交通事故コラム

自転車事故

自転車事故の賠償金はいくら?金額相場や内訳・払えない場合の対処法について解説

2026.09.18

自転車事故

自転車は免許を必要とせず、子どもから高齢者まで気軽に利用できる乗り物ですが、

道路交通法上は「車両」として扱われます。そのため、自転車で人に怪我をさせてしまえば、自動車事故と同様に損害賠償責任を負うことになり、

過去には9,500万円を超える賠償を命じられた裁判例も存在します。

 

一方で、自転車には自動車の自賠責保険のような強制保険がないため、「相手が無保険で賠償金を払ってもらえない」といった、自転車事故に特有の問題も生じやすくなっています。

本記事では、

  • 自転車事故の賠償金の内訳
  • 自転車事故の賠償金の相場
  • 自転車事故の賠償金の算定基準
  • 過失割合との関係
  • 相手が無保険で払えない場合の対処法

 

等について、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、被害者側の立場から解説します。

 

交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。

自転車事故の被害に遭い、お困りごとをお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

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目次
  1. 自転車事故の賠償金とは
  2. 自転車事故の賠償金の内訳
    1. 治療費などの積極損害
    2. 休業損害や逸失利益などの消極損害
    3. 精神的な苦痛に対して支払われる慰謝料
  3. 自転車事故の賠償金の相場
    1. 入通院に対する慰謝料の相場
    2. 後遺障害が残った場合の慰謝料相場
    3. 死亡事故の場合の慰謝料相場
  4. 自転車事故で賠償金が高額になった事例
  5. 自転車事故の賠償金を計算する際の算定基準
    1. 自賠責保険の基準
    2. 任意保険会社の基準
    3. 弁護士基準(裁判所基準)
  6. 自転車事故の賠償金と過失割合の関係
  7. 自転車事故特有の問題点
    1. 相手が自転車の場合は自賠責保険がない
    2. 後遺障害等級の認定を受けられない場合がある
    3. 自転車事故は過失割合をめぐって争いになりやすい
  8. 自転車事故で賠償金を受け取るまでの流れ
  9. 自転車事故の賠償金を請求できる期限・時効
  10. 自転車事故で賠償金を請求するときのポイント
    1. 途中で治療をやめずに最後まで通院する
    2. 後遺症が残った場合は等級認定の申請を行う
    3. 増額できる損害項目がないか確認する
  11. 自転車事故の賠償金を請求するときの注意点
    1. 加害者が未成年であるケースも多い
    2. 事故状況の証拠を残しておく
    3. 示談がまとまったら示談書を作成する
  12. 相手が無保険で賠償金を払えない場合の対処法
    1. 被害者自身が加入している保険を使う
    2. TSマーク付帯保険から補償を受ける
    3. 通勤中の事故なら労災保険を使う
  13. まとめ
  14. 自転車事故の賠償金に関するよくある質問
    1. 小5の自転車事故で9,500万円の賠償を命じられたのは誰ですか?
    2. 相手が逃げてしまった場合はどうすればいいですか?
    3. 双方とも保険に入っていない場合はどうなりますか?

自転車事故の賠償金とは

自転車事故を起こして相手に怪我をさせた場合、加害者は大きく2つの責任を負う可能性があります。

 

民事上の責任(損害賠償責任)

被害者に与えた損害を金銭で賠償する責任

刑事上の責任

重過失致死傷罪などにより刑罰を受ける可能性がある責任

 

このうち、被害者が加害者に対して請求できるのが「民事上の損害賠償責任」に基づく賠償金です。

後ほどご説明いたしますが、自転車事故の被害に遭うと、治療費や、通院交通費などの出費だけでなく、休業損害が発生したり、将来にわたって働きにくさが残ってしまったり、精神的苦痛を受けたりといった、

様々な損害が発生します。

 

これらの損害を金銭で換算し、請求するのが損害賠償請求ということになります。

 

自転車事故の賠償金は、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求として、事故によって生じた損害の実額を請求していくことになります。

 

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

ちなみに、「慰謝料」と「賠償金」「示談金」は混同されやすい言葉ですが、それぞれ意味が異なります。

 

慰謝料

事故によって生じた精神的苦痛に対する賠償

賠償金

慰謝料を含み、事故によって生じた損害全体の総額

 

上のとおり、慰謝料というのは精神的苦痛に対して支払われる、賠償金の中の1つの費目であり、

損害賠償金というのは慰謝料をはじめとする事故によって生じた損害全体を指します。

 

