慰謝料
10対0事故での示談金の相場を交通事故被害者側専門弁護士が解説!
2025.02.22
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 10対0事故の特徴とパターン
- 示談金の相場
- 示談交渉時に注意すべきポイント
- 10対0事故で最大限の示談金を受け取るためのポイント
について解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による示談金無料査定サービスを行っております。
交通事故被害に遭い、ご自身が受け取れる示談金額について疑問をお抱えの方やそのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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10対0事故とは?基本的な理解
過失割合10対0の意味とその特徴
民法では「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定されています(民法第722条2項)。
これを「過失相殺」といい、過失相殺によって定められた被害者及び加害者の過失の割合を「過失割合」といいます。
この「過失割合」は、実務においてはどちらがどの程度の責任を負うべきなのかを具体的に示す指標となります。
たとえば、発生した交通事故について双方の過失割合が9:1であれば、事故の90%が加害者の責任であり、残りの10%が被害者の責任ということになります。
この割合は事故後の損害賠償の基準となるため、非常に重要な役割を果たします。
今回の事故により被害者に生じた損害が1000万円であった場合、被害者の過失が10%となると、この1000万円×10%=100万円は自己過失分ということで相手に請求することができず、
受け取ることができる金額は自己過失分を差し引いた900万円となります。
この過失割合が8:2となると、受け取ることができる金額は800万円となり、発生した損害の大きさは変わらないのに受け取ることができる金額が減少してしまいます。
このように、過失割合は損害賠償金額全体に影響を与えるため、被害者が適正な補償を受けるためにも、正確な過失割合を算出することが必要不可欠なわけですが、
10対0事故というのは事故の100%が加害者側の責任であるということです。
つまり10対0事故の場合、被害者は被害者に発生した損害の全てを加害者に請求することができます。
よくある10対0事故のパターン
10対0事故の例で最も典型的なものは「赤信号待ちの停車中に追突された」という事故類型でしょう。
その他にも対向車がセンターラインをオーバーしてきて衝突したような事案などでは、加害者側の過失が10とされることになります。
動いている者同士で10対0はない?
ところで、交通事故の過失割合はどのような基準を用いて検討するかというと、
東京地裁民事交通訴訟研究会編別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(全訂5版)を基準として判断されることが多いです。
この別冊判例タイムズ38号は、発生した交通事故が全338の類型のどれに当てはまるかという点から基本となる過失割合を定めたうえで、
修正要素を考慮して最終的な過失割合を決定することになります。
ここでのポイントは、基本過失割合=最終的な過失割合ではないということです。
よく交通事故被害に遭った際に、加害者側保険会社担当者から「動いているもの同士で10:0はない」という話をされることがあります。
確かに先ほど見たような追突やセンターラインオーバーなどを除けば、基本過失割合が10:0である類型はそう多くはありません。
しかし、被害者側の過失を小さくする事情や、反対に加害者側の過失を大きくする事情を細かく主張し、修正を加えることで、
最終的な過失割合を10:0にすることが可能です。
弁護士法人小杉法律事務所でも、弁護士の介入により10:0の過失割合を勝ち取った事例が多くございます。
- 関連記事:交通事故過失割合の解決
示談金の仕組みと相場
示談金と慰謝料の違いとは?
