後遺障害等級一般論 骨折 上肢 下肢 神経症状
指の骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
この記事では足部の指(足趾)と手部の指(手指)について整理しています。
自賠責の認定上、指の後遺障害は足指であれば下肢の足指、手指であれば上肢の手指として整理されます。
→下肢の足指、上肢の手指などの分類はこちらの記事をご確認ください。
足の指について
上のイラストは右足を裏側・底面からみたものです。
足は、趾節骨(末節骨、中節骨、基節骨)、中足骨、足根骨からなります。
足にある指については、手偏の「指」ではなく、「足趾(そくし)」や「趾(あしゆび)」と表現することがあります。ご留意ください。
前足部の骨(趾節骨+中足骨)
趾節骨(趾骨)
趾節骨は、母趾(第1趾)、第2趾、第3趾、第4趾、小趾(第5趾)の5本です。
第2趾、第3趾、第4趾、小趾(第5趾)には3趾節(DIP、PIP、MTP関節)、母趾には2趾節(IP、MTP関節)があります。
※下のイラストではMTP関節をMP関節と表記しています。
中足骨
中足骨は足の甲にある骨ですが、こちらも5本あります。
中足部の骨
内側・中間・外側楔状骨(けつじょうこつ)、舟状骨(しゅうじょうこつ)、立方骨(りっぽうこつ)から構成されます。
後足部の骨
立方骨と踵骨からなります。
前足部の骨折について
趾節骨の骨折
打撲などの直達外力によって骨折する場合と、捻挫時などに腱や靱帯によって裂離骨折が生じる場合があります。
→趾節骨の骨折について、原因や症状、検査方法、認定されうる後遺障害等級等はこちらの記事で整理しています。
中足骨の骨折
→中足骨の骨折やその原因、症状や治療法、後遺症等治療についてはこちらの記事をご覧ください。
中足部の骨折について
後足部の骨折について
→立方骨の骨折やその原因、症状や後遺症等についてはこちらの記事で整理しています。
→踵骨の骨折やその原因、症状や治療法、後遺症等についてはこちらの記事で整理しています。
手の指について
上のイラストは右手を甲の方から眺めたものです。
大きくは、指節骨(指骨)、中手骨、手根骨の3部位に分かれます。
指節骨(指骨)
指節骨(指骨)はピンク色で着色されていますが、母指、示指、中指、環指、小指の5本です。示指、中指、環指、小指には3指節(DIP、PIP、MP関節)、母指には2指節(IP、MP関節)があります。
中手指
中手骨は水色で着色された部分で、こちらも5本あります。
手根骨
手根骨は黄色で着色されていますが、大菱形骨(だいりょうけいこつ)、小菱形骨(しょうりょうけいこつ)、有頭骨(ゆうとうこつ)、有鉤骨(ゆうこうこつ)、舟状骨(しゅうじょうこつ)、月状骨(げつじょうこつ)、三角骨(さんかくこつ)、豆状骨(とうじょうこつ)の8つの骨で構成されています。
指節骨(指骨)の骨折
原因
手指は外傷を受けやすい部位で、局所を強打する、硬いものに挟まれるなどの直達外力や、スポーツ外傷(球技、スキー、スノーボードなど)での介達外力で発生します。
症状
手指の痛み、腫脹および変形が見られます。
治療について(標準整形外科学第15版(医学書院)、812頁)
新鮮例には徒手整復が容易であることが多いです。陳旧例や整復困難例に対しては観血的に整復し、鋼線などによる内固定を行います。
関節内骨折に対しては徒手整復を試みますが、整復が不十分である場合は手術療法を選択します。小骨片が関節面に入り込んでいる場合には摘出するか、整復して骨片を内固定します。内固定が困難な場合は、創外固定の併用も考慮します。
認定されうる後遺症
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のものが認定される可能性があります。
神経症状(痛みやしびれ等)
骨折部位に疼痛等の症状が残存した場合です。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害(関節の動かしにくさ)
下記の通り、多くの種類があります。
大まかな区分としては、親指の機能障害の有無、5本ある指のうち何本に機能障害が残存したか、動きにくい関節はどの関節なのか、になります。
おや指では中手指節関節(MP)または指節間関節(IP)、他の四本の指では、中手指節関節(MP)または近位指節間関節(PIP)に著しい運動障害を残すものを、「手指の用を廃したもの」として取り扱います。著しい運動障害を残すものとは、患側の関節可動域が健側の1/2以下になったものをいいます。
また、おや指では、橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の1/2以下になったものも「著しい運動障害を残すもの」として取り扱います。
遠位指節間関節(DIP関節)に関連した後遺障害は14級のみで、親指以外の4本すべて、ということですので認定のハードルは高いです。「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは、遠位指節間関節(DIP関節)が強直したものをいいます。また、屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないものまたはこれに近い状態にあるものもこれに該当します。
別表第二第7級7号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの |
別表第二第8級4号 | 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの |
別表第二第9級13号 | 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの |
別表第二第10級7号 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの |
別表第二第12級10号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの |
別表第二第13級6号 | 1手のこ指の用を廃したもの |
別表第二第14級7号 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
検査方法
X線画像検査は必須です。X線検査で確認しにくい場合、CT画像の撮影について主治医の先生と相談なさることをお勧めします。
また、手指に可動域制限が残存した場合、後遺障害診断書へ可動域の測定値を記載していただくよう主治医の先生にお願いする必要がありますが、手指は5本あり、それぞれ2~3つの関節がありますので、測定部位が多く、単に「指が動かしにくい」と伝えただけでは必要な検査を受けられない可能性があります。異常のある関節についてしっかり測定していただいたか、その記載が正確なのか等、被害者側でも注意することが肝要です。
中手指の骨折
硬いものに挟まれるなどの直達外力や、ボクシング、空手などのスポーツ外傷での介達外力で生じます。
骨幹部横骨折では背側凸変形、骨幹部螺旋骨折では短縮変形、頚部骨折では中手骨頭の掌屈を生じます。
親指の中手指近位部骨折としてベネット骨折とローランド骨折があります。
→中手骨の位置や構造、受傷原因や骨折後の症状はこちらの記事で整理しています。
→中手指骨折後に認定されうる後遺症や検査方法等についてはこちらの記事で整理しています。
→ベネット骨折・ローランドについてはこちらで整理しています。
手根骨の骨折
舟状骨骨折
→手の舟状骨骨折について、受傷原因や症状、治療や後遺障害等、こちらの記事で整理しています。
有鉤骨鉤骨折
有鉤骨の有鉤骨鉤部の骨折です。
手のひらに直接強い力が当たって起こることがあります。野球、ゴルフ、テニスのグリップエンドやバイクのハンドル等のほか、手をついての転倒が原因になりえます。
有鉤骨鉤部の圧痛が生じます。
単純X線検査で診断できないことが多く、有鉤骨鉤に圧痛を認めた場合、CTやMRIの検査が有用だと言われています。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等の足指や手指に骨折を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、損傷の部位や態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。