再受診することが重要です。
事故直後の意識障害の有無が重要になる
脳挫傷による後遺障害、特に高次脳機能障害の認定においては、
- 事故直後に意識障害があったかどうか
- あった場合にどの程度の時間続いたか
が重要な判断材料となります。
意識障害が一定時間以上続いた場合には、脳への損傷がより重大であった可能性が高いと評価されやすいためです。
意識障害の程度や継続時間は、救急搬送時の記録やカルテに記載される「JCS(ジャパン・コーマ・スケール)」「GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)」などの意識レベルの評価によって確認されます。
事故直後の記録は後の後遺障害認定において重要な証拠となるため、後遺障害等級申請時には「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書類を作成することが重要です。
完治までの治療費を全額請求できるとは限らない
交通事故により脳挫傷を負ってしまった場合には、多くの場合で事故前の状態に戻ることは難しいです。
急性期以降の治療としては完治を目指すというより、残ってしまった症状(後遺症)とどう付き合いながら日常生活を送っていくかという方向にシフトしていくことになります。
もちろん、継続的なリハビリを行っていく中で若干程度の改善が見られることもあるでしょうが、
賠償実務上はどこかで「症状固定」を迎えることになります。
症状固定とは、一言でいえば「これ以上治療を続けても良くならないと判断される時期」です。
この症状固定を迎えると、これ以上治療を続けても良くならない=後遺症が残ってしまい、完治に至らないということですから、
治療費を支払う必要性がなくなります。
したがって、症状固定以後の治療費を請求することは基本的にはできません。
なお、遷延性意識障害の場合など、治療を継続していないと状態が悪化してしまうと認められるケースでは、
症状固定以後も将来の治療費の請求が認められることがあります。
交通事故で脳挫傷になった場合に対処すべきこと

交通事故で脳挫傷と診断された場合、ご本人だけでなくご家族も含めて、以下のような対応を進めていくことが重要です。
病院で精密検査と治療を受ける
脳挫傷が疑われる場合は、脳神経外科でCTやMRIなどの精密検査を受け、損傷の部位や程度を正確に把握することが必要です。
前述のとおり症状が時間とともに進行することもあるため、経過観察のための通院や検査を継続的に受けることが重要です。
また、高次脳機能障害が疑われる場合には、神経心理学的検査(記憶力・注意力・遂行機能などを評価する検査)を受けておくと、
症状の程度を把握するのに役立ちます。
本人に代わって家族が必要な対応を行う
意識障害や高次脳機能障害により、被害者ご本人が自ら状況を把握したり手続きを進めたりすることが難しい場合、ご家族が代わって次のような対応を行う必要があります。
- 保険会社とのやり取りの窓口になる
- 事故状況や治療経過の記録・整理を行う
- 日常生活での本人の様子の変化を記録しておく(高次脳機能障害の立証資料として重要)
- 各種手続き(成年後見制度の利用検討を含む)を進める
特に高次脳機能障害は、ご本人よりもご家族の方が日常生活での変化に気づきやすい障害です。
「前は問題なくできていたことができなくなった」「性格が変わった」といった具体的なエピソードを日記やメモに残しておくと、後遺障害の立証において有力な資料となります。
できるだけ早い段階で弁護士に相談する
脳挫傷後の後遺障害は、画像上「脳挫傷の所見」が確認できれば、後は残存する後遺障害の程度によって、第1級~第12級に振り分けされます。
自賠責損害調査事務所における後遺障害等級の審査は原則として書面審査であり、書面の内容によって認定される後遺障害等級が大きく変わります。
残存する後遺障害の程度を上手く書面に書いていただくことができず、結果として不適切な後遺障害等級が認定されてしまった、というような事態を避けるためには、
治療期間中から症状の程度をしっかりと主治医に伝えながら進めていくことが重要になります。
適切な後遺障害等級の認定のためには、できるだけ早い治療の段階から、弁護士に相談し、アドバイスを受けながら進めることが重要です。
交通事故による脳挫傷の治療期間の目安