ちなみに、「示談金」というのは、賠償金と内実はほとんど変わりませんが、当事者間の話し合い(示談交渉)で解決した場合に支払われる賠償金を指します。

裁判上の和解や判決で支払うとなった場合には、示談金とは言いません。

 

 

自転車事故の賠償金の内訳

裁判

自転車事故の賠償金は、大きく

  • 積極損害
  • 消極損害
  • 慰謝料

の3つに分けて整理することができます。

順に見ていきましょう。

 

治療費などの積極損害

積極損害とは、事故に遭ってしまったことで余計に支出することになった費用のことです。

例をみると分かりやすいので見てみましょう。

 

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 入院雑費
  • 付添費
  • 装具費(車いす、義足など)
  • 将来介護費(重度の後遺障害が残った場合)
  • 家屋・自動車改造費
  • 葬儀関係費用(死亡事故の場合)

 

積極損害の大原則は、「必要かつ相当」な実費です。

 

例えば足の骨折をして松葉杖がないと歩けない方が通院に当たりタクシーを利用することは必要かつ相当であると言えますが、

むち打ち症になって治療を続けて半年近くたっている方がタクシーを利用するのは、必要とまでは言えない場合がほとんどでしょう。

 

怪我の内容や症状の程度、なぜその出費が必要なのかということを細かく立証していくことが、積極損害について適切な金額を認めさせるためには有効です。

 

 

休業損害や逸失利益などの消極損害

消極損害とは、事故がなければ得られたはずの収入を失ったことによる損害です。

  • 休業損害:治療のために仕事を休んだことにより収入が減少することによる損害
  • 後遺症逸失利益:後遺障害により労働能力が低下し、将来の収入が減少することによる損害
  • 死亡逸失利益:被害者が亡くなったことにより、生涯にわたって得られたはずの収入を失ったことによる損害

 

消極損害は、事故に遭わなかった世界線との差額がその金額となります。

したがって、積極損害と比較するとどうしても厳密な算定というのが難しくなります。

 

その中でもしっかりと、症状が残ってしまったことで日常生活や労働にどのような支障が生じているのかを示す必要があります。

 

なお、休業損害や逸失利益については、事故当時家事従事者であった方や、無職であった方も請求可能な場合があります。

 

 

精神的な苦痛に対して支払われる慰謝料

慰謝料は、事故によって受けた精神的苦痛に対する賠償です。

 

民法710条

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

ここでいう財産以外の損害が、精神的損害であり、これに対する賠償が慰謝料というわけです。

 

慰謝料には基本的に3つの種類があります。

 

  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料):ケガの治療で入院・通院したことに対する慰謝料
  • 後遺症慰謝料:治療を続けても回復しない後遺症が残ったことに対する慰謝料
  • 死亡慰謝料:被害者が亡くなったことに対する、本人および遺族の慰謝料

 

慰謝料は算定に用いる基準によって大きく金額が変わるため、弁護士に相談することが重要となります。

 

 

自転車事故の賠償金の相場

自転車事故の賠償金は、怪我の程度によって大きく変わります。

全体の目安としては、次のようなイメージになります。

 

軽傷の場合・後遺症が残らない場合 数十万円~100万円程度
14級に該当するような後遺症が残るような場合 100万円~300万円程度
14級を超える後遺症が残るような場合 300万円~数千万円程度
死亡の場合・1級~2級のような重篤な後遺症が残るような場合 数千万円~1億円超

 

このように、怪我の内容(とりわけ後遺症の程度)が、賠償金額に大きく影響を与えます。

 

積極損害は必要になる治療等によって大きく金額が変わりますし、消極損害もその被害者の方の事故前のご収入等によって影響を受けますから、

相場をはっきりと示すことは難しいです。

 

ただし、慰謝料についてはある程度相場観がはっきりしているので、次に見ていきましょう。

 

入通院に対する慰謝料の相場

入通院慰謝料は、入院・通院の期間の長さに応じて算定されます。

弁護士基準(後述)では、重傷の場合と、他覚所見のない打撲・捻挫などの軽傷の場合とで別の基準が用いられており、

おおよその目安は次のとおりです。

 

