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千葉・国道357号で同乗の友人3人死亡 19歳運転手に危険運転致死傷罪の適用は【弁護士解説】

2026.10.14

損害賠償請求

交通事故 死亡事故 死亡慰謝料 被害者参加 逸失利益

2026年9月29日の未明、千葉市中央区蘇我の国道357号で、乗用車が対向車線の中型トラックと衝突して炎上し、乗用車に乗っていた18歳から20歳の男女3人が亡くなりました。

 

乗用車を運転していた19歳男性は、入院先を退院した10月12日に過失運転致死傷の疑いで逮捕されました。

一方で警察は、事故直前に制御できないほどの速度で走っていた可能性があるとして、より重い危険運転致死傷罪の適用も視野に捜査を続けていると報じられています

(朝日新聞「乗用車を運転の19歳の男を逮捕 同乗の3人死亡事故で、千葉県警」)。

 

亡くなった3人は、運転手の友人として同じ車に乗っていた同乗者でした。

「同乗者」であること、そして運転手が「19歳(特定少年)」であることは、刑事・民事の両面で、この事故に特有の論点を生みます。

 

このページでは、交通死亡事故被害を専門とする弁護士法人小杉法律事務所の弁護士大澤健人が

  • 危険運転致死傷罪への切替えはあり得るのか(7月21日施行の改正法との関係)
  • 運転手が19歳であることで、刑事手続はどう変わるのか
  • 同乗中に亡くなった方のご遺族の損害賠償請求で、何が問題になるのか

について、条文と裁判例に即して整理して解説します。

 

この記事でわかること

  • 過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪の法定刑の差、3人が亡くなっても上限が変わらない理由
  • 改正法で導入された「高速度」の数値基準と、本件への当てはめの考え方
  • 同乗者のご遺族が請求できる相手・損害項目と、「好意同乗減額」「年齢条件」の落とし穴
  • 少年審判の傍聴、被害者参加、ご遺族が使える制度

 

 

何が起きたのか――千葉19歳運転死亡事故の発生と捜査の経過

捜査担当警察官(死亡事故)

報道されている事実関係を時系列で整理します(千葉日報オンライン「3人死亡事故、乗用車の男逮捕 トラック運転手もけが、過失致死傷疑い 千葉市中央区」など参照)

 

2026年9月29日午前4時15分ごろ 千葉市中央区蘇我1丁目の国道357号で、19歳の男が運転する乗用車が車線変更の際にスリップして対向車線にはみ出し、中型トラックと衝突。乗用車は炎上し、約1時間後に鎮火。
同上 乗用車の助手席・後部座席から3人の遺体。亡くなったのは、いずれも運転手の友人である18歳の女性(市原市)、20歳の専門学生の男性(木更津市)、19歳の専門学生の男性(市原市)。トラックを運転していた57歳の男性も軽傷。
同上 運転手は自力で脱出したものの、右手首を骨折するなどの重傷で入院。4人は遊びに出かけていたとされる。
10月12日 退院したその日に、千葉中央署が過失運転致死傷の疑いで逮捕。容疑を認めているとされる。「前の車にぶつかりそうになり、ブレーキが間に合わず右にハンドルを切ったらスリップした」との趣旨を説明。
今後 警察は、事故直前に制限速度を大幅に上回り、制御できないほどの速度で運転していた可能性があるとして、危険運転致死傷罪の適用も視野に捜査を継続。

 

【刑事編】19歳の運転手はどのような罪に問われるのか

裁判

逮捕容疑は「過失運転致死傷罪」―3人死亡でも上限は7年

今回の逮捕容疑である過失運転致死傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条に定められています。

 

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条(過失運転致死傷罪)

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

 

今回の事故では被害者の方が亡くなられていますので、但し書きによる免除はないと考えてよいと思われます。

過失運転運転致死傷罪は3人が亡くなった場合であっても7年の拘禁刑が上限となります。

 

これは、観念的競合という刑法上のルールの適用があるためです。

詳細は以下のページで解説しております。

 

 

危険運転致死傷罪に切り替わる可能性は?