脳挫傷の治療期間は、損傷の程度や部位、年齢、回復力などによって大きく異なるため一概にはいえません。
ただし、多くの交通事故外傷の治療期間の目安が約6か月であるところ、脳挫傷後の高次脳機能障害は、社会復帰などの様子を見ながら判断することもあり、約1年~1年半ほど見ることがあります。
治療期間や症状固定の時期は、主治医の医学的な判断に基づいて決めるべきものであり、
保険会社から治療費打ち切りの打診があったからといって、必ずしもその時点で症状固定としなければならないわけではありません。
高次脳機能障害の診断を受けた場合には、主治医や弁護士と相談しながらしっかりと治療を受けていきましょう。
交通事故で脳挫傷の後遺症が残った場合の後遺障害等級

脳挫傷の後遺症が残った場合、自賠責保険における後遺障害等級の認定を受けることで、
後遺症慰謝料や逸失利益を請求できるようになります。
脳挫傷によって認定されうる主な後遺障害には、以下のようなものがあります。
遷延性意識障害
脳の損傷により、意識が回復しないまま一定期間以上(一般的には3か月以上)が経過した状態を「遷延性意識障害」(いわゆる植物状態)といいます。
自力での移動や食事、意思疎通ができない状態であり、後遺障害等級としては最も重い自賠法施行令別表第一第1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当します。
常時の介護を要する状態として、介護費用を含めた高額の賠償が問題となるケースが多い後遺障害です。
身体性機能障害
脳の損傷により、手足の麻痺や運動障害、感覚障害などの身体的な後遺症が残ることがあります。
麻痺の範囲(四肢麻痺・片麻痺・単麻痺など)や程度(高度・中等度・軽度)に応じて、1級から9級まで幅広い等級が認定される可能性があります。
- 別表第一第1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
- 別表第一第2級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」
- 別表第二第3級3号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」
- 別表第二第5級2号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
- 別表第二第7級4号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
- 別表第二第9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」
外傷性てんかん
自賠責保険が認定対象とする「外傷性てんかん」とは、「脳の損傷によりてんかん発作を起こすもの」と言われます。
外傷性てんかんは、薬物の継続服用によって、発作を完全に抑制することが治療の目標になりますので、
専門の医師の治療によっても医療効果が期待できないと認められた場合、および治療により症状が安定した場合を症状固定時期とします。
てんかんの診断には、脳波所見が重要な意味を持ちます。てんかんを示す異常脳波にはスパイク波(棘波)・鋭波などがあります。
てんかんの診断については、発作の型の特定や脳波検査が重要ですが、MRI、CT等の画像診断は、発作の原因等を判断するのに有用です。
- 別表第二第5級2号「1ヶ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が『意識障害の有無を問わず転倒する発作』または『意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作』(以下『転倒する発作等』といいます。)であるもの」
- 別表第二第7級4号「転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの、または転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの」
- 別表第二第9級10号「数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの、または服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの」
- 別表第二第12級13号「発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの」
- 関連記事:外傷性てんかん|医師監修記事
高次脳機能障害
記憶障害・注意障害・遂行機能障害・性格変化などの高次脳機能障害は、介護の要否や日常生活・就労への支障の程度に応じて、
1級・2級(常時または随時の介護が必要な場合)から、3級・5級・7級・9級(就労等に一定の制限が生じる場合)まで認定される可能性があります。
| 別表第一第1級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」をいい、「身体機能は残存しているが高度の痴ほうがあるために、生活維持に必要な身のまわり動作に全面的介護を要するもの」もこれにあたります。 |
| 別表第一第2級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」をいい、「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」がこれにあてはまります。 |
| 別表第二第3級3号 | 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」をいい、「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」がこれに該当します。 |
| 別表第二第5級2号 | 「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」をいい、「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」がこれに該当します。 |
| 別表第二第7級4号 | 「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」をいい、「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」がこれに該当します。 |
| 別表第二第9級10号 | 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」をいい、「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」がこれに該当します。 |
高次脳機能障害は外見からわかりにくいため、適切な等級認定を受けるためには、
主治医の診断書類はもちろん、日常生活の変化を具体的に示す資料(家族の陳述書など)を丁寧に準備することが重要です。
なお、身体性機能障害と高次脳機能障害の両方が生じている場合は、それぞれの後遺障害による日常生活・就労への影響を総合的に考慮したうえで等級が判断されます。
交通事故で脳挫傷になった場合の必要書類