入通院期間1か月(実通院日数8日間)の場合 28万円(軽傷の場合19万円)
入通院期間2か月(実通院日数16日間)の場合 52万円(軽傷の場合36万円)
入通院期間3か月(実通院日数24日間)の場合 73万円(軽傷の場合53万円)
入通院期間4か月(実通院日数32日間)の場合 90万円(軽傷の場合67万円)
入通院期間5か月(実通院日数40日間)の場合 105万円(軽傷の場合79万円)
入通院期間6か月(実通院日数48日間)の場合 116万円(軽傷の場合89万円)

 

これをみると、入通院の期間が長ければ長いほど慰謝料額が高くなりそうです。

事実そうなのですが、だからといって医師がこれ以上治療をする必要がないと判断して以降も、徒に通院期間を伸ばして慰謝料を高くするために通院を続けたとしても、

その部分の通院については慰謝料の算定期間に含まれないということになります。

 

逆に、医師がまだ治療を続けるべきだと判断しているのに、保険会社側が治療費の対応を打ち切ってきて、それに合わせて治療を終了してしまうと、

本来受け取れるはずだった慰謝料が受け取れないということになりかねません。

 

治療期間は適切に、場合によっては主治医や弁護士と相談しながら決めることが重要です。

 

 

後遺障害が残った場合の慰謝料相場

自転車事故による怪我についての治療をしばらく続けていると、これ以上治療を続けても良くならないと判断される状態に達することがあります。

これを症状固定と呼び、この時点で残っている症状を後遺症と言います。

 

この後遺症が残ってしまったことによって生じる損害(後遺症逸失利益)や精神的苦痛(後遺症慰謝料)については、

残ってしまった後遺症が、後遺障害等級のどれに当てはまるかということで金額が決められるのが一般的です。

 

後遺障害等級は第1級~第14級まであり、上から、重い後遺症が残っていると認められたということになります。

 

各後遺障害等級に該当した場合の後遺症慰謝料の相場は以下のとおりです。

第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

 

 

なお、後述のとおり、加害者が自転車の場合は自賠責保険による後遺障害等級の認定手続きを基本的には利用できないため、

自分に残ってしまった後遺症が、後遺障害等級のどれに当てはまるかを自分で主張・立証する必要があります。

 

死亡事故の場合の慰謝料相場

被害者が亡くなられた場合の死亡慰謝料は、被害者の家庭内での立場に応じて、弁護士基準では次のような目安が示されています(近親者固有の慰謝料を含む目安です)。

 

死亡したご本人が一家の支柱と評価される場合 2800万円
死亡したご本人が、母親・配偶者と評価される場合 2500万円
死亡したご本人がその他(独身の男女・子供・幼児等)と評価される場合 2000万円~2500万円

 

このように、弁護士基準における死亡慰謝料の計算は、死亡したご本人がご家族にとってどのような存在であったかによって変わります。

 

自転車事故で賠償金が高額になった事例

「自転車だから賠償額も小さいだろう」と考えられがちですが、実際には自動車事故に匹敵する高額賠償が命じられた例は数多くあります。

なぜなら、加害者が自転車だろうが自動車だろうが、先ほどまで見てきたように賠償金額は発生した怪我の程度などで決まるからです。

 

具体的にいくつか例を挙げて見ていきましょう。

 

神戸地方裁判所 平成25年7月4日判決(交通事故民事裁判例集46巻4号883頁)

当時11歳(小学5年生)の男児が、坂道をある程度の速さの自転車で走行中に、当時62歳の女性と正面衝突してしまい、

女性がいわゆる植物状態となってしまった事故につき、後遺症慰謝料2800万円、後遺症逸失利益2200万円弱、将来介護費4000万円弱など、

合計で9800万円の賠償責任があると認められました。

 

東京地方裁判所平成20年6月5日判決(自動車保険ジャーナル1748号2頁)

車道を自転車で直進していた当時24歳の男性が、歩道から同じく自転車で進入してきた高校生と衝突し、言語機能の喪失や、右上下肢の機能の全廃などの障害が残ってしまった事故につき、

後遺症慰謝料2800万円、後遺症逸失利益9500万円、将来介護費2700万円、など、1億6000万円あまりの損害の発生が認められております(被害者側の過失が50%あると判断され、賠償責任があるとされたのは8200万円弱)。

 

東京地方裁判所 平成19年4月11判決

男性が日中、信号を無視して自転車で高速で交差点に進入したところ、青信号で横断歩道を歩行中の女性(55歳)と衝突し、女性は頭蓋骨骨折などにより11日後に死亡したという事故につき、

