【弁護士解説】後遺障害等級8級の逸失利益とその計算方法
2024.07.31
損害賠償請求
このページでは、後遺障害等級8級の逸失利益とその計算方法について、
損害賠償請求専門弁護士が解説します。
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後遺障害等級8級とは?症状と認定基準
後遺障害等級8級の主な症状
交通事故などにより身体または精神に傷害を受け、治療を続けたものの症状が完治せずに残ってしまうことがあります。
この治療を続けてもこれ以上良くならない状態に至ることを「症状固定」といい、その時に残存している症状を後遺症(後遺障害)といいます。
損害賠償請求実務においては、被害者の方お一人お一人の身体または精神に残存する後遺症(後遺障害)を、
14の等級に当てはめて検討することが通例となっています(自動車損害賠償保障法施行令第2条及び労働者災害補償保険法参照)。
ここでいう後遺障害等級8級とは、交通事故などで重度の身体障害を負った場合に認定される等級です。
以下は後遺障害等級8級が認定される後遺症及び障害です(交通事故の場合)。
眼の障害
- 第8級1号 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの
体幹骨(脊椎)の障害
- 第8級2号 脊柱に運動障害を残すもの
上肢の障害
- 第8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
- 第8級8号 1上肢に偽関節を残すもの
手指の障害
下肢の障害
- 第8級5号 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
- 第8級7号 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
- 第8級9号 1下肢に偽関節を残すもの
足指の障害
- 第8級10号 1足の足指の全部を失ったもの
後遺障害等級8級の認定基準
後遺障害8級の認定基準は、具体的な基準を満たすことが必要です。
認定されるためには、まず医師が作成した後遺障害診断書や検査結果が必要となります。
自賠責損害調査事務所における後遺障害等級認定の審査は、この後遺障害診断書を基に行われるため、作成に関して後遺障害に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
後遺障害診断書について弁護士に相談した方が良い4つの理由とは?
後遺障害等級8級の逸失利益とは?
逸失利益の定義
「逸失利益」とは、交通事故などで被害者が後遺障害を負った結果、将来的に得られるはずだった収入や利益が失われることを指します。
具体的には、交通事故による後遺障害等級8級の認定を受けた場合、その後の労働能力が減少し、働ける年数や仕事の内容が制限されるため、本来得られたであろう収入が減少します。
この減少した収入部分が逸失利益として計算され、被害者はこの分を損害賠償として請求することができます。
逸失利益の計算方法
逸失利益の計算方法は、基礎収入、労働能力喪失率、および労働能力喪失期間をもとに行われます。以下に具体的な計算方法を示します。
基礎収入
基礎収入とは、事故前の被害者の年間収入を指します。
これは通常、給与明細や所得証明書から確認されますが、事故直前の収入が参考にされるため、職業や年齢、経験なども考慮されます。
労働能力喪失率
後遺障害等級ごとに労働能力喪失率が定められており、後遺障害8級の場合は労働能力喪失率は45%とされています。つまり、労働能力が45%減少したとみなされます。
労働能力喪失期間
労働能力喪失期間はまさに後遺障害が残ってしまったことによって働きにくさが残ってしまっている期間です。
損害賠償請求実務において絶大な権威を誇る『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準 上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)では、
この労働能力喪失期間は、原則として被害者の症状固定時の年齢から67歳までの期間とされています。
ただし、被害者が未成年の場合は18歳(または22歳)までの期間を除いたり、
被害者の67歳までの期間よりも平均余命の2分の1の方が長い場合には、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間として採用したりといった例外的な運用もあります。
これらの要素を用いて、次のように逸失利益を計算します。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)
ライプニッツ係数は、将来得られる収入を現在価値に換算するための係数です。具体的な数値は、年ごとに異なりますが、中間利息を控除するための簡便な方法として使用されます。
これにより、被害者は後遺障害等級8級に該当する逸失利益を求め、損害賠償として請求することができます。
後遺障害等級8級の逸失利益の計算
後遺障害等級8級の逸失利益の計算の具体的な事例として、30歳の男性が交通事故に遭い、脊柱に運動障害を残し、後遺障害等級8級が認定されたケースを考えてみましょう。
この場合、逸失利益は労働能力喪失率に基づいて計算されます。
この方の年収が500万円であったとすると、後遺障害等級8級における労働能力喪失率は、自動車損害賠償保障法施行令の別表Ⅰより45%であるため、逸失利益は次のように計算されます。
500万円×45%×22.1672(労働能力喪失期間37年に対応するライプニッツ係数)=約4987万6200円
このようなかたちで、後遺障害等級8級が残ってしまった場合の逸失利益を計算することができます。
後遺障害等級8級での示談と慰謝料
後遺障害等級8級が認定された場合の示談交渉のポイント
後遺障害8級と認定された場合の示談交渉は、適正な慰謝料や逸失利益を受け取るために非常に重要です。
示談交渉の際は、以下のポイントを押さえましょう。
まず、正確な収入資料を準備し、交渉の材料にすることが必要です。
被害者の労働能力喪失率や基礎収入が逸失利益の計算に大きく影響するためです。
さらに、専門知識を持つ弁護士に相談することで、交渉を有利に進めることができるでしょう。
後遺障害等級8級が認定された場合の慰謝料相場と増額方法
後遺障害等級8級が認定された場合の自賠責保険の逸失利益及び慰謝料の基準は819万円です。
相手方任意保険会社の逸失利益及び慰謝料の支払基準は、この819万円と同じか少し高いくらいになります。
一方で、弁護士に依頼した場合に用いられる裁判基準(弁護士基準)では、
慰謝料だけでまず830万円が一つの目安であり、さらにここに先ほどまで見てきたような計算で算出される逸失利益が支払われることになります。
また、専門の弁護士に依頼することで、専門知識を活かして効果的な交渉を行い、慰謝料の増額の可能性が高まります。
弁護士法人小杉法律事務所は、後遺症被害を専門とする事務所であり、後遺障害等級8級の逸失利益や慰謝料などを獲得した事例が複数ございます。
以下はその一例でございます。
- 【第2腰椎圧迫骨折】脊柱の権威の医師から意見書を取り付け、紛争処理申請により脊柱変形障害8級相当獲得
- 併合8級を獲得して約4000万円の示談解決【裁判基準以上の慰謝料金額】
- 【自転車事故】傘さし無灯火の自転車と高齢歩行者の交通事故で、相手方の誠意ない対応に悩み弁護士に相談。第12胸椎圧迫骨折で後遺障害等級第8級が認められ、約890万円での示談解決。
まとめ:後遺障害等級8級の認定は後遺症被害専門弁護士に相談しましょう
後遺障害等級8級が認定された場合の損害賠償請求においては、
働能力喪失率や逸失利益の計算など専門的な知識が求められるため、弁護士に相談することが非常に重要です。
弁護士は、適切な補償金額の算出や交渉をサポートし、必要に応じて訴訟を提起するなどして、権利を守る手助けをいたします。
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事故の被害に遭い、後遺障害等級8級について疑問をお抱えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。