脳挫傷で適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、次のような書類を漏れなく準備することが重要です。
- 後遺障害診断書:症状固定時の症状や検査結果を医師が記載する、等級認定において最も重要な書類
- 画像所見(CT・MRI等):脳の損傷部位や範囲を客観的に示す資料
- 神経系統の障害に関する医学的意見:身の回り動作や認知・情緒・行動障害などについての医学的意見
- 脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書:麻痺や介護の要否等についても記載
- 頭部外傷後の意識障害についての所見:認定に重要な初診時の意識障害についての記載
- 日常生活状況報告書:高次脳機能障害による生活上の変化を具体的に示す資料
先ほども述べたように、高次脳機能障害の認定は、脳挫傷があるという前提を超えた以降は、
第1級~第12級は残存する症状の程度によって決まります。
主治医にしっかりと日常生活における支障や生活上の変化を分かってもらい、それを診断書等に反映してもらえるよう、
日常生活状況報告書を先に作成しておいてから、それを主治医に見てもらいながら診断書等の作成をしてもらうと良いでしょう。
交通事故による脳挫傷で請求できる慰謝料

交通事故で脳挫傷を負った場合、以下のような慰謝料を請求することができます。
入通院に対する慰謝料(傷害慰謝料)
治療のために入院・通院したことに対する精神的苦痛への賠償です。
入院・通院の期間に応じて金額が算定され、算定基準には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3種類があり、
一般的に弁護士基準がもっとも高額になります。
脳挫傷は入院期間が長期化しやすいため、基準の違いによる金額差も大きくなりやすい傾向があります。
後遺障害に対する慰謝料
後遺障害等級が認定された場合に請求できる慰謝料です。
認定された等級に応じて金額の目安が定められております。
前述のとおり脳挫傷では高次脳機能障害など重い等級が認定される可能性もあるため、金額も高額になりやすい傾向があります。
| 後遺障害等級第1級 | 自賠責基準:1650万円(別表第一) | 弁護士基準:2800万円 |
| 後遺障害等級第2級 | 自賠責基準:1203万円(別表第一) | 弁護士基準:2370万円 |
| 後遺障害等級第3級 | 自賠責基準:861万円 | 弁護士基準:1990万円 |
| 後遺障害等級第4級 | 自賠責基準:737万円 | 弁護士基準:1670万円 |
| 後遺障害等級第5級 | 自賠責基準:618万円 | 弁護士基準:1400万円 |
| 後遺障害等級第6級 | 自賠責基準:512万円 | 弁護士基準:1180万円 |
| 後遺障害等級第7級 | 自賠責基準:419万円 | 弁護士基準:1000万円 |
| 後遺障害等級第8級 | 自賠責基準:331万円 | 弁護士基準:830万円 |
| 後遺障害等級第9級 | 自賠責基準:249万円 | 弁護士基準:690万円 |
| 後遺障害等級第10級 | 自賠責基準:190万円 | 弁護士基準:550万円 |
| 後遺障害等級第11級 | 自賠責基準:136万円 | 弁護士基準:420万円 |
| 後遺障害等級第12級 | 自賠責基準:94万円 | 弁護士基準:290万円 |
| 後遺障害等級第13級 | 自賠責基準:57万円 | 弁護士基準:180万円 |
| 後遺障害等級第14級 | 自賠責基準:32万円 | 弁護士基準:110万円 |
また、後遺障害等級第3級以上に該当するような重篤な後遺障害が残存するようなケースでは、
近親者の方の慰謝料を請求できる場合があります。
被害者が日常生活を大幅に制限されることにより、近親者も精神的苦痛を受けるため、近親者慰謝料を請求できる根拠となります。
最高裁判所昭和33年8月5日判決(民集12巻12号1901頁及び判例時報157号12頁)では、
「死亡の場合でなくとも、死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には、近親者にも慰謝料請求権が認められる」と判示されています。
後遺障害の場合、精神的苦痛の程度により近親者慰謝料の相場も異なります。
具体的には、後遺障害が特に重度(例:後遺障害等級第1級や第2級)である場合には、200万円から800万円程度の慰謝料が認められることもあります。先例に基づいた交渉や訴訟が必要です。
死亡した場合の死亡慰謝料
不幸にも脳挫傷が原因で被害者が亡くなられた場合、死亡慰謝料を請求することができます。
死亡慰謝料は、被害者本人の慰謝料に加え、遺族固有の慰謝料も認められる場合があり、被害者が一家の支柱であったか、配偶者・母親であったかなど家庭内の立場によって金額の目安が変わります。
交通事故による脳挫傷で慰謝料以外に請求できる賠償金