5400万円あまりの賠償責任が認められております。

 

自転車事故と自動車事故とでは、その質量や速度などから、自動車事故の方が被害者に重大な損害が発生しやすいことは事実です。

とはいえ、実際に発生してしまった損害の大きさは、自転車事故でも自動車事故でも変わりありません。

 

自転車運転者としては、事故を起こさないように気を付けること、被害者側としては、発生してしまった損害の適切な賠償を求めることが重要となります。

 

自転車事故の賠償金を計算する際の算定基準

交通事故の慰謝料には3つの算定基準があり、どの基準で計算するかによって金額が大きく変わります。

 

自賠責保険の基準

自賠責保険は、自動車やバイク(原付を含む)に加入が義務づけられている強制保険であり、被害者に対する最低限の補償を行うための基準です。

自賠責基準では、入通院慰謝料は1日あたり4,300円を基準に、実際の治療期間や通院日数をもとに計算されます。

 

ただし、加害者が自転車の場合、自賠責保険への加入はありません。

自賠責基準に基づいた損害の計算はできても、自賠責保険からの支払を受けることはできません。

 

自転車事故の場合は、加害者側が何らの保険も加入しておらず、被害者が最低限の補償さえ受けられないという可能性が存在します。

 

 

任意保険会社の基準

任意保険会社が独自に設定している基準です。各社非公開ですが、一般的に自賠責基準よりはやや高く、弁護士基準よりは低い水準とされています。

 

加害者が個人賠償責任保険や自転車保険に加入している場合、

保険会社から提示される金額は、この任意保険基準に基づいていることがほとんどです。

 

 

弁護士基準(裁判所基準)

過去の裁判例の集積に基づく基準で、3つの基準の中で最も高額になります。

前掲の相場表もこの弁護士基準に基づくものです。

 

重要なのは、弁護士基準は、弁護士が代理人として交渉したり、裁判で主張したりして初めて適用される基準であるという点です。

被害者本人が交渉しても、保険会社は基本的に任意保険基準を前提とした提示にとどまることが多いため、

適正な賠償を受けるためには弁護士への相談が重要です。

 

自転車事故の賠償金と過失割合の関係

過失割合とは、事故が発生した責任が当事者双方にどの程度あるかを示す割合です。

被害者側にも一定の過失があると判断された場合、その割合分だけ賠償金が減額されます。これを「過失相殺」といいます。

 

たとえば、損害の総額が1,000万円で、被害者側に2割の過失があると判断された場合、

実際に受け取れる賠償金は800万円となります。このように、過失割合は賠償金額に直接影響を与えます。

 

また、2023年4月の道路交通法改正により、自転車利用者のヘルメット着用が努力義務となりました。

 

例えば被害者がヘルメットを着用せず自転車を運転していた際に事故に遭い、頭部を打ち付けて重篤な高次脳機能障害が残ってしまったという場合に、

加害者側から「ヘルメットを着けていれば、より軽い障害が残るだけで済んだ」という主張がされる可能性があります。

 

この場合、被害者側の過失により損害が拡大したということで、一部過失相殺をされる可能性が生じます。

自分の身を守るためにも、適切な賠償を受けるためにも、ヘルメットの着用は重要です。

 

 

自転車事故特有の問題点

ここまで見てきたような、賠償金の計算方法や、過失割合という考え方などは、交通事故である以上自動車事故とも共通する話です。

しかしながら、自転車事故には自転車事故特有の問題点がいくつかあります。

 

相手が自転車の場合は自賠責保険がない

自動車やバイクには自賠責保険への加入が義務づけられていますが、自転車にはそのような強制保険がありません。

 

近年は自治体の条例によって自転車保険への加入を義務化する地域が増えていますが、

条例違反に対する罰則が設けられていないことも多く、実際には無保険で自転車に乗っている人も少なくありません。

 

そのため、加害者が自転車の場合、加害者本人に資力がなければ賠償金を回収できないおそれがあります。

 

後遺障害等級の認定を受けられない場合がある

自動車事故では、損害保険料率算出機構(自賠責調査事務所)という中立的な機関が後遺障害等級の認定を行います。

しかし、加害者が自転車の場合は自賠責保険がないため、この等級認定手続きを利用することができません。

 