危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条)が成立すると、

人を死亡させた場合の法定刑は1年以上の有期拘禁刑(上限20年)となり、過失運転致死傷罪とは比較にならないほど重くなります。

 

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条(危険運転致死傷罪)

次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期拘禁刑に処する。
一 アルコール影響正常運転困難状態(身体に血液一ミリリットルにつき一・〇ミリグラム以上又は呼気一リットルにつき〇・五ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態をいう。次条第一項において同じ。)で自動車を走行させる行為
二 薬物影響正常運転困難状態(薬物の影響により正常な運転が困難な状態をいう。次条第一項において同じ。)で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
四 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ当該イ又はロに定める速度以上の高速度その他道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度(次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ当該イ又はロに定める速度に準ずるものに限る。)で自動車を運転する行為
イ 最高速度(道路交通法第二十二条第一項の規定によりこれを超える速度で進行してはならないこととされている最高速度(原動機付自転車を運転する場合にあっては、同法第三条に規定する普通自動二輪車の最高速度)をいう。以下この号において同じ。)が六十キロメートル毎時以下である場合 最高速度を五十キロメートル毎時超える速度
ロ 最高速度が六十キロメートル毎時を超える場合 最高速度を六十キロメートル毎時超える速度
五 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
六 殊更にタイヤを滑らせ又は浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせて、自動車を走行させる行為
七 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
八 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
九 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
十 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
十一 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 

 

逮捕段階の罪名は、あくまで捜査の出発点です。

速度の解析などが進めば、送致・起訴の段階で捜査結果により、危険運転致死傷罪で送致・起訴される可能性があります。

 

 

2026年7月21日施行の危険運転致死傷罪改正 「高速度」に数値基準

本件の事故は2026年9月29日に発生しており、危険運転致死傷罪に数値基準を導入した改正法(2026年7月21日施行)の施行後の事故です。

したがって、改正後の規定がそのまま適用されます(一方で、施行前の事故には遡って適用されません。憲法39条)。

 

改正法は、速度に関する危険運転として、具体的な数値基準を導入しました。

改正前第2条2項その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

 

改正後第2条4項 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ当該イ又はロに定める速度以上の高速度その他道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度(次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ当該イ又はロに定める速度に準ずるものに限る。)で自動車を運転する行為
イ 最高速度(道路交通法第二十二条第一項の規定によりこれを超える速度で進行してはならないこととされている最高速度(原動機付自転車を運転する場合にあっては、同法第三条に規定する普通自動二輪車の最高速度)をいう。以下この号において同じ。)が六十キロメートル毎時以下である場合 最高速度を五十キロメートル毎時超える速度
ロ 最高速度が六十キロメートル毎時を超える場合 最高速度を六十キロメートル毎時超える速度

このように、改正前の自動車運転処罰法の条文では、

「進行を制御することが困難な高速度」についての具体的な基準はありませんでした。

 

しかし、今回の改正により高速度運転が定義化されています。

  • 最高速度が時速60㎞以下の道路の場合は最高速度を時速50㎞より超過した場合
  • 最高速度が時速60㎞を超える道路の場合は最高速度を時速60㎞より超過した場合

で交通事故を起こして人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪の構成要件に該当するということになります。

 

また、数値基準の導入は数値基準を超えない場合は則ち危険運転致死傷罪が成立しない、というわけでもありません。

数値基準に「準ずる」速度で、道路や交通の状況に照らして重大な危険の回避が著しく困難な高速度も対象としています。

 

さらに、第2条3項には「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」という規定(改正前第2条2項)も依然存在しています。

仮に今回の事故時に出ていた速度が、数値基準を超えない場合であったとしても、道路や交通の状況などを踏まえて危険運転致死傷罪の適用がされる可能性もあります。

 

警察も、「事故の直前に制御不能なほどの速度で運転していた」という情報を入手しているとされており、危険運転致死傷罪の適用も視野に捜査が進められています。

 

 

危険運転致死傷罪の数値基準に届かない場合でも―「制御困難な高速度」と同乗者死亡の裁判例

先ほども述べたように、仮に数値基準を下回る速度だったとしても、直ちに危険運転致死傷罪が否定されるわけではありません。

本件と構造がよく似ているのが、宇都宮市の同乗者死亡事故です。

 