脳挫傷による損害賠償では、慰謝料以外にも次のような費目を請求できる可能性があります。
治療・介護のためにかかる費用
治療費、入院費、手術費、通院交通費のほか、後遺障害により介護が必要になった場合の将来の介護費用も請求の対象になります。
特に遷延性意識障害や重度の高次脳機能障害では、将来にわたる介護費用が高額になるため、賠償額全体に占める割合も大きくなります。
仕事を休んだことによる休業損害
治療のために仕事を休んだことで生じた収入の減少に対する賠償です。
給与所得者だけでなく、自営業者や主婦(主夫)などの家事従事者についても、休業損害が認められる場合があります。
将来の収入減少に対する逸失利益
後遺障害が残ったことにより、将来にわたって労働能力が低下し、収入が減少すると見込まれる場合に請求できる賠償金です。逸失利益は、基本的に次の計算式で算出されます。
- 逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失率は後遺障害等級によって定められており、等級が重いほど高い喪失率(1級であれば100%)が認定される傾向にあります。
高次脳機能障害の場合、身体的な障害は軽くても、認知機能や社会的行動への影響から高い労働能力喪失率が認められることもあります。
死亡事故における葬儀費用
被害者が亡くなられた場合には、葬儀費用についても、原則150万円以内で賠償を請求することができます。
交通事故による脳挫傷の賠償金を適切に受け取るポイント

脳挫傷による適切な賠償を受けるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
事故状況が確認できる証拠を確保しておく
事故状況を示す証拠(ドライブレコーダーの映像、実況見分調書、目撃者の証言など)は、
後の過失割合や損害額の交渉において重要な資料になります。
特に、重篤な後遺障害が残ってしまうようなケースでは、被害者本人の証言を得られないことも多く、客観的証拠は重要です。
事故直後は入院や治療でそれどころではないことも多いですが、可能な範囲で早めに証拠を確保しておくことが望ましいです。
過失割合が正しいかどうかを確認する
過失割合は賠償金額に直接影響する重要な要素です。
保険会社から提示された過失割合が、実際の事故状況に照らして適切かどうかを確認する必要があります。
特に被害者側に一定の過失があると判断されると、過失相殺により賠償額が減額されてしまうため、事故態様を正確に主張立証することが大切です。
適切な後遺障害等級の認定を獲得する
後遺障害等級は、慰謝料や逸失利益の金額に直結する非常に重要な要素です。
特に高次脳機能障害は、実際の症状に比べて低い等級と判断されてしまうケースも見られます。
これを防ぐためには、しっかりと実態を反映した後遺障害診断書等の書類を作成してもらうことが重要になります。
普段の日常生活等で感じた性格の変化などについてメモをとっておき、それをもとに診断書作成をしてもらいましょう。
交通事故による脳挫傷の裁判例・事例