そのため、後遺症が残っても自動的に等級が認定されるわけではなく、

被害者側で医証(診断書、画像所見、検査結果など)を揃え、「自賠責保険の等級基準に照らせば〇級に相当する後遺障害である」と主張・立証していく必要があります。

この立証には専門的な知識が必要であり、弁護士のサポートが特に重要になる場面です。

 

なお、加害者側が個人賠償責任保険に加入している場合や、被害者側が人身傷害保険に加入している場合には、

保険会社内部の顧問医に相談し、保険会社の中での後遺障害等級を定めてくれたり、自賠責損害調査事務所への調査の依頼をしてくれたりする場合があります。

 

ある程度の目安をつけることができるようになりますから、保険会社担当者と相談し、積極的に活用してみることをお勧めします。

 

自転車事故は過失割合をめぐって争いになりやすい

自動車同士の事故では、過去の裁判例の集積により、事故類型ごとの過失割合の基準がある程度確立しています。

しかし、自転車同士の事故や自転車と歩行者の事故については、類型化された基準が自動車事故ほど整備されていないケースもあります。

 

裁判所・弁護士・保険会社など交通事故の損害賠償請求実務にかかわるすべての人間が、過失割合を考えるうえで前提としていると言ってよい、

別冊判例タイムズ39号 民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準』(判例タイムズ社)では、

2026年3月30日発売の全訂6版で初めて「自転車対自転車」の過失割合の類型が示されました。

 

それまで裁判例の集積が少なく類型化できていなかったということになりますから、

これから実際に運用されていく中でまた変更などがある可能性があります。

 

加えて、自転車事故では次のような事情から、事故状況の立証そのものが難しくなりがちです。

  • ドライブレコーダーが搭載されていないことが多い
  • 双方の主張が食い違ったまま、客観的な証拠が乏しい状態になりやすい
  • 加害者が未成年者である場合は捜査記録の入手が困難

目撃者からの情報を残しておいたり、入手できる場合には警察の捜査記録を入手したりして、

客観的に事故状況を示す証拠を入手するよう努める必要があります。

 

 

自転車事故で賠償金を受け取るまでの流れ

自転車事故の発生から賠償金を受け取るまでの一般的な流れは、次のとおりです。

  • 事故直後の対応:警察へ通報し、事故の届け出を行う(人身事故の場合は「交通事故証明書」の発行を受けられるようにしておく)。相手の氏名・連絡先・保険加入状況を確認する
  • 証拠の確保:事故現場の写真撮影、目撃者の連絡先の確保、ドライブレコーダーや防犯カメラ映像の有無の確認
  • 医療機関の受診:痛みが軽微でも必ず受診し、事故との関連を診断書に残してもらう
  • 治療の継続:完治または症状固定まで、医師の指示に従って通院を継続する
  • 後遺障害の立証(後遺症が残った場合):後遺障害診断書や各種検査結果を取得し、等級相当性を主張できる資料を揃える
  • 損害額の算定:治療費、休業損害、慰謝料など、すべての損害項目を積み上げて請求額を算定する
  • 示談交渉:加害者本人または加害者が加入する保険会社と交渉する
  • 示談成立・賠償金の支払い:合意が成立したら示談書を作成し、賠償金が支払われる
  • 訴訟:交渉で合意に至らない場合は、訴訟等による解決を図る

 

自転車事故の賠償金を請求できる期限・時効

損害賠償請求権には時効があり、期間が経過すると請求できなくなってしまいます。

 

  • 人身損害(被害者の怪我・死亡による損害)については、事故発生日から5年
  • 物的損害については、事故発生日から3年

で時効が完成してしまいます。

 

大きな怪我を負い、治療期間が長期にわたるケースでは、時効を徒過してしまうリスクもありますので、

  • 加害者側と時効更新についての合意を取り交わす
  • 催告を行い提訴する

などの方法をとりましょう。弁護士に相談することもお勧めです。

 

 

自転車事故で賠償金を請求するときのポイント

医師面談

適正な賠償金を受け取るためには、次の3点を意識することが重要になります。

 

途中で治療をやめずに最後まで通院する

痛みが残っているにもかかわらず自己判断で通院をやめてしまうと、

入通院慰謝料が本来よりも低く算定されるだけでなく、

「症状が軽かった」「事故との関連性が乏しい」と評価され、後遺障害の立証も難しくなってしまいます。

 

完治または症状固定と医師が判断するまで、指示に従って通院を継続することが大切です。

 

