判例で学ぶ後遺障害10級の逸失利益の相場とは?
2024.07.24
損害賠償請求
このページでは、損害賠償請求専門弁護士が、
後遺障害10級が認定された場合の逸失利益や慰謝料の相場について、
判例や当事務所の解決実績をもとに解説します。
はじめに
後遺障害10級とは
後遺障害10級とは、交通事故や労災、学校事故などで被った怪我により、後遺症が残存してしまった場合に認定されるものです。
後遺障害10級の認定を受けることで、保険会社から賠償金が支払われるほか、弁護士に依頼することでさらに高額な慰謝料や逸失利益を獲得することが可能です。
後遺障害10級の判例や、当事務所の解決事例を参考にしながら、後遺障害10級の認定を受けた場合の慰謝料や逸失利益の金額の相場についてみていきましょう。
逸失利益とは
逸失利益とは、交通事故や労災、学校事故などにより被害者が被った損害のうち、将来的に得られるはずだった収入が失われたことによる損害を指します。
これは後遺障害がなければ得られていたと推定される収入を基に算出され、後遺障害の程度や職業、年齢によって異なります。
逸失利益の計算は、被害者の生活や収入に対する影響を具体的に評価する必要があり、そのためには判例や裁判例を参考にすることが重要です。
逸失利益を請求する際には、適切な証拠や資料を揃えることが求められます。
また、弁護士に依頼することで、保険会社が提示する賠償金額よりも高額な逸失利益を獲得することが可能です。
事例に基づいた計算方法やポイントを理解することで、適正な賠償を受けるための準備が整います。
後遺障害10級の認定基準と症状
認定基準の概要
後遺障害10級の認定基準は、交通事故や労災による後遺症が生活に大きな影響を及ぼす程度の障害を指します。以下では認定される後遺症について順にみていきます。
認定される後遺症
目の障害
口の障害
- 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
- 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
耳の障害
- 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
- 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
上肢の障害
手指の障害
下肢の障害
- 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
- 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
足指の障害
以上の後遺症が残存した場合には、後遺障害10級に該当します。
後遺障害10級の逸失利益の計算方法
基本的な計算式
逸失利益 = 基礎収入× 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)
この計算式を使って、具体的な金額を算出することができます。基礎年収は事故前の収入を基にし、労働能力喪失率は後遺障害等級に応じて定められています。
後遺障害10級であれば労働能力喪失率は27%と定められています。
また、労働能力喪失期間は原則として症状固定時の年齢から67歳までの期間とされ、その期間に応じたライプニッツ係数が適用されます。
具体例を用いた計算
後遺障害10級による逸失利益の具体例として、基礎年収が500万円の場合の計算を見てみましょう。
労働能力喪失率が27%であり、労働能力喪失期間が10年(67歳までとする場合)だと仮定します。
計算式に当てはめると次のようになります:
逸失利益 = 500万円 × 0.27 × 8.5302=1151万0577円
ここで、8.5302は10年間のライプニッツ係数です。この計算を行うと、逸失利益は約1150万円となります。
このように個々のケースで具体的な計算を行うことで、交通事故や労災による後遺障害10級の逸失利益の額を明確にすることができます。
ただし、以下でご紹介するように、被害者の方お一人お一人の個別具体的な事情により増額が期待できる場合がありますので、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
後遺障害10級の判例から学ぶ逸失利益の相場
高額賠償を受けた事例
後遺障害10級の事例の中には、平均相場より高い賠償を受けた事例があります。
東京地方裁判所平成18年12月25日判決(自保ジャーナル1714号2頁)では、