平成28年6月30日、同乗者4名を乗せた車両が、栃木県宇都宮市の最高時速50㎞の湾曲道路に時速91㎞~97㎞で進入したところ、

ハンドル・ブレーキが的確に操作できず路外のガードパイプや塀に衝突、前転し、同乗者4名のうち2名が死亡、2名が重軽傷を負う事故がありました。

 

第一審(令和3年3月22日宇都宮地方裁判所判決)では、「本件車両の速度が「進行を制御することが困難な高速度」に至っていたと認定するには合理的な疑いが残るとして、

危険運転致死傷罪の成立が否定されました。

 

これに対し、

令和4年4月18日東京高等裁判所判決(判例タイムズ1502号116頁)では、

  • 「進行を制御するのが困難な高速度」とは、操作ミスがなければ進路から逸脱することなく進行できる場合も含まれることを前提としており、限界旋回速度よりも低い速度であれば直ちに「進行を制御するのが困難な高速度」ではないとするのは不合理である。
  • 最高時速50㎞の道路の曲線部を時速40㎞以上も上回る速度で走行することの危険性が適切に考慮されておらず不合理である。
  • わずかといえるようなミスを除けばハンドルやブレーキの操作ミスが存在する可能性を完全に否定できないことが、「「進行を制御するのが困難な高速度」を否定する理由にはならない。
  • 本件車両が遠心力の影響により車体後部がふらつき、制御不能な状態となり横滑りを起こしたこと。

等からすれば、「進行を制御するのが困難な高速度」に該当することは明らかであるとして、危険運転致死罪が成立するとしています(上告後棄却で確定)。

 

これは令和8年7月21日の法改正以前の死亡事故ですが、この判断理由は本件においても大きな参考となるでしょう。

 

本件では、運転手自身が「ブレーキが間に合わず、ハンドルを切ったらスリップした」と説明しているとされています。

 

高速度のために前方の状況に対応できず、ハンドル操作をきっかけに車がスリップして対向車線へ逸脱したのだとすれば、

それは「進行を制御することが困難」であったことを示す事情として評価される余地があります。

 

速度の認定には、防犯カメラ・ドライブレコーダーの映像やタイヤ痕などの解析が必要ですが、車両が炎上していることもあり、一定の時間がかかる可能性があります。

 

 運転手が19歳―「特定少年」の手続と罪名の関係

運転手は19歳であり、少年法上の「特定少年」(18歳・19歳)に当たります。

成人の刑事事件とは手続が大きく異なります。

 

家庭裁判所への送致 捜査を遂げた後、検察官はすべての事件を家庭裁判所に送致(全件送致主義)
原則逆送 「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に加え、「短期1年以上の拘禁刑に当たる罪」も原則として検察官に送致(逆送)され、刑事裁判にかけられる(少年法62条2項)
逆送後 不定期刑などの少年の刑事事件に関する特例は原則として適用されない(同法67条)
実名報道 起訴(公判請求)されると、氏名・顔写真等の推知報道の禁止が解除される(同法68条)

 

ここで重要なのは、どの罪名で家庭裁判所に送られるかによって、原則逆送の対象になるかどうかが変わるという点です。

 

危険運転致死罪

故意の基本行為による致死罪であり、短期1年以上の罪でもあるため、原則逆送の対象になる。

ただし、調査の結果、刑事処分以外の措置が相当と認められる場合もある。

過失運転致死傷罪

過失犯であり、短期1年以上の罪ではないため、原則逆送の対象ではない。

ただし、家庭裁判所が「刑事処分相当」と判断すれば逆送される(少年法62条1項)

 

今回の死亡事故は、死亡者が3人にのぼる重大な結果であることから、

仮に過失運転致死傷罪にとどまった場合でも、刑事処分相当として逆送される可能性は相応にあると考えられます。

 

とはいえ、罪名の選択は、刑の上限だけでなく、少年審判で保護処分(少年院送致・保護観察)にとどまるのか、成人と同様の刑事裁判になるのかという手続の入口にも影響するのです。

 