後遺症が残った場合は等級認定の申請を行う

加害者が自動車・バイクの場合は、自賠責保険を通じた後遺障害等級認定の申請を行います。

加害者が自転車の場合は、前述のとおり等級認定手続きを利用できないため、自賠責の認定基準を踏まえた医証を自ら揃え、相当する等級を主張していく必要があります。

 

いずれの場合も、必要な検査を受け、後遺障害診断書に症状を適切に記載してもらうことが重要です。

 

なお、先ほども述べたように個人賠償責任保険や人身傷害保険内部でも等級の認定をしてくれるケースもあります。

 

増額できる損害項目がないか確認する

自転車事故により生じる損害項目は、

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 入院雑費
  • 装具費用
  • 将来介護費
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 慰謝料

など多岐にわたります。

そして各損害項目について、どのような場合にいくら認められるのかというこれまでの裁判例の集積とそれに基づく基準があります。

 

増額できるということは、その時点の計算では「漏れていた」ということです。

増額というのは本来の計算以上にもらうことではなく、本来もらえるはずだった賠償金を獲得するためのものです。

もらえるはずの賠償金をもらえないということがないよう、専門弁護士に相談しましょう。

 

自転車事故の賠償金を請求するときの注意点

後遺障害等級

加害者が未成年であるケースも多い

自転車というのは、運転免許を取得しなくても運転が可能であるという特性上、加害者が未成年であるケースも多いです。

 

未成年者は基本的には無資力ですし、単独で法律行為を行うことができませんから、損害賠償金は親に請求していくことになります。

 

また、加害者が未成年者である場合、警察の捜査では少年事件という扱いになります。

少年事件の記録の取り扱いは非常に厳しく、過失割合の争いの上で有益になる刑事記録の入手が困難なことがあります。

 

事故状況の証拠を残しておく

自転車事故では、警察による詳細な調査が行われないことも多く、時間が経つほど事故状況の立証が難しくなります。

次のような証拠は、できるだけ早い段階で確保しておくことが重要です。

 

  • 事故現場・自転車の破損状況の写真
  • 目撃者の氏名・連絡先
  • 付近の防犯カメラやドライブレコーダーの映像
  • 事故直後のやり取りの記録(メール、メッセージアプリの履歴など)

 

特に防犯カメラ映像やドライブレコーダーの映像などは事故後から2週間などで消えてしまうことがほどんどなので、

事故直後から入手に向けて動くことが重要です。

示談がまとまったら示談書を作成する

加害者側に保険がなく、加害者本人との間で示談が成立した場合は、必ず書面で示談書を作成しましょう。

口約束だけでは、後から「そんな約束はしていない」と支払いを拒まれるおそれがあります。

 

示談書には、次の内容を明記しておくことが重要です。

  • 当事者・事故の特定(日時、場所、事故内容)
  • 賠償金の金額、支払方法、支払期限
  • 分割払いの場合の期限の利益喪失条項
  • 清算条項(この示談で解決とすること)
  • (必要に応じて後遺障害に関する留保条項)

なお、加害者が未成年の場合は、親権者を当事者として示談書を作成する必要があります。

示談書がきちんと効力を持つかどうかについては、弁護士に相談することをお勧めします。

 

相手が無保険で賠償金を払えない場合の対処法

加害者が無保険で資力もない場合、加害者本人からの回収は困難になることがあります。

このような場合には、被害者側から対処を行う必要があります。

 

被害者自身が加入している保険を使う

ご自身やご家族が加入している保険の中に、使えるものがないか確認してみましょう。

  • 人身傷害補償保険:自動車保険の特約として加入している場合、契約内容によっては歩行中や自転車乗車中の事故もカバーされることがあります
  • 傷害保険・医療保険:ケガの治療について給付を受けられる場合があります
  • 自転車保険・個人賠償責任保険:ご自身が加入している場合、ご自身のケガの補償が付いていることがあります

 

保険証券を確認し、使える補償がないか保険会社に問い合わせてみることをおすすめします。

 

なお、自転車事故の場合であっても、自動車保険や火災保険、地震保険などに付帯がある弁護士費用特約が利用できる場合があります。

弁護士費用特約を利用すれば、自己負担なく弁護士に依頼することができる場合がほとんどですので、一度調べてみましょう。

 

TSマーク付帯保険から補償を受ける

TSマークとは、自転車安全整備士による点検整備を受けた自転車に貼付されるシールで、賠償責任補償と傷害補償が付帯しています。

 