正面視の複視について後遺障害10級が認定された症状固定時50歳の看護師の女性について、
「自賠責保険の労働能力喪失率表は従事する職種等を考慮しない一般的なものであるから、
被害者の職種等により労働能力喪失率が増減する場合もあるとし、看護師という職業に眼の以上が及ぼす影響は多大で退職を余儀なくされたこと」などから、
労働能力喪失期間17年間にわたり40%の労働能力喪失率を認め、逸失利益を計算しています。
神戸地方裁判所平成18年9月20日判決(自保ジャーナル1699号10頁)では、
左膝関節機能障害、左下肢の神経症状等について後遺障害10級が認定された症状固定時62歳の配管設備業の男性について、
「左膝の障害が著しいため歩行能力が著しく制限され、階段の昇降は勿論のこと、杖を使用しても短距離かつ短期間の歩行しか行えないこと」を考慮し、
労働能力喪失期間10年間にわたり40%の労働能力喪失率を認め、逸失利益を計算しています。
一般的な賠償額の範囲
一般的な後遺障害10級の逸失利益の賠償額は、1000万円から3000万円の範囲であることが多いです。
これは被害者の年齢、職業、収入状況などによって異なります。判例や裁判例を見ても、この範囲内での賠償が多く見られます。
また、弁護士を通して賠償請求をした場合、保険会社だけに任せるよりも高額な賠償金を得られる可能性があります。
依頼する弁護士の経験やスキルによっても、結果が大きく左右されることがあります。
当事務所の解決実績
- 【左母子MP関節尺側側副靭帯損傷】追突事故の際、ハンドルを強く握ったことにより親指を負傷したケースで、医師の意見書により後遺障害等級10級を獲得した事例
- 【左手舟状骨骨折】【ギプス固定】弁護士変更後、ドライブレコーダー証拠隠滅を指摘して、裁判により約3700万円を獲得した事例
- 【歯牙障害・骨盤変形等】後遺障害等級14級から、弁護士の異議申立てにより併合10級を獲得した事例
- 【大腿骨遠位端剥離骨折・膝前十字靭帯損傷】異議申立てにより膝の動揺関節での後遺障害等級10級相当を獲得し、約2000万円で示談解決
以上は当事務所の弁護士がご依頼を受け、後遺障害10級を獲得した事例の一部です。
逸失利益請求のポイント
弁護士に依頼するメリット
後遺障害10級の逸失利益を請求する際、弁護士に依頼することには多くのメリットがあります。
まず、弁護士は交通事故や労災の事例に精通しており、適切な賠償金額を算出するノウハウを持っています。
裁判例や判例を参考にした賠償請求を行うことで、被害者が受けることができる賠償金額が大きく異なります。
保険会社が提示する賠償金は比較的低額であることが多いですが、弁護士を通じて請求することで、慰謝料も含めてより高額な賠償金を得る可能性が大きく上がります。
また、弁護士に依頼することで手間を大幅に省くことができます。裁判や保険会社との交渉は専門的な知識と時間を要するため、被害者自身で行うのは非常に困難です。
弁護士がすべての手続きを代行することで、被害者は治療やリハビリに専念することができます。
加えて、弁護士の適切なアドバイスにより、将来的なリスクも回避できる点も大きな利点です。
注意すべき点
逸失利益を請求する際に注意すべき点もいくつか存在します。まず、後遺障害10級の認定を受けるためには、適切な医師の後遺障害診断書が必要です。
後遺障害診断書の記載内容は、後遺障害等級の認定においてきわめて大きな影響を持つので、後遺障害診断書作成の前には一度弁護士に相談されることをお勧めします。
後遺障害診断書について弁護士に相談した方が良い4つの理由とは?
その弁護士の選定も注意ポイントの一つです。交通事故や労災の経験が豊富な弁護士を選ぶことで、より適切なアドバイスとサポートを受けることができます。
無料相談を利用して複数の弁護士に相談し、信頼できる弁護士を見つけることが大切です。
まとめ
後遺障害10級の逸失利益について学ぶことで、交通事故や労災による被害者が適切な損害賠償を受けるための知識を深めることができます。
判例や裁判例を通じて、具体的な賠償額の相場を把握し、適切な賠償を得るためには専門の弁護士に依頼することが重要です。
弁護士に依頼することで保険会社が提示する額よりも高額な賠償金を獲得できる可能性が高まります。
無料相談を利用して、自分のケースに合った最適な解決策を見つけることをお勧めします。
弁護士法人小杉法律事務所では、損害賠償請求専門弁護士が初回無料の法律相談を実施しております。
後遺障害についてお困りの方はぜひお気軽にお問い合わせください。