脳挫傷や高次脳機能障害をめぐる交通事故の裁判例では、次のような点がしばしば争点となります。
- 事故と脳挫傷・高次脳機能障害との因果関係の有無
- 自賠責保険の等級認定と裁判所の判断が異なる場合の等級の妥当性
- 事故前の稼働状況や生活状況を踏まえた労働能力喪失率・喪失期間の認定
- 将来介護費用の必要性や金額
特に、高次脳機能障害の場合には、自賠責保険により認定された後遺障害等級を、裁判では下げられてしまうこともままあります。
裁判をすべきなのか、裁判をするとしてどう戦っていくかは、高次脳機能障害を熟知した弁護士に相談することをお勧めします。
弊所では以下のように、裁判にてしっかりと主張したうえで賠償金を獲得した事例や、示談交渉で適切な解決をした事例が複数ございます。
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交通事故の脳挫傷について弁護士に相談するメリット

脳挫傷による後遺障害は専門性が高く、対応を弁護士に依頼することで次のようなメリットがあります。
慰謝料や賠償金の増額が期待できる
保険会社が提示する金額は、多くの場合、弁護士基準よりも低い任意保険基準に基づいています。
弁護士が代理人として交渉することで、弁護士基準に沿った金額での示談や、裁判・訴訟を通じた増額が期待できます。
後遺障害等級の認定に向けたサポートを受けられる
脳挫傷、特に高次脳機能障害は、必要な検査や資料が不足していると適切な等級が認定されないおそれがあります。
弁護士に相談することで、症状固定前の段階からどのような検査や資料が必要かのアドバイスを受けられ、被害者請求による適切な等級獲得のサポートを受けることができます。
保険会社との交渉を任せられる
治療や日常生活の対応で心身ともに負担が大きい中、保険会社との専門的なやり取りを自ら行うことは大きな精神的負担になります。
弁護士に交渉を任せることで、ご本人やご家族は治療やリハビリ、日常生活の立て直しに専念することができます。
交通事故の脳挫傷は専門弁護士にご相談を
交通事故による脳挫傷は、重篤な後遺障害が残ってしまう可能性もあります。
被害者側としては日常生活への復帰に向けて懸命にリハビリを続けながら、適切な賠償金を獲得するための証拠収集も行っていかなければなりません。
専門弁護士に相談することで、適切な証拠収集をサポートしてもらえるので、安心してリハビリを行うことができます。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
交通事故で脳挫傷を負われた被害者の方やそのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士のサポート内容はこちら。
交通事故の脳挫傷に関するよくある質問

脳挫傷を疑うべきサインはありますか?
事故で頭を強く打った後、次のような症状が見られる場合は脳挫傷が疑われるため、すぐに医療機関を受診してください。
- 意識がもうろうとする、一時的に意識を失った
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐
- 手足のしびれや動かしにくさ
- ろれつが回らない、言葉が出てこない
- けいれん発作
- 普段と様子が明らかに異なる(ぼんやりしている、反応が鈍いなど)
事故直後に症状がはっきりしなくても、数時間〜数日かけて症状が現れることがあるため、
頭部を強打した場合は自覚症状がなくても念のため受診しておくことをおすすめします。
脳挫傷で意識不明になっても回復しますか?
意識不明の状態からどの程度回復するかは、
損傷の部位や範囲、意識障害の程度・継続期間、年齢や治療のタイミングなど、さまざまな要因によって異なるため一概にはいえません。
早期に適切な治療を受けることで意識を回復し、社会復帰に至るケースもある一方、遷延性意識障害として長期にわたり意識が回復しない状態が続くケースもあります。
いずれの場合であっても、意識障害の程度や治療経過は後遺障害等級の認定において重要な判断材料となるため、治療の記録をしっかりと残しておくとともに、
早い段階で弁護士に相談し、今後の対応について見通しを持っておくことが大切です。
弁護士