量刑の見通し

一般論として、量刑上は、

  • 速度超過の程度
  • 事故に至る経緯
  • 結果の重大性(3人の死亡と1人の負傷)

などが重く評価される一方、

  • 事実を認めていること
  • 本人も重傷を負ったこと
  • 年齢
  • 被害弁償の状況
  • 前歴の有無

などが考慮されます。

 

過失運転致死傷罪で刑事裁判となった場合でも、死亡者が複数であったり、運転態様が悪質だと判断されるような事案では実刑判決となる例も少なくありません

(※以上は報道を前提とした一般的な見通しであり、個別の結論を保証するものではありません。)。

 

 

裁判員裁判制度と量刑

危険運転致死傷罪は、自らの行為が犯罪に当たる行為であるという認識がある、故意犯となります。

そして、死亡結果が発生している場合には、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に該当します。

 

そうすると、刑事裁判は、裁判員裁判で行われることとなります。

裁判員裁判では、一般市民の中から選ばれた裁判員が審理に加わることとなり、一般的には、厳しい処罰が行われる傾向にあるとも言われております。

そういった意味で、危険運転致死罪での起訴となるのか、過失運転致死罪での起訴となるのかによって、手続きの流れも大きく変わることとなります。

 

【民事編】同乗中に亡くなった方のご遺族の損害賠償請求

刑事手続は国が加害者を処罰するための手続であり、ご遺族の方々が受けた精神的苦痛などに対する賠償請求は、別途、民事の損害賠償請求として行う必要があります。

 

 誰に請求できるのか

① 運転手本人(民法709条)

運転手は、直接の加害者として不法行為責任を負います。19歳は民法上の成年であり、責任能力を有します。

 

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

② 車両の保有者(自動車損害賠償保障法3条・運行供用者責任)

乗用車の所有者が運転手本人以外(たとえば親や知人、レンタカー会社など)であれば、

その所有者は「自己のために自動車を運行の用に供する者」として責任を負う可能性があります。

 

自動車損害賠償保障法第3条

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

なお、同乗者も自賠法(自動車損害賠償保障法)第3条の「他人」に当たるとされております。

友人として同乗していたことを理由に保護の対象外となるわけではありません。

 

昭和42年9月29日最高裁判所第二小法廷判決

自動車損害賠償保障法第三条本文にいう「他人」とは、自己のために自動車を運行の用に供する者および当該自動車の運転者を除くそれ以外の者をいうものと解するのが相当であるところ、原審の確定したところによれば、上告人は酩酊して同人の車の助手席に乗り込んだDに対し、結局はその同乗を拒むことなく、そのまま右車を操縦したというのであるから、右Dを同条の「他人」にあたるとした原審の判断は相当である。

 

③ トラック側

対向車線にはみ出してきた車との衝突であり、トラックの運転手に過失が認められる場面は通常想定しにくいところです。

もっとも、トラック側の運行供用者が自賠法3条の免責要件を立証できない場合には、トラックの自賠責保険からも支払いを受けられる可能性があります(いわゆるダブルポケット)。

刑事記録等で事故状況を確認しておく意味はあります。

 

保険は使えるのか

被害者側からすると、加害者側に使える保険があるかどうかは、少なくとも十分な賠償が得られるのかという視点では重要になります。

以下は交通死亡事故の場合に使える可能性がある保険です。

 

ただし、実際の事案ではメリット・デメリットや条件などもあるため、弁護士に相談することをお勧めします。

 

加害者量の自賠責保険 同乗者も対象。死亡の場合、お一人あたり上限3000万円。被害者請求(ご遺族から直接請求)が可能
加害車両の任意保険 友人である同乗者は、運転者の家族を対象外とする免責条項には当たらず、原則として補償対象。
ご遺族・亡くなった方側の保険 人身傷害保険や無保険車傷害特約が、他人の車に同乗中の事故にも使える場合あり。

同居のご家族の契約も含め確認を

 

時効

人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から5年で時効にかかります(民法724条の2)。

自賠責の死亡の被害者請求は死亡日から3年(自賠法16条・19条)となります。

 