示談金と慰謝料は混同されがちですが、これらには明確な違いがあります。
示談金とは、交通事故の被害者と加害者の間で示談が成立する際に支払われる総額のことを指します。
この中には、治療費や休業損害、逸失利益など、事故による損害を補填するための全ての項目が含まれます。
一方、慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償として支払われる金銭のことです。
つまり、慰謝料は示談金に含まれる1つの要素という位置づけです。
10対0事故の被害者は発生した損害すべてに対して示談金満額を受け取ることができます。
10対0事故での示談金の相場
10対0事故の場合は過失相殺による減額を考えなくて良いわけですから、
示談金の相場=発生した損害額の相場です。
交通事故における損害賠償請求実務においては、慰謝料を含む発生したすべての損害の金額が、その損害の程度によって決定されます。
交通事故被害に遭った場合に発生する損害は、
- 治療費や通院交通費、装具費用、将来介護費などの事故に遭ったことで余計に支出せざるを得なくなった積極損害
- 休業損害や逸失利益などの本来得られるはずであったのに事故に遭ったことで得られなくなった消極損害
- 入通院や後遺症により受けた精神的苦痛に対する慰謝料
の3つに大別されます。
順に相場を見ていきましょう。
積極損害
積極損害の原則は、「必要」かつ「相当」な「実費」です。
第一に、事故に遭ったせいで支出を余儀なくされたという必要性が求められます。
また、発生した損害に対して「相当」な出費であったかも重要です。
例えば交通事故で首の怪我をした被害者が、加害者側保険会社の治療費の一括対応に乗じて持病の膝の治療をしたというような場合には、
事故により負った怪我から考えて相当な出費とは言えませんから膝の治療に関する治療費は認められません。
この「必要性」と「相当性」を充足する場合には、実際に要した実費(今後要することになる予定の実費相当)が積極損害として認められ、加害者側に請求することができます。
したがって積極損害を考えるうえでは相場という観点はあまり意味を持たないかもしれません。
消極損害
消極損害は先ほどみたように「休業損害」と「逸失利益」の総称です。
この「休業損害」と「逸失利益」は分かれてはいますが内実はほとんど変わりません。
結局のところ「事故に遭わなければ得られるはずであったのに事故に遭ったことで得られなくなった利益」を指しています。
休業損害は事故~症状固定日まで、逸失利益は症状固定日~就労可能年限までという示談交渉の前後で言い方と計算方法が若干異なっているだけです。
休業損害については、事故前3か月分の総支給額を同じく事故前3か月分の実稼働日数で割って日額を算出し、
その日額を有給休暇を含めた事故により休業せざるを得なくなった日数とかけて算出する方法が一般的です。
加害者側保険会社担当者はこの日額の算出にあたり、事故前3か月分の総支給額を90日で割ることがあります。
そうすると日額が低くなり、連動して休業損害の金額も少なくなるので注意が必要です。
休業損害は被害者の事故前の就労状況などによっても計算方法が変わるため、
詳しくは以下の記事もご覧ください。
- 関連記事:交通事故における休業損害の計算方法を徹底解説!
- 関連記事:交通事故で減収?自営業者が知っておくべき休業損害の計算法
- 関連記事:主婦にも認められる休業損害!その計算方法を詳しく解説
- 関連記事:交通事故でアルバイトを休むときの休業損害とは?
- 関連記事:交通事故で有給休暇を使うと休業損害はどうなる?
- 関連記事:交通事故でボーナス減額?賞与減額証明書の活用法【弁護士解説】
逸失利益についても基本的な考え方は変わらず、
その被害者がどれだけの金額を稼ぐ能力があり、その能力が事故に遭い後遺症が残ってしまったことでどれだけの割合、どれだけの期間失われるかという考え方をします。
その考え方を式に直すと、
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)
となります。
この式に出てくる労働能力喪失率(と一部の場合の労働能力喪失期間)が、認定される後遺障害等級に応じて変動するため、
適切な後遺障害等級の認定を得ることは非常に重要です。
例えば事故前の年収が500万円の40歳男性が交通事故に遭いむち打ち症になり、後遺障害等級第14級9号の認定が下りたとします。