加害者の自転車に有効期間内(点検日から1年間)のTSマークが貼られていれば、この保険から補償を受けられる可能性があります。

 

TSマークには、

  • 緑色
  • 赤色
  • 青色

の3色があり、それぞれで賠償の対象が変わります。

 

緑色TSマーク 死亡・傷害(示談交渉サービス付き) 限度額1億円
赤色TSマーク 死亡・重度後遺障害(1~7級) 限度額1億円
青色TSマーク 死亡・重度後遺障害(1~7級) 限度額1000万円

 

青色・赤色のマークは、賠償責任補償の対象が死亡または重度後遺障害(1〜7級)に限られるため、軽傷の場合は対象外となる点に注意が必要です。

加害者の自転車にTSマークが貼られているかどうか、それが何色なのかは事故直後に確認しておくとよいでしょう。

 

通勤中の事故なら労災保険を使う

通勤中や業務中に自転車事故に遭った場合、労災保険(通勤災害・業務災害)を利用して治療費や休業補償の給付を受けられる可能性があります。

労災保険は加害者の保険加入状況にかかわらず利用できるため、相手が無保険の場合には極めて有力な選択肢となります。

 

まとめ

自転車事故は「軽微な事故」と思われがちですが、被害者に重い後遺障害が残ったり死亡に至ったりした場合、賠償金は1億円以上になることもあります。

 

一方で、自転車には自賠責保険がないため、後遺障害等級の認定手続きを利用できず、相手が無保険で回収が難しいといった、自転車事故特有の難しさもあります。

適正な賠償金を受け取るためには、最後まで通院を継続すること、事故状況の証拠を早期に確保すること、弁護士基準での計算を求めることが重要です。

 

交通事故被害を専門とする弁護士に相談し、早期からアドバイスを受けることが、少しでも被害回復を図る近道になるでしょう。

 

交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門としている弁護士による無料相談を実施しております。

自転車事故に遭い、お困りごとをお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

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自転車事故の賠償金に関するよくある質問

小5の自転車事故で9,500万円の賠償を命じられたのは誰ですか?

加害者となった男児本人ではなく、監督責任を問われたその母親です。

平成20年に神戸市内で、夜間に坂道を下っていた小学5年生の男児(当時11歳)の自転車が歩行中の女性(62歳)と正面衝突し、女性は意識が戻らない状態となりました。

 

神戸地方裁判所は平成25年7月4日、男児の母親に対して9,521万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

 

判決では、男児がヘルメットを着用していなかったことなどから、母親が十分な指導・注意をしていたとは認められず、監督義務を果たしていなかったと判断されています。

この事例は、子どもの自転車事故であっても親が高額の賠償責任を負う可能性を示した判例として広く知られています。

 

相手が逃げてしまった場合はどうすればいいですか?

まずはすぐに警察へ通報してください。人身事故の場合、加害者が現場から立ち去る行為は救護義務違反(ひき逃げ)にあたる可能性があり、警察による捜査の対象となります。

あわせて、

  • 目撃者の氏名・連絡先を確保する
  • 現場周辺の防犯カメラの有無を確認する(映像の保存期間は短いため急ぐ必要があります)
  • 覚えている範囲で相手の特徴(服装、自転車の色や形状、逃走方向など)をメモに残す

などの対応をし、相手が見つかるように少しでも証拠を残しておきましょう。

 

仮に加害者が特定できないまま治療を続ける場合は、ご自身が加入している人身傷害補償保険や、通勤中であれば労災保険の利用を検討することになります。

 

双方とも保険に入っていない場合はどうなりますか?

双方が無保険の場合、原則として当事者間の話し合いによって解決を図り、加害者本人が自らの資産から賠償金を支払うことになります。

ただし、加害者に十分な資力がない場合、示談で高額の賠償金を約束しても、実際には回収できないおそれがあります。

 

そのような場合には、次のような選択肢を検討することになります。

  • 加害者の資力に応じた分割払いの合意(公正証書にしておくと強制執行しやすくなります)
  • 加害者が未成年の場合、親に対する請求を検討する
  • 自転車に有効なTSマークが貼られていないか確認する
  • 通勤中の事故であれば労災保険を利用する
  • 訴訟を提起して判決を得たうえで、給与債権などに対する強制執行を検討する

回収の見込みや取るべき手段は、加害者の資力や事故の内容によって大きく異なります。

見通しを立てるためにも、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。