刑事手続や少年審判が続いていても時効は止まらないため、手続が長期化する場合は時効の管理が必要です。

 

若くして亡くなった方の損害はどう算定されるのか

死亡慰謝料

裁判所の実務で用いられる、いわゆる「赤い本」(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』)の基準(いわゆる弁護士基準)では、

独身の若年者が亡くなった場合の死亡慰謝料は、近親者固有の慰謝料も含めて2000万円〜2500万円が一つの目安とされています。

 

著しい速度超過など加害者に重大な過失がある場合や、事故後の態度によっては、基準を超える増額が認められることもあります。

事故によって人生を終わらせられてしまったことによる怒りや悲しみは、ひどい事故になればなるほど大きくなることから、その分精神的苦痛が大きいとされ、慰謝料増額事由となりうるのです。

刑事裁判で危険運転致死傷罪が認定されれば、この増額事由の主張がしやすくなります。

 

 

死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、事故に遭い、亡くなってしまったことで、事故に遭わなければ本来得られていたはずなのに得られなくなった収入を言います。

 

基本的な計算式は以下のとおりです。

死亡逸失利益=基礎収入 ×(1 − 生活費控除率)× 就労可能年数(に対応するライプニッツ係数)

 

それぞれ簡単に解説します。

 

基礎収入

学生や30歳以下の若年の方は、実際の収入ではなく、賃金センサス(賃金構造基本統計調査)の全年齢平均賃金を用いることとされております

(「交通事故による逸失利益の算定方法についての共同提言」判例タイムズ1014号62頁)。

 

既に就労している若年者については実収入や将来の増収可能性も検討することもあります。

 

生活費控除率

被害者の方が亡くなってしまうと、収入が得られなくなる半面、生きていれば必ず発生する生活費もかからなくなります。

生活費控除率とは、その分の生活費を差し引くために考慮されるものです。

 

独身男性で50%、女性で30%程度とされることが多いです。

 

 

就労可能年数

就労可能年数とは、その被害者の方が生きていれば就労していたであろう年数で、原則的には亡くなられた年齢から67歳までの期間とされます。

ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための係数です。

 

例えば被害者の方が20歳男性だったとすると、令和7年版賃金センサス男性・学歴計・全年齢平均より、基礎収入は610万7000円とされます。

この方の死亡逸失利益の金額は、

610万7000円×(1-50%)×25.0247(67歳までの47年間に対応するライプニッツ係数)=7641万2921円

が一つの目安となります。

 

 

このほか、

なども請求でき、1億円を超える賠償となることもあります。

 

同乗者特有の論点――好意同乗減額とシートベルト

「好意同乗減額」を主張される可能性

同乗中の事故では、加害者側の保険会社から「好意同乗」(無償で友人の車に乗せてもらっていたこと)を理由とする減額を主張されることがあります。

 

しかし、単なる無償同乗だけで当然に減額されるものではなく、危険運転への関与や危険の認識など、個別事情は検討されるべきです。

 

減額が認められやすいのは、同乗者が運転手の飲酒や無免許を知りながら同乗した場合や、

速度を出すようはやし立てた場合など、同乗者自身が危険を承知し、あるいは危険な運転に関与していたといえる事情がある場合に限られます。

 

『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)においても、

無償同乗自体を理由としては減額しない。

同乗者に一定の帰責事由(危険承知、危険関与・増幅等)がある場合には、減額されることがある。

とされています。

 

本件でも、「友人同士で遊びに出かけていた」という一事をもって減額されるべきではありません。

車内の状況や運転に至る経緯は、刑事記録(運転手の供述調書等)で確認できる場合があり、根拠のない減額主張に反論するためにも、刑事手続の記録が重要になります。

 

シートベルトの着用

後部座席を含め、シートベルト非着用が損害の拡大に寄与したとして、一定の過失相殺(減額)を主張されることもあります。

本件のように車両が炎上した事案では着用状況の立証自体が難しい面もあります。

 

また、シートベルトを着用していたとしてもお亡くなりになってしまうような事故の状況の場合には、シートベルトの着用を問題とすべきではないケースもあります。

安易に加害者側の主張を受け入れないことが大切です。

 