むち打ち症により後遺障害等級第14級9号が認められた場合の労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は5年とされることが多いですから、
この方の逸失利益は、
500万円×5%×4.5797(労働能力喪失期間5年に対応するライプニッツ係数)=114万4925円となります。
一方でむち打ち症にはもう1つ認められる可能性がある後遺障害等級があります。第12級13号です。
第12級13号が認められた場合の労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は10年とされることが多いですから、
この場合のこの方の逸失利益は、
500万円×14%×8.5302(労働能力喪失期間10年に対応するライプニッツ係数)=597万1140円となります。
これを見れば認定される後遺障害等級に応じて金額に大きな差が生じることがお分かりいただけると思います。
適切な後遺障害等級の認定を得ること、そして認定を得た後に適切な計算を行うことについては専門弁護士のサポートを受けることをお勧めします。
慰謝料
慰謝料が最も「相場」という考え方になじみやすいでしょう。
交通事故被害に遭った場合の慰謝料は、被害者が事故前どのような就労状況であったかや、事故後どれだけ治療に費やしたかなどはほとんど考慮されません。
基本的には通院日数と通院期間、そして残ってしまった後遺症の程度に応じて金額が決定されます。
入通院中の苦痛に対して支払われる入通院慰謝料は、原則として入通院期間に応じて決定されます。
例えば、
交通事故で軽度のむち打ち症になり6か月の通院を行った方の入通院慰謝料は、89万円が一つの目安となります。
一方で交通事故で骨折をし、2か月の入院と6か月の通院を行った方の入通院慰謝料は、181万円が一つの目安となります。
入通院慰謝料の計算に当たっては、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター編)に定めのある、
別表Ⅰ及び別表Ⅱをもとに計算することになります。
先ほどの例でむち打ち症となった方の入通院慰謝料の計算に用いたのが別表Ⅱで、
骨折した方の入通院慰謝料の計算に用いたのが別表Ⅰです。
この別表Ⅰと別表Ⅱの使い分けについては、「原則として別表Ⅰを使用する」とされていますが、
むち打ち症で他覚所見のない場合や軽い挫創・打撲などの場合には例外的に別表Ⅱを使用することになっています。
それ以外にも細かなルールもありますので、ご自身の入通院慰謝料の金額の目安を知りたい方はぜひお問い合わせください。
後遺症慰謝料は、残ってしまった後遺症の程度により決定されます。
より具体的には、認定される後遺障害等級に応じて決定されます。
裁判基準(弁護士基準)における後遺障害等級別の後遺症慰謝料の基準は以下のとおりです。
- 後遺障害等級第1級 2800万円
- 後遺障害等級第2級 2370万円
- 後遺障害等級第3級 1990万円
- 後遺障害等級第4級 1670万円
- 後遺障害等級第5級 1400万円
- 後遺障害等級第6級 1180万円
- 後遺障害等級第7級 1000万円
- 後遺障害等級第8級 830万円
- 後遺障害等級第9級 690万円
- 後遺障害等級第10級 550万円
- 後遺障害等級第11級 420万円
- 後遺障害等級第12級 224万円
- 後遺障害等級第13級 180万円
- 後遺障害等級第14級 110万円
これを見るとお分かりいただけると思いますが、認定される後遺障害等級に応じて金額が大きく変動します。
適切な慰謝料を獲得するためには、適切な後遺障害等級の認定を得ることが必須といえます。
示談交渉時に注意すべきポイント
示談交渉の基本的な流れ
10対0の交通事故において示談交渉を進める際は、まず事故の詳細を確認し、適切な示談金や慰謝料を算出することが重要です。
保険会社は被害者との間で示談交渉を進める場合がありますが、提示される金額は必ずしも相場や妥当な補償額に一致しているとは限りません。
一般的な流れとして、事故後の治療が終了したら保険会社と示談内容について交渉を始め、最終的にその条件を示談書で合意する形となります。
示談書にサインをしてしまう前に弁護士基準での計算を行い、妥当な金額かどうかを確認しましょう。
示談書が締結されると、それ以降追加での請求や修正ができる項目は基本的にありません。
そのため、後遺症が発生する可能性がある場合には、後遺障害等級が認定されてから示談を進めるべきです。
また、請求に漏れがないかをしっかり確認しましょう。
10対0事故での保険会社との交渉の注意点
10対0の事故では、被害者側に過失がないため、保険会社は基本的に補償全額を負担する責任があります。
しかし、提示される示談金が相場に届かないケースも多々あります。
それは、ほとんどの場合で加害者側保険会社は自社基準(任意保険会社基準)で計算した金額を提示するため、被害者側から見れば適切でないことが多いからです。
被害者側からみた適切な基準は弁護士基準(裁判基準)であり、この基準で計算を行う必要があります。
また、保険会社は早期解決を目的とする場合が多いため、被害者が適切な治療を行う前に示談を急かされることもあります。焦らず慎重に交渉を進めることがポイントです。
10対0事故で最大限の補償を受ける方法
弁護士基準(裁判基準)を活用して示談金を引き上げる
10対0事故の場合、被害者に過失がないため、賠償金や示談金を最大限に引き上げるためには適切な基準である弁護士基準(裁判基準)を用いることが重要です。
弁護士基準とは、裁判所の判例に基づいて算出される賠償額の基準であり、他の基準である自賠責基準や任意保険基準よりも高額になることが一般的です。
過失割合が争点になる場合の対応策
被害者側からは10対0事故と判断されても、加害者や保険会社側から異議を申し立てられる場合があります。
このようなケースでは、過失割合が争点となり、予期せぬトラブルにつながる可能性があります。
そのため、事故当日の状況を正確に証明できる証拠を集めることが重要です。
例えば、ドライブレコーダーの映像や刑事記録などを揃えることで、過失割合が10対0であることを確認しやすくなります。
また、このような状況では弁護士が間に入ることで、被害者側に不利な主張を排除し、適切な補償を確保する役割を果たします。
適切な対応策を取ることで、被害者に不利益が及ぶことを回避できます。
弁護士に依頼するメリットとタイミング
保険会社との交渉における不安があったり、示談金の提示額が低かったりするような場合には、弁護士への依頼が極めて有用に働くことが多いです。
弁護士は、被害者にとって最も適切な金額である弁護士基準(裁判基準)での計算を行い、適切な示談金を勝ち取るために尽力します。
交通事故被害を専門とする弁護士に相談することで、
- 適切な基準での示談金の計算
- 漏れのない請求
- 加害者側保険会社との交渉を一任
等が可能になります。
弁護士に依頼するタイミングとしては、費用との兼ね合いが大きいです。
事故直後の早期から弁護士に依頼した場合には、事故処理や治療中などのアドバイスを受けることができ、
事故後の不安を和らげることが可能になるでしょう。
一方で、時間制報酬を採用しているような弁護士に依頼するような場合には、早期から弁護士に依頼した場合は費用が大きくかかってしまいます。
また、事故直後は後遺症が残ってしまうと思い弁護士に依頼したものの、想定より治療の効果が大きくすぐに治ってしまったというような場合には、
弁護士に依頼したことにより増額した金額よりも弁護士費用が高くついてしまうというリスクもあります。
治療が終了し、後遺障害等級が確定し、加害者側保険会社から示談金額の提示が来てからの相談の方が、
弁護士の交渉により増額が期待できる金額をより正確に算定することが可能になります。
ではこのタイミングでの相談がベストかというと、
治療中や後遺障害診断書の作成までに弁護士のアドバイスを受けていれば後遺障害等級の認定を獲得できたかもしれないが、
適切なアドバイスやサポートを受けることができずに後遺障害等級を獲得できず、示談金額が低くなってしまうこともあり得ます。
結局のところ、弁護士に依頼するベストなタイミングは、
発生した怪我の部位や程度など様々な要因で変わってしまうものです。
ですから、ご自身の被害についていつ弁護士に依頼すべきかは、実際に無料相談を受けてみて、直接弁護士に訊いてみるのが良いでしょう。
また、弁護士費用特約が付帯されている保険に加入している場合には費用面の負担を考慮する必要性が小さくなるため、早期から弁護士に依頼した方がメリットが大きくなります。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
10対0事故でご自身が受け取れる示談金額に疑問をお抱えの方や、弁護士に依頼するタイミングについてお困りの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。