ご遺族が少年審判・刑事裁判に関わる方法

運転手が19歳であるため、事件はまず家庭裁判所に送られます。

手続の段階に応じて、ご遺族が利用できる制度が異なります。

 

家庭裁判所(少年審判)の段階

記録の閲覧・謄写(少年法5条の2)  審判開始後、法律記録について閲覧・コピーできる(損害賠償請求の資料にもなる) 
意見の聴取(同法9条の2)  被害に関する心情や事件についての意見を、裁判官等に述べることができる 
審判の傍聴(同法22条の4)  被害者を死亡させた事件などでは、過失運転致死傷の事件も対象。申出により傍聴が認められる場合がある 
審判状況の説明(同法22条の6)  審判期日の状況について、家庭裁判所から説明を受けられる 
審判結果の通知(同法31条の2)  少年の氏名・決定の内容などの通知を受けられる 

傍聴は、家庭裁判所の判断に日数がかかることがあるため、早めに申し出ることが大切です。

 

逆送・起訴後(刑事裁判)の段階

事件が逆送され、検察官が起訴すれば、成人と同じ刑事裁判になります。

危険運転致死傷罪・過失運転致死傷罪のいずれであっても、被害者参加制度(刑事訴訟法316条の33以下)を利用でき、

ご遺族は、

  • 証人尋問
  • 被告人質問
  • 事実や法律の適用についての意見陳述(論告意見)

などを行うことができます。

 

また、心情等の意見陳述(同法292条の2)により、ご遺族の思いを直接法廷で述べることもできます。

 

刑事裁判で明らかになった事故の経緯や、法廷で述べたご遺族の苦痛は、民事の損害賠償請求においても、慰謝料の増額や好意同乗減額への反論の材料になります。

 

弁護士法人小杉法律事務所でも、被害者参加制度の利用は強く推奨しており、

過失運転致死傷罪で実刑判決を得た事例や、刑事裁判で得た証拠をもとに裁判基準以上の慰謝料を獲得した事例も複数ございます。

 

 

早い段階でしておきたいこと

  • 警察・検察に捜査状況を確認する:被害者連絡制度などを通じて、速度解析の進み具合や罪名の見通しを確認し、危険運転致死傷罪の適用を求める意見があれば伝える。
  • 家庭裁判所への送致後、傍聴・記録閲覧・意見聴取を早めに申し出る。
  • 加害車両の保険の内容(自賠責・任意保険の有無、年齢条件・運転者限定)を確認する。
  • ご自身・同居のご家族の自動車保険(人身傷害保険・無保険車傷害特約)を確認する。
  • 相続人を確定する:戸籍を収集し、請求権者を整理する(ご両親が離婚しているケースなどでは特に注意)。
  • 保険会社から示談書や免責証書を示されても、内容を十分に確認するまで署名しない:好意同乗減額などが含まれていないか注意。慰謝料基準にも注意。
  • 請求先ごとの時効を管理する:刑事手続が長引く場合に備える。

 

まとめ

逮捕容疑の過失運転致死傷罪では、3人が亡くなっても観念的競合により刑の上限は7年にとどまります。

他方で、本件は2026年7月21日施行の改正法の施行後の事故であり、速度が数値基準(制限60km/h以下の道路なら+50km/h)を超えていれば、

危険運転致死傷罪(上限20年)の適用の可能性が出てきます。

 

また、数値基準に届かなくても「制御困難な高速度」として成立する余地があります。

運転手は19歳の特定少年であり、危険運転致死罪なら原則逆送、過失運転致死傷罪なら家庭裁判所の判断次第という違いがあります。

 

同乗者ということで好意同乗による減額が主張される可能性はありますが、

刑事裁判への被害者参加などでしっかりと証拠を集め、適切な主張をしていくことが、刑事・民事の両方でしっかりと無念を晴らしていくことに繋がります。

 

亡くなられた3人の方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 

※本記事は2026年10月13日時点の報道内容に基づく一般的な法律解説であり、

個別の事案についての法的助言ではありません。実際の対応にあたっては、弁護士等の専門家にご相談ください。

この記事の監修者弁護士
小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。

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